なにわの繁盛店指南師・川野秀哉氏が提唱する店頭集客論の第2回目は、行動編というべき段階に入っていく。どのような店頭、どのような大型POP・ポスターを作れば、街ゆく人が店に来てくれるのか? 川野氏が自ら実践し、成功を収めてきた仕掛けをリポートする。 |
豚公司の最近のヒット商品は、2010年夏の集客メニューとして開発した 「 ぶた丼 」 です。暑い季節はあっさり味がいいと思う人がいる一方、ガッツリ・コッテリを食べたいと思う人も多い。焼肉屋の売上が夏場にピークを迎えるのが、その証拠です。
それで、自分の店のコンセプトに合ったガッツリ系メニューを探していた時に、北海道で豚丼に出会いました。札幌市内の専門店の商品には、全然惹かれなくて、「 なんでこんなもんがはやんねん 」 と思いましたが、流行しているからには何か理由があるはずです。発祥地とされる帯広で最もブレイクしている店の豚丼を見て、「 圧倒的なボリューム 」 がポイントだと気付きました。目算で150gは優に超える肉が乗っていて、悪く言えば 「 下品なほどの量 」。それでも魅力的に見える。コンセプトに合うのは 「 これや!」 と思いました。
メニュー開発とともに、POPでどう見せるかにとことんこだわりました。いかにボリュームを感じられる写真にするか、ひと目で 「 これ、お得やんか!」 と思わせるにはどうすべきか。要するに、POPもメニューづくりと同じことなのです。料理で表現したいことを、POPに出せれば「うまそう!」と思ってもらえますよね。「 ぶた丼 」 のPOPでは、私が料理で出したかった 「 ガッツリ 」 「 ボリューム 」 「 お得な感じ 」 がそのまま表れていると思っています。 |
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うまそうな写真の撮り方を具体的に説明します。少し話はそれますが、自動車を写真で選ぶことってありますよね。「 かっこええわ~ 」 と思って買いたくなるのですが、写真のアングルは、決まって斜めから撮ったもの。それが最も車が恰好よくみえる角度なのです。 |
料理にも一番おいしそうに見える角度があります。ご存知の方も多いでしょうが、実際に食べる時の視線に近い 「 斜め45度 」 が基本とされています。「 ぶた丼 」 の場合は斜め45度で、かつ 「 さあ、今から食べるぞ!」 と丼を手に取った時の距離感を意識して撮影しています。
45度から角度を下げて、横から撮った写真になると、器など余分なものが入り込んできて、POPに使う時はどうしてもアップで載せたくなります。そうすると、食材のシズル感は出るのですが、全体のボリューム感が出にくくなるのです。ボリューム感を出すには器選びも大切。同じ容量の食材を乗せても、器に収まっているのとはみ出ているのでは、ボリューム感やコストパフォーマンスに大きな差が出てくるのです。
それから、撮影する食材を工夫することも大切です。例えば、私が 「 豆乳しゃぶしゃぶ 」 のPOPで使っている肉の写真にも仕掛けがあります。しゃぶしゃぶのシズル感として重要な赤身、まだ完全に火が通ってない半生を演出するために、少量の生肉と一緒に撮影しています。料理のプロなのですから、自分が扱う食材のおいしそうなところを分析することはできますよね。それを見せることでシズル感を出すことができるのです。
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文字に関しては、「 それは何の料理か?」 を示すコピーが1つあれば充分だと思います。ひと目で料理の内容と値段が分かることが、POPの効果を上げてくれるはずです。 |
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「ぶた丼」は豚公司全店で販売したのですが、銀呈では「本日のぶた丼」を750円、堀江の店では680円で売りました。堀江は客層が若いので思い切って下げたのですが、それがPOPのインパクトにもなって、すぐにお客さんが付いてくれました。週によって差はありますが、増減を繰り返しながらも着実に実績を伸ばしています。
「ぶた丼」の販売を始めたのは2010年4月19日ですが、給料日前の倹約期やGW期間を100%にして計算すると、ビジネス立地の堀江ではどうやっても右肩上がりになります。ですから、あえて4週目(5月10日~16日)を基準にしたグラフをお見せしています。4週目の来店者数詳細は右表の通りです。
過去最高となる来店者数462(増減率143%)を記録したのは、8月最終週と9月第1週。お盆休みで下がったものの、残暑がとても厳しかった時期に再ブレイク。暑い時こそガッツリ食べたいという需要をうまく取り込みました。なお、5ヶ月経過となる9月中旬以降は、平日5日間の合計人数350~380、土日合計70~100の範囲で推移しています。当初は、土日2日間で50人程度だったのが、少なくとも70人以上。ビジネス立地を考えると満足できる実績です。店頭以外ではPRしていませんから、すべてPOPによる集客と自負しています。
お客さんの心理や本能に訴えるメニューを開発できて、それをそのままPOPで表現できたことが成功の理由だと思っています。POPの賞味期限が切れるのはまだまだ先。少なくとも来春までは掲出を続けます。
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