居酒屋チェーンとして半世紀以上にわたる歴史を持つ 「 養老乃瀧 」。昭和31年(1956年)に横浜で第1号店が誕生、今年で55周年を迎えるが、その活動の中心には常に 「 食の大衆文化の発展 」 を心掛けてきた。また、日本における飲食店FCのパイオニアとして全国に店舗を展開、全店舗のうち約9割が “ 暖簾分け ” による加盟店舗となっている。今回は、同社が長きにわたり実践してきた、“ 大衆文化と人材の創造 ” について、代表取締役・野村幹雄氏に語っていただいた。
― 2011年2月に導入された配送センターの新システムについて教えてください。
【 野村社長 】 物流拠点を浮島配送センターに移転したのに伴って導入したもので、DAS(デジタルアソートシステム)といいます。このセンターは1日に15便、最大で首都圏240店舗に食材を配送しています。DASと賞味期限管理システムを組み合せることにより、各店舗へ出庫した商品の個別賞味期限を管理できるようになっているのです。通常、賞味期限の管理というのは、「 この日に配送されたものは、このロットだから大体この日が限界だろう 」 という予測で行っています。しかし、今回のシステムは、お店までひもづけているところがポイントです。首都圏エリアのどこの店に何が届けられているかがわかっていますから、「 すでに賞味期限が切れているはずなのに、まだ次の注文が入ってこない 」 ということをチェックすることができるのです。期限切れの食材が在庫として店舗に残っている可能性があることを本部が把握できる。納品後の食材までも一括管理できるようになっているのです。食の安心安全をお約束するだけではなく、店舗側は個数単位で発注できる、無駄な在庫を抱えなくて済むというメリットもあるのです。
― 加盟店に向けた教育・研修プログラムについて教えてください。
【 野村社長 】 店舗を出すことが決まった方は、首都圏にある直営店でOJTを受けていただき、専門部署でOff-JTの研修も行っています。そして、たとえ店の準備ができていても、試験に合格するまではオープンできません。それで開店が1ヶ月遅れた例も何店かあります。というのも、FC加盟者の皆さんの場合は、単なるオペレーションだけではなく経営や経理の知識も必要になりますから。人事・経理・総務など座学で一般的な経営知識を学んでいただきます。
― 試験というのは座学だけ?
【 野村社長 】 私どもの調理長が技術を判定するといった、店舗オペレーションの試験もあります。皆さん、ガチガチに緊張されて、手を洗うのを忘れて即アウトということもありますね。
― 社員向けのプログラムは?
【 野村社長 】 調理と接客に関する 「 社内資格制度 」 を設けています。それぞれ初歩の5級から上級の1級まであり、支店長になるには、最低でも両方で3級を取らなければいけません。「 永く務めているから、そろそろ支店長をやらせよう 」 という人事はもうありません。2級や1級を取ると専門クルーになることができます。調理長を目指すには調理2級が必要です。また、1級を取らなければメニュー開発に携わることはできません。接客の上級資格者は、加盟店の指導員として各地に赴いたり、社内の接客指導会で講師を務めたりすることができます。資格試験は、春と秋に1回ずつの年間2回。新入社員は、秋から受験資格が得られます。
養老乃瀧株式会社
代表取締役社長:野村 幹雄氏
本社:東京都豊島区西池袋1-10-15
昭和13年(1938年) 長野県松本市にて創業
昭和31年(1956年) 神奈川県横浜市に、「 養老乃瀧 」 第1号店開設
昭和39年(1964年) 国際物産を設立、仕入れ部門を完全独立化
昭和41年(1966年) フランチャイズ第1号店を板橋区成増に出店
昭和46年(1971年) 「 養老ビール 」 誕生
平成8年(1996年) 新業態 海鮮番屋 「 魚彦 」 第1号店開店
平成10年(1998年) 新業態 やき鳥専科 「 一の酉 」 第1号店開店
平成12年(2000年) 新業態 だいにんぐ 「 楽顔亭 」 第1号店開店
平成14年(2002年) 新業態 海鮮居酒屋 「 だんまや水産 」 第1号店開店
平成16年(2004年) 新業態 串や 「 二の酉 」 第1号店開店
平成19年(2007年) 食材・酒類仕入部門の養老国際物産を統合
平成20年(2008年) 新業態 「 一軒め酒場 」 第1号店開店
代表取締役 野村幹雄(のむら・みきお)氏
昭和28年富山県魚津生まれ。昭和45年(1970年)に養老乃瀧株式会社入社。当時、一般家庭では口にすることが難しかった 「 若鶏の丸焼き(ローストチキン)」 が食べられる店と聞き、勝手に高級レストランと勘違いして入社したという。昭和63年(1988年)の分社化により北日本養老開発株式会社へ異動後は、同社社長、甲信越養老開発社長を歴任、平成17年(2005年)に養老乃瀧株式会社の社長に就任する。「 赤ちょうちんの焼鳥屋とローストチキンのギャップに戸惑いながらも、アットホームな雰囲気が居心地がよくなり、仕事の面白みが分ってきて現在に至る(本人談)」。