食べ放題、和食、イタリアンなどさまざまな業態のオリジナルブランドに加え、「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」や「ユニオンスクエア」などの海外優良ブランドを誘致、多彩な展開を首都圏中心に繰り広げているのがワンダーテーブルだ。“ 感動と満足を体感できる飲食店 ” を多彩なブランドと業態で作り出している同社の独創的な戦略について、取締役・秋元巳智雄氏のインタビューを交えてお届けする。
ワンダーテーブルが導入しているホップステップジャンプ・プログラムは、店舗の現場力を上げることを目的としてものだ。ホップ段階は組織づくり、ステップ段階は運営力とQSCの向上、ジャンプ段階は主に店舗の攻撃力アップという段階になっている。業態や規模、想定客単価など店舗の違いに関係なく同じプログラムにすることで、グループ内の各店舗の到達レベルが分かる仕組みになっている。店舗を客観的に見られるようにすることで、それぞれに適切な施策が打てるようなるのである。
【秋元氏】 あるチェーン店の社長が店に行ってみたら、とてもヒマだったとします。そこで、人が多過ぎるとアルバイトを帰したり、ビラ配りに行けと指示するような社長はダメ経営者でしょう。飲食店は、店によって運営のレベルが違うのです。弊社のプログラムは、ある程度組織化されてから、QSCを上げる段階に移ります。QSCが上がったら、ジャンプ段階としてコスト管理をする。その後にやっと販促を行うレベルになるのです。組織もできてない段階でビラ配りなんてことは絶対にさせません。組織ができていないということは、QSCレベルも上がってない段階だから、そこでいきなり人件費をカットしても仕方がない。ダメな店のチラシをもらったお客さんは、1回は来るかもしれないが、リピートはしてくれるはずがありまえせん。その日の売上にはなるが、店舗にとっての意味はないわけです。組織を作るホップ段階は我慢の時期なのです。
プログラムは、H1からJ3まで9段階に分かれており、それぞれに明確なクリア基準を設けています。スタッフは何をクリアしなければいけないのか分かった上で仕事をしています。ですから、ホップ段階の店には、販促やコスト管理、原価対策などはさせません。ろくにサービスもできないのにシフトを削っても意味ないのです。経営者層が店を訪れた場合、何を努力すべきかが分かるので、それに応じた指示やアドバイスを打てるのです。言っても意味のないことは言わない仕組みがあるのです。店舗レベルを可視化して、意義のある指導をすることで、本物の強さを根付かせようとしているのです。
最後に、これからのワンダーテーブルが目指す方向性や目標について伺った。
【秋元氏】 2010年を区切りとする中期計画を掲げ、数値としては営業利益10億円達成を目標にしていますが、それよりも3つのゴールイメージというものを大切にしています。ひとつめは、店舗と本社が一丸となって戦える会社にすること。ふたつめはプロフェッショナルが育つ会社にすること。ホスピタリティビジネスのプロです。3つめは社員が長く働きたい会社にすることです。そのためには、これまでに語ってきたフィロソフィーマネジメントやブランド戦略が大事だと思っています。単純に言うと、低単価の食べ放題の店ばかりだったら、働いている社員はつまらないわけですよ(笑)。幅広い客単価や業態の展開は、社員のモチベーションに繋がります。最近は英語を勉強したいという社員が増えてきました。ここ数年展開してきた海外ブランドの成果だと思っています。それから、マンションを買いたいという社員も増えてきました。小さな食い物屋ではマンションのローンは組めないですよね。うちがそれなりのギャラを払えるようになったのがひとつの要因ですが、「 この会社で真剣にやっていこう 」 と決意してもらえるようになったと思っています。一般的な外食企業に多いのは、社長がとても裕福で社員の給料が安い状態です。実力をつけて独立するんだろう、だから頑張れという経営者のスタンスです。しかし、弊社のような規模になってくると、それでは無責任だと思います。いつか独立したいという社員はもちろんたくさんいます。だからといって、何も教えない、ギャラも低いでは許されないでしょう。会社を好きになってもらい、プロとして成長できるよう仕組みを教えてあげる。“ 独立しようと考えているが、ワンダーテーブルにいる方が楽しいし、勉強できる ” と思ってもらえるような会社にしていきたい。そのためのゴールイメージなのです。もちろん独立してもらっても構いませんが、独立よりも自立だと社員に言っています。会社の中で、どれだけ自立的に働けるかが大切だと思うのです。自走できる能力を持った社員を育てる。独立して通帳を気にしながら業者に支払いをする人生よりも、もっと成長できて家族を幸せにできる場所で働いた方がいいのではないかと伝えたいとも思います。長く働きたいと思ってもらえるように取り組んでいるところです。
株式会社ワンダーテーブル
代表取締役社長:林 祥隆氏
本社:東京都新宿区富久町13-19
昭和21年(1946年)三井船舶株式会社の水産部門として発足、後に海運業へ転進
昭和24年(1949年)東京証券取引所市場第二部に上場
昭和28年(1953年)富士汽船株式会社に社名変更・平成 3年(1991年) ヒューマックスグループの系列会社となり、定款を変更して飲食等新規事業を開始
平成6年(1994年)飲食部門1号店 「 モーモーパラダイス 」 を東京都目黒区にオープン
平成12年(2000年)ワンダーテーブルに社名変更、海運事業より撤退
※首都圏・地方都市を中心に、20ブランド60店舗以上の飲食店を展開する
取材協力:株式会社ワンダーテーブル 取締役/Executive Managing Director 秋元巳智雄氏