「ワンダーテーブル編」目指すべき姿を可視化して、本物の強さを持った店をつくる~ワンダーテーブルの店舗・人材育成哲学を学ぶ~

目指すべき姿を可視化して、本物の強さを持った店をつくる ワンダーテーブルの店舗・人材育成哲学を学ぶ

食べ放題、和食、イタリアンなどさまざまな業態のオリジナルブランドに加え、「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」や「ユニオンスクエア」などの海外優良ブランドを誘致、多彩な展開を首都圏中心に繰り広げているのがワンダーテーブルだ。“ 感動と満足を体感できる飲食店 ” を多彩なブランドと業態で作り出している同社の独創的な戦略について、取締役・秋元巳智雄氏のインタビューを交えてお届けする。

第5回 ワンダーテーブルの企業哲学(3)~実践経験こそ人材育成の必須要素

第5回 ワンダーテーブルの企業哲学(3)~実践経験こそ人材育成の必須要素

目指すべき姿を可視化して、本物の強さを持った店をつくる~ワンダーテーブルの店舗・人材育成哲学を学ぶ~外食業に限ったことではないが、若年世代における人材の質的低下を時代の変化と片付けてしまう風潮がある。しかし、「 人間のポテンシャルは時代によって変わるものではない 」 というのが、ワンダーテーブルの基本的な考え方であり、組織づくりの根幹となっている。

目指すべき姿を可視化して、本物の強さを持った店をつくる~ワンダーテーブルの店舗・人材育成哲学を学ぶ~【秋元氏】 育ってきた環境が違うだけだと思います。以前は、スポーツなどの活動を通して目標に向かって皆で頑張り、結果が良ければ喜び、悪ければ一緒に悔しがるという経験を重ねてきたはずです。でも、今の若い世代は、その経験が少ない人がたまたま多いだけだと思うのです。核家族化が進み集団で過ごすことに慣れてないとか、部活に入っていなかったのかもしれません。社員やアルバイトとして店舗に入ってくるときに、たまたまそういう経験をしていない。小さいコミュニティーだけで生きており、皆と一緒に頑張って感動するということを経験してないだけで、ポテンシャルは同じだと思います。アルバイトで入ってきて、ワンダーテーブルのフィロソフィーというものを示すと、宗教じゃないのかと思われるかもしれません。感動なんて気持ち悪いと思う人もいるはずです。それは、経験をしていないからです。一緒に活動するきっかけを与え、支配人やアルバイトの仲間から “ それじゃダメだよ ” と言われることで、意識が変わっていくのです。それが組織になっていき、ある日突然、個人としての才能が開花するはずです。経営者が自分の価値観で、こういう経験をしてきてるだろうと勝手に判断して扱うから違和感になるのです。いまの若い世代は違うなんて言っていたら、それで終りなのです。

ワンダーテーブルには、現場力を上げるホップステップジャンプ・プログラムというものがある。ホップは組織づくり、ステップは運営力とQSCの向上、ジャンプは店舗の攻撃力アップという段階分けのプログラムである。若い世代の人材育成と密接な関係がある組織づくりでは、どのようなことに注意をしているのだろうか。

目指すべき姿を可視化して、本物の強さを持った店をつくる~ワンダーテーブルの店舗・人材育成哲学を学ぶ~【秋元氏】 組織が崩壊している店舗は、そのほとんどが責任者の問題です。たとえば、弊社では支配人と呼んでいますが、店長の遅刻が多いことが原因で崩壊していることもあります。月に3日しか休んでいないことを言い訳にして、店長が11時からのシフトなのに11時半に来ていたとします。11時に来ているアルバイトにしてみれば、店長にも11時に来てもらわないと困りますよね。でも、店長は労働時間が長くいのだから、それ位は大目に見ろと思っている。時間通りに来ないのは、アルバイトの不満であり、そこから信頼されなくなり、人間関係がギクシャクして組織が作れないわけです。そういう時に我々は、「 支配人(店長)はいなくてもいいんだ。休むときは休め、その代わり出る時はビシッと出ろ。“もう遅刻をしません” と宣言しろ 」 とアドバイスします。そして、遅刻どころか、逆に11時のシフトに対して、10時や10時半に出勤させるのです。誰よりも早く来て、まず自分が今日何をするべきか考える時間を持たせるのです。くじける人もいるでしょうが、それを1週間、2週間と続けていると、スタッフの見る目が変わってきます。変わろうとしているんだという意識を感じてもらえる。早く来ているから、アルバイトが合流する頃には仕事がスムーズで効率的になっている。仕事のやり方が変わってくるのです。遅刻をしないという発端から、今度は仕事ができる人間という評価にもなっていくのです。それが信頼となり、組織のつくりやすさになる。誰もが持っているような短所が、自分の成長につながったり、組織づくりのきっかけにもなる。それをホップ段階で徹底しているのです。目指すべき姿を可視化して、本物の強さを持った店をつくる~ワンダーテーブルの店舗・人材育成哲学を学ぶ~ホップは、支配人がリーダーシップを発揮して、価値観を理解させる段階です。だから、長く働いていて、オペレーションをこなせる人間が素晴らしい社員とは考えていません。支配人に反骨心を持っているようなベテランスタッフは、仕事がどんなにできても最終的にはトラブルのもとになりかねません。支配人の価値観を理解し、それを広めるトップランナーというスタッフを作るようにしています。それが、若い世代にも理解してもらえる仲間づくりになると考えています。



株式会社ワンダーテーブル

株式会社ワンダーテーブル

http://www.wondertable.com/

代表取締役社長:林 祥隆氏
本社:東京都新宿区富久町13-19

昭和21年(1946年)三井船舶株式会社の水産部門として発足、後に海運業へ転進
昭和24年(1949年)東京証券取引所市場第二部に上場
昭和28年(1953年)富士汽船株式会社に社名変更・平成 3年(1991年) ヒューマックスグループの系列会社となり、定款を変更して飲食等新規事業を開始
平成6年(1994年)飲食部門1号店 「 モーモーパラダイス 」 を東京都目黒区にオープン
平成12年(2000年)ワンダーテーブルに社名変更、海運事業より撤退

※首都圏・地方都市を中心に、20ブランド60店舗以上の飲食店を展開する

株式会社ワンダーテーブル

取材協力:株式会社ワンダーテーブル 取締役/Executive Managing Director 秋元巳智雄氏

文:貝田知明  写真(人物):トヨサキジュン
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