食べ放題、和食、イタリアンなどさまざまな業態のオリジナルブランドに加え、「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」や「ユニオンスクエア」などの海外優良ブランドを誘致、多彩な展開を首都圏中心に繰り広げているのがワンダーテーブルだ。“ 感動と満足を体感できる飲食店 ” を多彩なブランドと業態で作り出している同社の独創的な戦略について、取締役・秋元巳智雄氏のインタビューを交えてお届けする。
ヒューマックスグループは繁華街に所有するビルで総合的なレジャーを提供するというビジネスを基本としている。その飲食フロアを埋めるためには、飲食の業態もさまざまに持っていなければならず、誕生当初のワンダーテーブルも多業態多店舗戦略を基本としていた。その延長で、前回紹介したさまざまなブランドが誕生しているわけだが、現在の戦略には大きな柱が設けられている。(1)プロダクトアウト型、(2)マーケットイン型、(3)海外優良ブランド誘致という店舗展開の三本柱について、同社取締役の秋元巳智雄氏にお話をうかがった。
【秋元氏】 ひとつめのプロダクトアウト型は、しゃぶしゃぶ・すき焼き食べ放題のパッケージである 「 モーモーパラダイス 」 と 「 鍋ぞう 」 の展開です。差別化されて展開しやすい業態なので、国内外を問わず直営・ FCの両面で広げていく方針です。ただ、今の日本はあまりFC展開に適してない時期なので、募集はしていますが積極的ではありません。店舗規模が40~60坪で、初期投資に5000万円程度かかりますから、個人の方が手掛けるようなものではありません。なお、国内では 「 鍋ぞう 」 を展開して、「 モーパラ 」 は都内の繁華街に残すだけにしています。若い客層が多く集まる立地で100坪以上の物件を 「 モーパラ 」、客層の幅を広くしているのが「鍋ぞう」という棲み分けがあります。海外では、「 モーモーパラダイス 」 の名前の響きがいいという声が多く、台湾ですでに9軒営業しています。2008年の1月にはタイ・バンコクにもFC店をオープンしています。中国、オーストラリア、シンガポールなどアジアの大都市に展開したいと思っています。
ふたつ目は、マーケットインの発想からのブランド開発です。出店に際しては、流行る可能性が高いと思われる物件を先に抑え、その後でマーケットを調べるようにしています。どのような競合や盛業店があるのか、どのような利用動機が多いのかなど徹底的に調べます。競合がイタリアンだったら、「 ベリーニ 」 や 「 ヴェント 」 という既存のイタリアンブランドを当てはめても流行るわけがありません。しかし、そのマーケットに合っていたり、参入できる余地があるなら、レッド・オーシャン(競争の激しい既存市場)型でイタリアンを出した方がいいこともあるでしょう。逆に、ブルー・オーシャン(新規開拓市場)型で新たなブランドを開発していくこともあるわけです。
最近の例では、埼玉県にある複合施設・越谷レイクタウンにパンケーキを売にした洋食店 「 カントリーパンケーキハウス 」 をオープンしました。デベロッパーからはイタリアンもしくは洋食の店舗という依頼があったのですが、イタリアン系がすでにいくつかあったのです。店舗のクオリティではなく、価格競争のマーケットになるのは明らかですから、他店より少し高価格帯である 「 ベリーニ 」 をぶつけても勝ち目はありません。そこで、まったくかぶることのない洋食店を作ろうと、パンケーキのおいしい洋食屋というコンセプトを開発したのです。他には、スパゲティ中心のイタリア料理店が多いマーケットに向けて、ピザを売り物にしたイタリアンブランドを開発したこともあります。既存のノウハウを活用しつつ、ピザ系にすることで差別化を図りました。
単純に店舗を出すだけなら、持ちネタを出せばイージーですが、それで勝てるのかというのが最大の問題です。マーケットに合わせて、特長を持たせた店舗を新たに開発する、既存ブランドから派生させるというブランド展開を心掛けています。
3番目の海外優良ブランドの誘致は、業界における我々の強みだと思っています。たとえば、ローストビーフの専門店 「 ロウリーズ・ザ・プライブリブ東京 」 は、開店から7年が経過して年間10億円を売る店舗に成長しています。しかし、最初の3年間は赤字続きでした。オープン直後はマスコミで話題になったのですが、すぐにBSE問題が起きてしまったのです。また、ブラジル・シェラスコ料理の 「 バルバッコア 」 も同じように赤字スタートでした。しかし、海外ブランドを誘致するときは、そのブランドを愛して、たとえ赤字であろうと腰を落ち着けて本物の店を作ろうという信念を持っています。それが、海外ブランドを成功につなげるためのポイントではないかと思っています。
株式会社ワンダーテーブル
代表取締役社長:林 祥隆氏
本社:東京都新宿区富久町13-19
昭和21年(1946年)三井船舶株式会社の水産部門として発足、後に海運業へ転進
昭和24年(1949年)東京証券取引所市場第二部に上場
昭和28年(1953年)富士汽船株式会社に社名変更・平成 3年(1991年) ヒューマックスグループの系列会社となり、定款を変更して飲食等新規事業を開始
平成6年(1994年)飲食部門1号店 「 モーモーパラダイス 」 を東京都目黒区にオープン
平成12年(2000年)ワンダーテーブルに社名変更、海運事業より撤退
※首都圏・地方都市を中心に、20ブランド60店舗以上の飲食店を展開する
取材協力:株式会社ワンダーテーブル 取締役/Executive Managing Director 秋元巳智雄氏