「 トニーローマ 」 「 ハードロックカフェ 」 「 パパ・ガンプ・シュリンプ 」などの世界的なブランドと共に 「 カプリチョーザ 」 をナショナルブランドに育て上げることにより国内外に200店近くのレストランを展開する WDI 。同社の強みであるマルチブランド、海外展開力などを中心に、今後の展開について同社代表取締役 清水謙氏に話を伺った。
WDIの外食事業は、ケンタッキーフライドチキンのフランチャイジーからスタートして以降、「 トニーローマ 」 や 「 ハードロックカフェ 」 など数々の海外ブランドの輸入を拡大し、さらに石焼きハンバーグの 「 ストーンバーグ 」 といったオリジナルブランドの開発や個人経営の繁盛店の発掘を行うなどして、それらをFC手法を用いて多面的に展開していくことで今日のマルチブランド企業になって来た歴史がある。しかし、面白いものをやれば何でも当たるといった右肩上がりの高度成長の時代を経て、10数年前からは、立地や業態、人材育成においても工夫や改善を重ねていかねば生き残れないという厳しい競争激化の時代になった。
その中でWDIが勝ち組でいられる強みやそのために今後も注力するポイントとは何か?社長の清水謙氏に伺った。
我々の強みの一つは、「 マルチブランド戦略 」、つまり複数の業態を展開していることです。そのメリットには、お客様のニーズに応えられるような業態を数多く持つことが外食企業のひとつの大きな競争力となっているという時代背景があると考えています。例えば、商業施設が目白押しの今、デベロッパーさんに気に入ってもらえる業態を持っているか否かがカギとなるのです。多くのブランドを持っているということは、その商業施設に合致したブランドの選択や複数ブランドを組み合わせての出店も自由であるし、さらに発掘した新規の海外ブランドを提案するといったまさにオーダーメイドの提案が可能だということ。このオーダーメイドの提案を武器にデベロッパーさんとコミュニケーションを取りながら出店に結び付けていくということが、まさにマルチブランド戦略の醍醐味といえるのではないでしょうか。
更に、社内的なメリットもあります。それは、社員にとってモチベーションのファクターになりうるということです。例えば、「 カプリチョーザ 」 で育った人材がステップアップ(店長や料理長への昇進)を求めるとき、一つ上の業態や客単価の高い 「 プリミ・バチ 」 や 「 イル・ムリーノ 」 といった高級店舗での経験が可能であることは一つの安心感につながっていると思います。イタリアン・シーフード、和・洋・中・オリエンタルなど異なる業態の経験を同じ会社で積めることは、キャリアパスが多岐に描けるということに繋がるでしょう。これらが社員のモチベーションのファクターになっているということは、実は何よりも重要なポイントであると実感しています。
二つ目のポイントは、「 海外展開 」 です。当社は、1980年に海外一号店 「 トニーローマ ハワイ店(現ワイキキ店)」 をオープンして以来32年間に渡り海外展開の実績を持っています。現在の売り上げの海外比率は25%であり、これは日本の外食企業を見渡してもあまりないでしょう。当社は、海外出店は新しい食文化との出会いのチャンスであり、それを輸入して日本のお客様にご紹介することがWDIのビジネスの循環と捉え、今後もよりスピードアップした展開で海外比率を伸ばしていきたいと考えています。
最後に、当社は、「 面白いものをローカライズ(=現地化)せずにそのままやろう 」 ということを基本に事業展開してきました。お客様から頂くお褒めの言葉で何より一番うれしいのは 「 一晩限りの海外旅行をした気分だ 」 とおっしゃっていただくこと。これこそが、「 ローカライズせずに、海外の食文化をそのまま楽しんでいただこう 」 というWDIの基本姿勢が狙い通りにご支持頂けたと実感できる言葉なのです。一方で、海外旅行が普通にできる時代となり、IT化が進み情報の流通が簡単にできる今は、ローカライズを考慮する必要性が出てきたことも事実ですが。
株式会社WDI
代表者:代表取締役 清水謙氏
設立:1954年4月
所在地:東京都港区六本木5-5-1 ロアビル8・9階
事業内容:レストラン経営及び運営委託、ブライダル企画・運営
代表取締役 清水謙氏プロフィール
1968年 東京出身
1992年 慶応大学法学部卒業、さくら銀行(現・三井住友銀行)入行
1998年 WDI入社
2003年 代表取締役社長に就任