庶民感覚を忘れない店作りを~お客様の立場に立って日々精進を重ねる~ピッツェリア パルテノペ 渡辺陽一総料理長

庶民感覚を忘れない店作りを お客様の立場に立って日々精進を重ねる ピッツェリア パルテノペ 渡辺陽一総料理長

本格的なナポリピッツァで有名なパルテノペ 総料理長兼統括店長の渡辺陽一氏。外食ドットビズでは、昨年8月に掲載した『食材原価高騰の時代を活きる Vol.1』の第2回 に登場して頂いた。その取材に伴うインタビューで長時間に渡り興味深いお話をお伺いした。今回はそのインタビューの内容をネット講義としてあらためて皆様にお届けする。

第9回 番外編 第3回:飲食店を起業されようとしている方に一言!

第3回 飲食店を起業されようとしている方に一言!

では、最後に 『起業のためのネット講義』 らしく、締めさせていただきたいと思います。

庶民感覚を忘れない店作りを お客様の立場に立って日々精進を重ねる~ピッツェリア パルテノペ 渡辺陽一総料理長飲食店をやる上での心構えみたいなものですが、あくまでもフードはお店を作る要素の半分であるというのが基本的な考えです。これは、フードはどうでもいいということではありません。フードは100%良いものであるという前提なのです。ただ、フードが100%でも残りが駄目だったら、お店の価値は1/2しかなりませんよということなのです。

では、残りの半分の要素はといえば、サービスであり、お店の環境であり、衛生管理であり、箱作りといった諸々のことです。でも、サービスを一生懸命します、掃除を一生懸命しますということでは片手落ちなのです。何のために一生懸命するのかということを考えながらやらなくてはいけないのです。

庶民感覚を忘れない店作りを お客様の立場に立って日々精進を重ねる~ピッツェリア パルテノペ 渡辺陽一総料理長何のために一生懸命やるのか?もちろんお客様のためにですよね。とにかくお客様目線で、お客様はどうしてもらったら嬉しいと思っていただけるのだろうということを真剣に考えてください。もちろん皆さんも考えていらっしゃるとは思いますが、組織作り、マニュアル作りなど色々な形を作る中で様々なことに縛られてしまっているのではないかと思います。一言で言うと 「 出来ることはやりましょうよ 」 という部分は残しておくべきだと思います。

今年の冬にこういうことがありました。妻と広島焼で有名なお店に行ったときのことです。

庶民感覚を忘れない店作りを お客様の立場に立って日々精進を重ねる~ピッツェリア パルテノペ 渡辺陽一総料理長寒空の中、繁盛店だからしょうがないと思いながら外で30分ほど並んでいました。私たちの順番になって、合席ならすぐに入れますと言われたので、「 良いですよ 」 とお店に入ったのですが、なんと4人席で横並びの合席だったのですね。ここまでは許せます。

何しろ寒かったものですから、妻が温かいお茶を飲みたいと言ったのですが、「 できない 」 と言うんですね。緑茶は無いのかもしれませんが、烏龍茶はあったのに。電子レンジでチンするとか、鍋で温めるとかやり方はあるはずなのに。これにはビックリしましたね。寒空の中お客様が外で待っていたのにも関わらず、烏龍茶を温めて出すことすらやらないのですね。「 客に食わしてやっている 」 という気持ちでさばいているとしか思えませんよね。この様なことを感じさせるお店には、お客様は二度と行きたくないと思ってしまいます。

幸いにして、私のお店は毎日多くのお客様にお越しいただいています。それでも内心は 『 いつかお客様が来ていただけなくなるのではないか 』 とびくびくしています。ですからメンバーに対しては 「 お客様に決して失礼なことを言わないように 」 「 お客様に対して失礼な態度をとらないように 」 と口をすっぱくして言っています。「 満席です 」 とか 「 予約をされていないのですか 」 と軽く言ったりするのは簡単ですが、お客様の立場にたって考えれば、予約をしなければ入れないお店なんていうことはわからないわけですよね。通りすがりの方もいるわけですから。ですから、「 わざわざお越しいただいてありがとうございます 」 という姿勢でちゃんとお応えすることが重要なのです。

庶民感覚を忘れない店作りを お客様の立場に立って日々精進を重ねる~ピッツェリア パルテノペ 渡辺陽一総料理長現在私のお店では、こういう場合にはお客様の携帯番号をお聞きすることにしています。そして30分後になろうが、1時間後になろうが必ずコールバックをするようにしています。そうすると 「 ああ良かった。これから行くよ。 」 と半分くらいのお客様にお越しいただけています。「 もういいや、他所で食べているから 」 というお客様もいらっしゃいますが、「 失礼致しました。また次回よろしくお願い致します。 」 でいいのです。一手間かかりますが、経営的に見ても◎なのです。

いつも満席だから、適当にやっていてもお客様は来てくれるというのは大きな間違いなのです。

飲食店にとって、美味しい料理を提供すると言うのは当たり前のことなのです。ですからこれ以外のサービス、衛生管理、お店の雰囲気作りなどをお客様目線で日々考えながらやっていくべきだと私は思います。明朗会計も当たり前のことのようですが、現実にはレシートすら発行しないお店が多くありますよね?でもそれではお客さんは嬉しくないはずなんです。

それらのことがきちんとできていれば世の中がどんなに不況になってもお客様の支持を得られ、安心してお店を運営できるのではないでしょうか?「 あくまでもお客様目線で 」 これがキーワードだと思います。それではみなさんも頑張っていいお店を作ってください。

文: 齋藤栄紀



渡辺 陽一

渡辺 陽一

ピッツェリア PARTENOPE(パルテノペ) 総料理長
1961年愛知県出身。
高校卒業後、辻学園日本調理師専門学校(現、辻学園調理・製菓専門学校)入学。
専門学校卒業後、イタリア料理の老舗「アントニオ」に入社。
3年間の勤務の後イタリアに渡り、3年間の修行後帰国。その後再びイタリアに渡り延べ10年間をイタリアで過ごす。
2000年東京・広尾にピッツェリア PARTENOPE(パルテノペ)をオープン。その後、恵比寿、品川、横浜にパルテノペをオープンし、現在は、4店舗の総料理長。

文:齋藤栄紀
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