本格的なナポリピッツァで有名なパルテノペ 総料理長兼統括店長の渡辺陽一氏。外食ドットビズでは、昨年8月に掲載した『食材原価高騰の時代を活きる Vol.1』の第2回 に登場して頂いた。その取材に伴うインタビューで長時間に渡り興味深いお話をお伺いした。今回はそのインタビューの内容をネット講義としてあらためて皆様にお届けする。
そして、どういうお店にするのか?イタリアの修行で働いた3つ星レストランのような高級店にするのか、それともカントリーサイドの定食屋のようなお店にするのか?ということですよね。
私は10年間に渡って、本場イタリア料理に触れてきましたので、高いクオリティの料理を作ることができると言う自負があります。一方金銭感覚は庶民感覚であると思っています。ですから高クオリティの料理を低価格で提供したいと考えました。
実際、パルテノペのピッツァの価格は低い方だと思います。今、都内で平均するとディナータイムでは大体1500円前後が一般的な価格帯だと思います。当店のマルゲリータは1470円です。これじゃ平均と変らないじゃないかとなりますが(笑)。実は大きく違うのです。
当店のピッツァはフルポーションと呼ばれる30cmの生地を使っていますが、他店ではもう一回り小さい生地なのです。小さいと言うことは上にのせる食材も比例して少なくなります。例えば当店ではチーズを80gのせていますが、他店では60gで済むというようなことです。更に使用している食材のクオリティが大きく違うのです。1500円前後のマルゲリータで、この大きさ、この品質で提供されているところは無いと思います。そう言い切れます(笑)。それくらい都内のピッツアは全てといって良いくらいリサーチしていますから。
ある程度皆さんもご存知の有名店に行くと、水牛のモッツァレラチーズがのっていると2400円とか2800円。中にはポルチーノをのっけて3000円とかしますけれど、当店では一番高いものでも2000円はいきません (笑)。
一般のお客様の感覚からいって、ピッツア1枚に2000円以上出すのなら、他の店に行ったら定食が食べられるでしょうとなると思うんですね。少なくとも私自身はそういう感覚ですから。もちろん中には美味しいピッツァなら2500円出してもいいという方はいらっしゃるかもしれませんが、普通の庶民の感覚なら1枚のピッツァに2500円も出さないでしょうと私は思っています (笑)。
実際に妻と食事に行ったり、旅行したりする時にも私は庶民の感覚で行っています (笑)。どんなに美味しい料理を戴いても2人で15000円とか20000円支払うのであれば美味しいのは当り前だと思うのですね。でも、2人で10000円でお釣がきたら「あぁ良かった」と思います。これが庶民の感覚だと思うのです。この感覚こそがパルテノペの根底なわけです。現在パルテノペを4店舗やっておりますが、一番高い恵比寿店のディナータイムの客単価は4800円です。お2人でも10000円でお釣がくる位の客単価です。もちろんリーズナブルだけでは駄目です。きちんとしたクオリティがあって、美味しいことは必要です。
もちろんハレの日に行くレストランなら1人20000円でも良いと思います。でも週に1回行きたいとか、人がわいわいと集まって楽しい食事をするのに1人7000円とか10000円とかになると辛いと思います。少なくとも私は嫌ですね (笑)。この様なお客様の立場に立った感覚と言うことを私は真面目に考えてパルテノペを作りました。いや、今も真面目に考えています(笑)。
話はそれますが、現在はインターネットが普及していますよね。確かに便利なのですが、これが結構怖いのです。
パルテノペはランチタイムもやっているのですね。例えばピッツァランチは1260円なんですよ。ピッツァの夜と同じサイズのフルポーションにミニ前菜、パン、コーヒーが付いてです。これだけのボリュームでクオリティが高く、しかも広尾や恵比寿で1260円です (笑)。
それでブログとかにパルテノペのことが載ったりするんですよ。『 パルテノペに行くなら夜はコストパフォーマンスが悪いから、絶対に昼に行くべきだ! 』 『 パルテノペに行くなら昼が良い、夜は高いから 』 ですよ (笑)。
「 勘弁してよ 」 と言いたいですよ(笑)。でもうちのスタッフは、「うちが高かったら、
これからもパルテノペは、普通の方の感覚、庶民の感覚を忘れないお店にして行きたいと考えています。
最後になりますが、これから飲食店の起業を目指す皆さんに一言申上げます。これは常々私がスタッフに言っていることでもあります。『私たち以上に、お客様の方がよく知っている。だから自分自身よく勉強し、自分自身客として他のお店をリサーチし、市場をきちんと読み、お客様の立場に立って日々努力を続けなさい』と。
先ほどの話じゃないですが、インターネットが普及してお客様はどんな情報も簡単に手に入れることができちゃうわけです。私がイタリアに渡った時代と違って、今は簡単に行けて、本場の料理を食べられているわけなのです。
「先週はアクアパッツア、先々週はアルポルトで食べた」 (笑)みたいに私たち以上にお客様の方が競合店の味を良く知っている。この様なことを良く、良く理解した上で商売をするべきだと思います。決して井の中の蛙になってはいけません。
それと、私は幸いにして良きパートナー企業に巡り合うことができましたが、皆さんの業態に合ったパートナーを見つけてやって行くことも一つの手だと思います。例えば居酒屋さんをやられるのであればビールメーカーとか、うどん屋さんをやられるのであれば・・・う~ん、やっぱり製粉会社ですかね(笑)、などといったことです。
皆様も是非良いお店をお作り下さい。
渡辺 陽一
ピッツェリア PARTENOPE(パルテノペ) 総料理長
1961年愛知県出身。
高校卒業後、辻学園日本調理師専門学校(現、辻学園調理・製菓専門学校)入学。
専門学校卒業後、イタリア料理の老舗「アントニオ」に入社。
3年間の勤務の後イタリアに渡り、3年間の修行後帰国。その後再びイタリアに渡り延べ10年間をイタリアで過ごす。
2000年東京・広尾にピッツェリア PARTENOPE(パルテノペ)をオープン。その後、恵比寿、品川、横浜にパルテノペをオープンし、現在は、4店舗の総料理長。