カリスマ親父社長の“だから飲食店はおもしろい” 楽コーポレーション 宇野隆史氏

カリスマ親父社長の だから飲食店はおもしろい

大皿惣菜料理の草分けといわれる居酒屋「汁べゑ」の創業者であり、「くいものや楽」を中心とする多数のグループ店舗を手掛けている宇野氏。居酒屋経営者としての顔のほか、グループ店舗で社員を育て、独立開業まで導く「宇野道場」の“オヤジ”という一面もお持ちです。
厳しくも温かい教育方針で、宇野氏のもとを卒業したOBは300名近くを数え、日本全国はもとより海外でも繁盛店を作り上げています。
宇野氏が考える外食産業の魅力から、大規模チェーンとは異なる個性を活かした店作りのノウハウから、「宇野道場」で教える起業のための心掛けなどを語っていただきました。

第5回 楽しむ心があれば、飲食店はすぐにできる

楽しむ心があれば、飲食店はすぐにできる数十年間の経験を教えていたら、いつの間にか「道場」なんて呼ばれるようになっていた。大それたことを教えているわけではないので、恥ずかしいというのが本音。ただ、「この商売は本当におもしろいんだ」ということはみんなに伝えたい。八百屋から50円で買ってきたトマトを冷蔵庫で冷たくして、包丁入れたら150円で売れる。仮に八百屋までの距離が60mだったら、往復120m歩くだけの流通で価格が3倍に跳ね上がる。こんな楽しい商売はありえないでしょう(笑)。これから起業したいと考えてる人は、飲食店は楽しい商売と信じてもらいたいね。

最近は、団塊の世代の人たちが店を持ちたいと相談に来ることがある。そういう人たちは、いままでにいろんな酒を飲んで、いろんな美味しいものを食べてたはず。中には、飲んだ後に喰う白い飯と味噌汁が楽しみだったという人もいるかもしれない。だとしたら、そういう飲み屋をやればいい。最後にうまい飯を喰うための飲み屋っていいでしょ? ご飯を炊くなんて、高性能の電気釜があるんだから1週間で覚えられる。味噌汁にしたって、北と南の味噌を合わせるといったコツもすぐに調べられる。そのうえに、伊豆の干物の炭火焼きなど各地の名産をそろえれば完璧だね。自分がいままで生きてきて「うまい」と思った味、言い換えれば、これまで培ってきた人間の味を提供する飲食店は受けるに決まってる。

それなのに、いまさら居酒屋の研修を受けて、お辞儀の仕方を習ってる。そんなことより、母ちゃんに米の研ぎ方ならって、ピカピカのご飯を炊けるようにして、飲んだ後にうまい飯を出す店をやるんだという思いの方がよほど大切だね。さらに、客が喜ぶ工夫をするなら、“マイふりかけ”をキープしてあげればいい。初めてきたお客さんにふりかけをプレゼントして、ラベルに名前を書いて「キープしとくね」といったら、そのお客さんは、そこで飯を食うようになるでしょう。60歳近くまでサラリーマンで働いていたら、それ以上に難しいことを考えてアイデアを出してきたはずです。いまさら講習会に高いお金を払わないで、自分が何を本当に喰いたかったかを考えてほしい。それと楽しむ心があれば、飲食店はすぐにできると思う。

楽しむ心があれば、飲食店はすぐにできる



宇野 隆史

宇野 隆史

1944年東京生まれ。現在の居酒屋文化に大きな影響を与えたコンセプト「くいものや楽」の創業経営者。現在はバンクーバーに住居を構え、日本とカナダとの二重生活を送る。昨年12月三軒茶屋に「べゑ’s BAR 虎龍」をオープン。店造り、商品とも楽しさに溢れた店舗で希代のコンセプトメーカーと言われる実力を見せつけた。

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