国内の飲食マーケットが縮小する中、海外に活路を求めている飲食企業は少なくない。しかし、海外で店舗展開するのは国内での展開にはない課題が少なからず存在する。外食ドットビズでは、飲食店の海外進出に際しての課題と解決策を飲食業に関わる先人たちの経験から探り、情報として提供していきたいと考える。
今回は、海外飲食店の店舗ITを支える株式会社寺岡精工の代表取締役社長 寺岡和治氏にお話をお伺いした。
− これまでの海外実績を踏まえ、主に中国や東南アジアに進出する日本企業に対し、貴社が飲食業に提供できるソリューションについてお伺いしたいと思います。まずは商品についてお聞かせください。
【 寺岡社長 】(以下、敬称略) 昨年の外食ドットビズの記事で、「 私どもがこの業界に本格的に参入してわずか3年 」 と申しましたが、その時点でかなり多くの既存のプレイヤーがいました。同じことをやっていては当然勝ち目がないので新機軸を打ち出してきました。その一つがいま巷で話題となっているクラウドコンピューティングを活用した本部システムです。
この仕組みの利点は、アプリケーションやデータなどは弊社サーバーを利用していただけるので、中国やシンガポールなどの海外でシステムを構築する必要がないということです。日本では大手の外食企業さんでも、海外の展開は1、2店舗から始められると思います。数店舗の時に日本からシステムのご担当者を派遣してシステムを構築するとなるとオーバーヘッド(間接費)がかかって、莫大な投資が必要になってしまいます。弊社の仕組みをご利用いただければ、手間隙がかからず安価でご利用いただけます。日本語のみならず中国語、英語の3ヶ国語に対応していますので、現地のマネージャーが中国人でもシンガポール人でもはたまた欧米人でも店舗売上などのデータをリアルタイムに入手できるのです。もちろん日本の本社でも同じデータが日本語で見ることができます。
本部システムを活用するためにはPOSやOES(オーダー・エントリー・システム)などの機器が必要になってきます。当社のPOSやOESはシンガポールでつくっていますから、機器に関しても日本から輸出するのではなく現地で購入していただけるのです。これらの機器も当然3カ国対応となっていますので、現地の方が現地の言語でスムースにオーダーを取ったり、会計をしたりすることができます。厄介なメニューメンテナンスなどは、当社の仕組みを使っていただければ現地でも日本でもどちらでも作成できることになります。
− 商品の販売体制はどのようになっているのですか?
【 寺岡 】 日本の外食企業のお客様が海外に店舗展開をする場合には、最初はホスピタリティソリューション事業部の営業がサポートさせていただきます。必要があればお客様と一緒に現地に飛んだり、現地の人間に指示を出して、現地の人間がお客様対応をさせてもらったりしています。日本からのお客様だけではなく、現地のお客様に対しても同様の商品を販売させていただいております。この場合は、現地に営業部隊がおりますので、彼らが直接お客様に対応させていただき販売を行っております。
【 鹿野次長 】 ホスピタリティソリューション事業部の鹿野と申します。補足説明をさせていただきます。私どものビジネスの利点は、海外拠点とのシナジー効果を出せることです。現地のお客様にも販売していると申しましたが、その現地のお客様が日本に出てこられる時には、逆に日本で我々の部隊がお客様対応をさせていただいたり、日本のお客様が直接シンガポールに行って現地の人間と商談をさせていただいき、その情報を持って日本の部隊が日本の本社さんにご挨拶にいったりということができています。
導入事例を申し上げるとシンガポールの日系企業では、焼鳥のとりQさん(8店舗)、ラーメン店の毘沙門、大黒屋(2店舗)さん、日本食ではひまわり(2店舗)さんと大戸屋さん、特に大戸屋さんはこの間シンガポール2号店を出されて、POSとOESをご導入いただいたのですが、大変気に入っていただいて1号店にも追加で導入いただけることになりました。目新しいのはイルマという新しいショッピングセンター内の 恵比寿星商店街 ですね。Japanese Amusement Food Street、いわゆるフードコートなのですが、つぼ八さんやメイドしゃぶしゃぶの寅しゃぶさんなど7店舗あるのですがここにはペン型セルフオーダーシステムをお使いいただいています。ここのホームページには 当社の商品を使っていただいている写真 がありますので是非ご覧になってください(笑)。
中国では、上海一幸花橋店、北京衆益食間さんが当社のPOSシステム、丹東鯖江本店、武の助(上海)、青島牛島焼肉店、武の助(北京)さんがペン型セルフオーダーシステムをご導入いただいております。また、現地の企業は、天津SINESE、上海真鍋(港Hui広場店)にペン型セルフオーダーシステムをご導入いただいています。
− 販売するにあたっての課題や問題点がございましたらお教えください
【 寺岡 】 あるシンガポールの店舗で、ペン型のセルフオーダリングを使っていただいているのですが、導入にあたってマネージメント層の方は面白い、これは良いと判断されたのですが、いざ導入するとお店のほうで問題があったそうです。お客様が注文のために呼んでいるのにもかかわらず、店員が一向に行こうとしないので、マネージャーが「注文を聞きに行きなさい」と注意をしたそうです。それでも店員がなかなか行かなかったので理由を聞いたところ、「 あんなもの(セルフオーダー端末)を入れられたら私たちの仕事がなくなってしまう。だからお客様に操作方法の説明をしなかったんだ 」 と職を失う心配をしていたそうです。
そこで、現地のトップの方は 「 そんなこと心配しないでいい。まだうちの会社は店を出す計画がたくさんあるのだから、この店だけではなく新しい店で働ける余地がある 」 と説得して、ようやく店内が平和になったということでした(笑)。出張の際にそのお店にも立ち寄らせてもらったのですが、皆さんよく端末を使っていただいていました。
株式会社寺岡精工
会社概要 1934年11月(昭和9年)に、「はかり」メーカーとして創業、一貫して先進技術を追求する姿勢で、計量機器から情報機器へとはかりを進化させ、業界のリーディングカンパニーとなる。80年代からはスーパーなど流通業界向けのPOS事業を展開、90年代には高度情報化時代に対応すべく、POSや計量包装機、電子棚札などすべての製品をインターネットでつなぐシステムを開発するなど画期的な製品を市場に投入してきた。近年になって外食産業に参入、ASP型フードサービス統合システム「Delious(デリオス)」やペン型オーダー端末など最新技術を駆使した商品やソリューションを提案している。
代表者 代表取締役社長 寺岡和治
経営理念 経営革新と新技術により、世界市場における新しい価値の創造を企業活動の基本理念とし、もって顧客、取引先、社員ともども真の繁栄を期する。
取材協力 ホスピタリティソリューション事業部 ソリューション営業部 次長 鹿野浩二氏