ペン型オーダー端末やタッチパネル式券売機など、外食産業向けに新たなシステムを提案している株式会社寺岡精工。フードサービスソリューションの企業としては後発参入となるが、独自の視点と切口によって誕生した商品やシステムは斬新なもので、飲食店の新サービスになるという声も多く聞かれている。
今回は、代表取締役社長・寺岡和治氏へのインタビューを通して、外食産業の活性化に貢献する“ホスピタリティ・ソリューション”を考察してみる。
―斬新なアイデアが思い浮かぶのはどういう時ですか?
【 寺岡氏 】 ファストフード向けには、どのようなものを提供すればいいのかなど、常に頭の中にいくつものテーマを持って観察するようにしています。頭の中にテーマを入れて、町を歩いたりすると、いろいろな情報が蓄積されて、ある段階までいったら臨界点に達します。そういうときに、アイデアとして形になることがあります。必死に考えて今日中に答えを出そうとしても出てくるものではありません。常に考えながら暮らすことが大事ではないでしょうか。
―ちなみにファストフードによくいかれるのですか?
【 寺岡氏 】 さすがに僕一人では行きにくいので、孫を誘います(笑)。12才になった今はあまり付き合ってくれませんが、孫と一緒にできるだけカウンターに近いところに座って、お客さんがどう注文しているか、それにスタッフがどう対応しているかを見るようにしていました。iPhoneを使って、その時間を計ることもしていますね。レジに5人が並んで待っているとしたら、一番後ろにいる人の注文が終わるまで何秒かかるかをストップウォッチ機能で計るのです。僕が一人でそれをやっていたら怪しいでしょ(笑)。孫と遊んでいるふりして計測するわけです。それに、孫を撮るふりをしながら、店内を撮影してみたりもするので、私のiPhoneにはいろいろな店のデータが蓄積されています(笑)。
それで見えてきたのですが、ファストフードのオーダーで時間を食っているのは、お客さんが注文を決めるまでなのです。スタッフはいつでも注文を受ける準備ができているのに、なかなか注文を言いだせずに時間をロスしているのです。それから、お金を出す時間もロスになっています。注文が終わって、レジが閉まって○○○円と金額が表示されてから、お金を探して出すまでの時間が掛かっているのです。小銭を数えてみて足りないから、じゃあ千円札でという時間が長いのです。一方で、スタッフの対応はどの店も早くて、そこでは合理化の余地がないこともわかります。そういうことがアイデアにつながっていくのです。
見ていてわかるのは、どの店舗でもスタッフ側の対応は、かなりハイレベルなラインまで到達していることです。あれ以上に改善するのは難しいだろうと思います。効率化できるとすれば、お客さんの注文の速度を上げることですが、それは難しいですよね。「 早く注文しろ 」 なんて言えるわけがないですから。やるべきことは、お客さんの注文時間をスタッフが応対する時間の外側に持っていくことなのです。同じ時間は掛かっているけれど、スタッフの時間でなくなれば効率化が図れるのです。それから、お金を準備する時間を短くするというのも無理ですが、これも店側の時間から外してしまえばいいのです。それらを実現するためのシステムとは…、まだ言えませんね。
それから、飲食の経営者の方からアイデアをいただくこともあります。たとえば、居酒屋での最初の注文というのは、とりあえずという感じでビールを頼んだりしますよね。そのオーダーは、紙に書いてもらうのが一番合理的だという声がありました。チェックシートみたいなものを用意しておいて、「 とりあえずはこれだけ 」 とオーダーをしてもらうわけです。それを機械で自動読み取りをしてシステムに入力してしまう。次からはペンをつかって追加注文してもらうのです。
―寺岡精工のみなさんの頭のなかには、「 いままでとは違う視点でソリューションを提供する 」 という思いがありそうですね。
【 寺岡氏 】 そうだと思います。注文を正確に取って、すばやく厨房に伝達するというシステムはすでにありますから、そこは基本であって勝負するポイントではないとわかっています。ホスピタリティを上げるためにはどうしたらいいかという新しい領域で勝負をしていく。そうでなければ参入した意味はありませんから。
―そういう見方で外食にいくのは疲れませんか?オーダーやお金のやりとりの場をずっと見ていたら、おちおち食事もできないように思います。
【 寺岡氏 】 孫はいいですが、女房は 「 あなたと食事に来るのはいやだ 」 と言っていますね。僕は、その場をずっと見て考えているのが楽しくてしょうがないのですが、周りはそうではないようですね(笑)。
株式会社寺岡精工
会社概要 1934年11月(昭和9年)に、「はかり」メーカーとして創業、一貫して先進技術を追求する姿勢で、計量機器から情報機器へとはかりを進化させ、業界のリーディングカンパニーとなる。80年代からはスーパーなど流通業界向けのPOS事業を展開、90年代には高度情報化時代に対応すべく、POSや計量包装機、電子棚札などすべての製品をインターネットでつなぐシステムを開発するなど画期的な製品を市場に投入してきた。近年になって外食産業に参入、ASP型フードサービス統合システム「Delious(デリオス)」やペン型オーダー端末など最新技術を駆使した商品やソリューションを提案している。
代表者 代表取締役社長 寺岡和治
経営理念 経営革新と新技術により、世界市場における新しい価値の創造を企業活動の基本理念とし、もって顧客、取引先、社員ともども真の繁栄を期する。
取材協力 ホスピタリティソリューション事業部 ソリューション営業部 次長 鹿野浩二氏