「串特急」の多店舗展開、「りきしゃまん」の買収などで約150店舗もの飲食店を育て上げたカリスマ経営者・杉山春樹氏。「ジャズを聴きバーボン片手に焼鳥を」という名フレーズやさまざまなアイデアで繁盛店を作り出した、その独創性は、一体どこから生まれてきたのでしょうか。25年の外食経験で得たノウハウを伝えるコンサルタント業、さらにはペット事業などの新規事業にも意欲的に取り組んでいる杉山氏の考えに学んでみましょう。
新しい焼鳥屋の業態を考えることと修行のために、ある串焼き屋で給料なしで夜だけ働かせてもらいました。そこは、九州から取り寄せた材料を使った串が 30種類もあるようないいお店でしたが、皿の上にキャベツを乗せて、塩だろうがタレだろうがまとめて出していました。
京料理店の支配人をしていましたから、タレと塩を分けるのはもちろん、焼鳥屋であっても暖かい物は暖かい物、冷たい物は冷たい物で出してあげたら面白いだろうと思いました。それに、同じ肉ばっかりの焼鳥じゃなくて、焼鳥もあり巻物もあり野菜があり、いろんな物を出せば女性客にも受けるんじゃないかと思って、ふと考えついたのが、新幹線の座席を参考にした「自由席コース」「指定席コース」「グリーン席コース」という形式なんです。「自由席」は 9品980円、肉がタレで3種類、野菜を塩で3種類、最後に巻物を塩コショウで3種類。これをコース料理のようにおしゃれに出せば、女性客に受けるだろうと思いました。これが「串特急」という店名の由来にもなっています。
「 ジャズを聞き、バーボン片手に焼鳥を 」 というテーマは、格好良さの他に機能的な面もあります。飲食店の音楽は、会話を妨げないことが大切です。店内に好きな音楽が流れてくると、会話を止めて口ずさんでしまうことがあります。楽しい会話が途切れてしまいます。それを避けたくて、有線放送のチャンネルを回していたら、会話を妨げず、耳障りでもなく、それでいて格好いい音楽がジャズだと気付いたんです。それに合うお酒となれば、日本酒ではなくバーボンですよね。
料理ができないもので、焼鳥すら手探り状態ですから、最初の一年間は厳しかったです。京料理店時代のお客さんで近隣に住む 500~600人の方たちと東京電力の仲間だけにオープンの案内を出しただけ。オープンから3ヶ月間ほどは看板らしい看板を掲げず、そのお客さんだけに来てもらっていました。焼鳥の注文が10本入ると、11本焼いて1本は隠れて自分で食べる。焼けていると確認してから出す。仲のいい友達がくると焼き加減を確認していました。売上は一日4万4千円からスタートして、毎月1万円ずつ平均が上がりました。それは、今でも親しくしている東電の仲間のおかげです。「 杉山を潰さない会 」 というのを作ってくれて、「 客がいなかったら俺たちに言え。5人でも10人でも連れて毎日食いにいってやる 」 と言ってくれました。うれしかったですね。
そろそろPRできるかなという段階で考えたのはイベントの開催です。といっても広告費は出せませんから、無料で告知できる手段が必要です。それで探し当てたのが、「 求人雑誌でイベントを告知する 」 というアイデアです。2ヶ月に1回はイベントを開催しました。150人乗りの船を貸し切った75対75の 「 相合い船ツアーパーティー 」 、名古屋から沼津までのお座敷列車で 「 ねるとん大会 」 、結婚式場での 「 仮面パーティー 」 などなどです。店のファンをつくることが目的です。
一度、店を見てもらいたいがためにイベントを告知して、店にチケットを買いに来てもらう。そして、イベントの写真をたくさん撮っておいて、皆さんに 「 お店で渡すから来てください 」 と二度目の来店を誘うわけです。イベントに来て、二回も店に来ればファンになってくれます。他にも、レジの横に “ 割り勘電卓 ” を置いてみたり、金魚鉢でサワーをつくったり、暗いお客さん用にエネルギーを注入する 「 エネルギー供給電源 」 というのも設置しました。指に弱電流を流す仕組みで、それをやるとエネルギーが吸収できる(笑)。来てくれたお客さんをとにかく楽しませようということを一番に考えていました。そうこうしているうちに2年目に人気が爆発して、今度はビジネスを考えるようになっていきました。
杉山 春樹
1954年愛媛県生まれ。3歳から伊豆・湯ヶ島で育つ。東京電力学園に入学後、東京電力入社。一国一城の主を目指して脱サラ。京料理店の支配人として修行し、1987年に焼鳥屋「串特急」の1号店を開業。「ジャズを聴きバーボン片手に焼き鳥を」のフレーズで女性客の人気を博す。ダイエー子会社の「りきしゃまん」を買収して東京にも進出、合計で150店に近い数の飲食店を作り上げる。外食業への従事25周年を期に代表を辞任、独立を支援するコンサルタント業のほか、ペット事業・インターネット事業などの新しい挑戦を常に続けている。
株式会社杉山春樹事務所 代表取締役社長
株式会社ドリーム 代表取締役社長
株式会社リラクコーポレーション 代表取締役会長
グローバルバンク株式会社 オーナー