飲食店に求められることは、売上高を増やすことはもちろんのこと、無駄な出費を減らしコストダウンを行うことである。特に個店の経営に際して、スケールメリットを享受してコストダウンを行うことは難しい。飲食店商店街は、個店を連合体としてスケールメリットを出し、コストダウンを実現することを目指している。今回は、飲食店商店街を運営する有限会社勝馬の代表取締役 宮川壮介氏に飲食店商店街の取組みを中心に話を伺った。
祖父と父の代でもずっと同じ業者さんと取引をさせて頂いていました。私もかつて3代目として、父から紹介された業者さんと価格交渉をしたのですが、見事に断られました。先々代からの長い付き合いだからということで、昔からの高い金額で販売しようとするんですね。でも、お客様からは、良い食材を極力安い金額で提供して欲しいと望まれている。これは悪いしがらみだと思い、こちらから取引をお断りしました。
加盟店さん募集のため、営業で回っていると日本にはまだまだこうしたしがらみのお付き合いが至るところにあることがわかります。しかしだからこそ、こうしたしがらみの世界を掘り起こしていけば、まだまだコスト削減は可能になるのではないでしょうか。
加盟店さんは、年間50店舗くらいずつ増えています。浮き沈みの激しいこの業界中でも、加盟店さんは強いですよ。皆さん頑張って営業を続けられている。やはり、コストに対する強い意識を持たれているからではないでしょうか。
「 飲食商店街 」 の運営では、コンサルティングに関わる費用は一切いただいていません。加盟店さんのキャパシティに応じて、月額が5千円と1万円の2パターンでの会費制となっています。
コスト削減のみならず、販売促進や経営相談・新規開業に関わるサポート業務も全て会費の中で賄っています。今までの経験や他の店舗の成功事例、街によって異なる販促のやり方などの情報をお伝えすることも私どもの大切な役目だと思っています。
私どもの提案により、コストダウンができれば、お店にのみならず、結果的に来店されるお客様にもプラスになります。もし、ご加盟をいただけたら、私どもと提携している業者さんにとっても取引先が増えるメリットがありますので、正に win-win の関係が構築できるのです。
現在私どもは、業者さんだけではなく、行政に対しての取り組みも行っています。
例えば、三重県鳥羽市の例では、村興しのような地域活性化のお手伝いもしています。鳥羽市長さんの全面的ご協力で、鳥羽の豊かな海で獲れた現地食材を加盟店さんにご当地価格での提供が可能となっています。「 地産東消 」、産地のものを東京で売りましょうとの取り組みですが、市長はこの言葉をことの他気に入っていました。現在では、長野県の豚肉や福岡県の魚介類など、こうした取り組みも徐々にですが広がりつつあります。
現在の加盟店さんの状況は、9割が東京で、残り1割が神奈川・埼玉・茨城・大阪などとなっています。今後の目標としては、東京に集中している加盟店さんを全国に広げて、できる限り日本各地の地方の活性化に繋げて行きたいと考えています。そして、提携先も業者さんだけではなく、行政や自治体にも広げて行きたいと思います。更に、壮大な夢ですが、将来はこのシステムを世界にも広げて行きたいとも考えています。流通経路の問題がありますが、日本特有のしがらみのない海外のマーケットでもビジネスとして成り立つのではないでしょうか。ある程度の規模の企業と提携できればクリアできる課題だと思っています。
大手チェーンと個人店が同じ土俵で戦えない現状ですが、ボランタリーチェーンのイメージで1店1店が集まって組織化をすることにより、大手チェーンと対等に戦えるようになりたいですね。まずは、東北や九州など全国に拠点をつくって、全国から様々な食材を仕入れられるようにしたいと考えています。
既存のノウハウが無い店舗・企業さんにこそ 「 飲食店商店街 」 の仕組みをご活用いただきたいと思っています。コスト削減の掘り起こしは劇的な結果をもたらします。
私は、加盟店さんや営業先の飲食店さんに対して、コスト削減でできたお金は銀行に預けるのではなく、販促など売上を上げる施策に回しましょうと提案しています。売上が上がれば原価率が下がり、給料も上がれば現場で働く人のモチベーションが上がることに繋がります。もちろん、販促は失敗することもあるかもしれませんが、ゼロで終わる可能性の方が低く、やればやっただけの結果が出ると思います。
とにかく売上に目を向けて頂きたいと思います。私たちのシステムはその取っ掛かりの部分です。削減できたコストの中から幾ばくかの経費を使って、それこそチラシを配ることでも良いですし、ぐるなびや食べログにお金をかけても良いと思います。売上を上げることで、スタッフの給料に還元をしたり、お客様に対して提供価格として還元できれば、飲食業界の活性化に繋がっていくのではないでしょうか。
(取材日:2013年10月16日)
飲食店商店街
http://www.katsuma-support.com/
運営企業有限会社勝馬
本社東京都千代田区九段北4-2-11 第2星光ビル102
代表者代表取締役 宮川 壮介氏
事業内容コストダウン支援事業並びに飲食店の経営