「トリドール編」お客様に愛される店であり続けたい ~創業業態からの大転換を果したトリドール~

外食企業物語 トリドール編 お客様に愛される店であり続けたい 創業業態からの大転換を果したトリドール

昭和60年(1985年)8月の暑い日に、兵庫県加古川市に8坪の小さな焼鳥屋が開店した。店先には、「Yakitori Tori doll 3番館」と手書きで書かれた看板が掲げられていた。「 どうしたら、お客様が来てくれるだろうか? 」 とまさに手探りの中開店しながらも、「将来、3店舗を経営したい」と言う創業者の思いがこもった看板であった。

お子様からご年配の方まで、ご家族が一緒に楽しめる焼鳥屋を目指し、「とりどーる」の屋号で店舗展開を進めてきた株式会社トリドール 。いまやその軸足を讃岐うどんの店「丸亀製麺」に移しながらも178店舗(2008年1月末時点)を有する一大外食企業に成長した。創業当時は、「何とか3店舗は経営したい」と考えていた粟田貴也創業者社長も、ここまで大きな外食企業に育つとは思っていなかったと言う。創業業態にこだわらず、新たな業態開発で成長しているトリドールの歴史を紐解いていきたいと思う。

第2回 一国一城の主になる!~トリドール創業者粟田貴也氏の思い~

第2回:一国一城の主になる!トリドール創業者粟田貴也氏の思い

トリドール創業者社長 粟田貴也氏トリドール創業者社長の粟田貴也氏は、1961年(昭和36年)に兵庫県神戸市で生を享け、その後、兵庫県加古川市に居を移すことになる。

高校は、地元の名門校である兵庫県立加古川東高等学校に入学した。同校は、1924年(大正13年)創立の旧制加古川中学校の流れを汲む兵庫県内でも屈指の伝統校である。

高校卒業後、大学の門をくぐるが、大学生になった時から将来はサラリーマンではなく、独立して自分の会社を起業しようと考えていた。そしてこの大学生時代に自身の将来を左右するものに出合うことになる。

第2回:一国一城の主になる!トリドール創業者粟田貴也氏の思いそれは、アルバイトで働いていた喫茶店であった。これが、外食産業との出会いでもあった。当初は、漠然と独立と言うことは考えていたが、具体的な職種までは決めていなかった。喫茶店でアルバイトをするようになった粟田氏は、その面白さに引かれ、自分で喫茶店を開業したいという強い気持ちを持つようになったのである。

目標を定めた後の行動は、素早かった。もともと独立志向の強かった粟田氏にとっては、学士の資格は無用の長物であった。それよりも必要なものは開業資金である。そこで、迷わず大学を中退し、開業資金を得るために佐川急便のセールスドライバーとして勤務することになるのである。

一国一城の主になる!トリドール創業者粟田貴也氏の思い佐川急便に勤務時代、仕事が終わってから赤提灯に通うようになった。そこで店主とお客様の絶妙なやり取りを見聞きした。自分もお客様との会話を楽しみながら仕事をする方が向いているのではないかと考えた。喫茶業から居酒屋業に興味の対象が移った瞬間であった。

そして、開業資金を貯め、23歳になった粟田氏は、1985年(昭和60年)8月に 「 お客様との会話を楽しみ、おいしいと思っていただける焼き鳥をお出ししたい 」 との思いから 「 Yakitori Tori doll 3番館 」 を加古川市にオープンした。

1号店看板ここで興味深いのは、ワタミ株式会社の創業社長である渡邉美樹氏との近似点である。渡邉氏も大学卒業後開業資金を得るために佐川急便のセールスドライバーとして勤務している。その後昭和59年5月に第1号店として居酒屋つぼ八のFC店を東京の高円寺に出店した。つまり、両名は、ほぼ同時期に佐川急便で開業資金を得るために勤務し、居酒屋を開業していることになる。

さらに、つぼ八は、創業者の石井誠二氏が札幌に出した1号店が8坪であったことから 「 つぼ八 」 と名づけられたが、「 Yakitori Tori doll 3番館 」 とお店の大きさが同じところも偶然とはいえ興味深い。

一国一城の主になる!トリドール創業者粟田貴也氏の思いさて、話をトリドールに戻そう。人生設計通り、自分の店を持つことができたが、店舗運営も設計書通りできたわけではなかった。

加古川駅近くに開業した店舗は、小さいながらも決して立地が悪いところではなかった。しかし、お客様が入らなかった。全く流行らなかったと言っても過言ではない。

しかし、念願かなって持った店である。ここであきらめるわけにはいかなかった。どうしたらお客様に来ていただけるのか。ここから粟田氏の試行錯誤が始まった。

オープンキッチン行き着いた答えが、焼き場をお客様に見ていただくことであった。つまり、オープンキッチンにすることである。それまでの焼き場は、店の奥の方にあった。それをお客様の目の前に持ってくることにより、活気のある店に見せるだけではなく、お客様との会話がより深まることになったのだ。そして、お客様の数も徐々にではあるが増え、多くのお客様に来ていただけるようになったのである。また、このオープンキッチンの考え方が、後々の店舗レイアウトの基本ともなったのである。



株式会社トリドール

株式会社トリドール

http://www.toridoll.com/

【会社設立】1995年(平成7年)10月。
【会社概要】家族で利用できる本格的な焼鳥屋を志し、焼鳥ファミリーダイニング「とりどーる」を、ロードサイドを中心に展開。
その後、ショッピングセンターを中心にセルフ讃岐うどん店「丸亀製麺」に事業をシフトするとともに多業態化をはかる。
2006年(平成18年)2月に東京証券取引所マザーズ市場に株式を上場。
【経営理念】「ひとりでも多くのお客様に いつまでも愛され続ける 地域一番店を創造していこう」
【代表者】代表取締役社長 粟田貴也

取材協力:
経営企画課 IR・広報担当 伊藤純一氏
経営企画課 IR担当 萬代健氏

文:齋藤栄紀
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