潜水艦型のパンにハムや野菜などを挟んだサブマリンサンドイッチは、アメリカでは昔から愛されてきた伝統的なメニューだ。SUBWAYという名前は、このサブマリンサンドの “ SUB ” に、あなたの好み通りに作りますという意味を示す “ WAY ” を組み合わせたもの。「サブマリンにいろいろなお好みを詰め込んで、あなただけのサンドイッチをお楽しみください」。会話しながらつくる対面式スタイル、そこから育まれるホスピタリティ精神などサブウェイ40年の歴史を踏まえながら、日本サブウェイが展開する独自戦略に注目していきたい。なお、今回は、代表取締役 伊藤彰氏のインタビューを交えてお届けする。
「 野菜のサブウェイ 」 として、“ 野菜の基地 ” をつくることが今後の商品開発におけるキーポイントであり、“ 顔の見える野菜 ” を目指していくという。そして、おいしさはもちろんのこと、安全・安心、健康や運動といった切口からチェーン拡大を図る構えだ。日本サブウェイが掲げるこれからの目標と課題を最後にうかがってみた。
【伊藤社長】 いろいろなところで、「 顔の見える野菜 」 が展開されていますが、サブウェイはトマト、レタス、ピーマン、オニオンを安定的に使うチェーンですからやりやすいはずです。農家の方々にとっても計画生産しやすく、効率もいいですから、そういう構造をつくっていきたいと思います。それに野菜はカットするので、多少形が悪い野菜でもいい。形がいいものは別のところにするなど、お互いにとって最善の方法を探りたい。野菜については、サブウェイの差別化の最優先項目と考えておりますので、すぐにでもスタートしたいです。また、環境への配慮も理念のひとつですから、食品残渣の再資源化対策としてカット工場との連動をしっかりと作ろうと思っています。美味しさだけでなく、安全や環境面にも配慮できる。お客様にもきちんと告知をして、安心感をもっていただく。これが、サブウェイのチェーンを拡大させる最大の武器になるのではないかと思っています。
チェーンシステムの一番の特徴は、食材に利益をのせていないことです。他チェーンでは、指定食材を使うことで利益が出るような仕組みもありますが、サブウェイはそれを一切していません。流通費用が掛かるところは、もちろん価格に反映されていますが、それによって本部が儲かるということは一切ありません。食材の価格も、直営店だろうが、オーナーさんの店舗だろうが、すべて同じで開示もしています。だからこそ、商品の販売価格についても相談もできるのです。そんな特徴がオーナーにはわかりやすい、透明性のあるビジネスフォーッマットだと思っています。
商品開発の仕方としては、お客様が自分でカロリーコントロールをできるような商品を作っていかなければいけないし、運動もキーワードになってくるだろうと思います。運動や美容を考えている方々とタイアップした商品開発もシリーズ化していきたいですね。09年の秋頃にはいろいろと出ますから、楽しみにしていただきたいと思います。
アメリカ本国では人口 1 万人にサブウェイ1店舗を指標としており、その通りになっています。アジアでは、食文化や所得格差などいろいろな状況を含めて、10 万人に1店舗が指標となっています。そうすると日本は1200~1300 店が目安です。正確な期限は設けていませんが、2010 年までに400店にしたいと思っています。
こかれらサブウェイをやってみたいという方は大歓迎ですが、これだけは外してほしくないポイントがあります。私がオーナーさんと接する機会を持って感じたのは、誰もがこのサンドイッチに惚れ込んでいるからサブウェイが続いているということです。惚れているからこそ、達成できたことや我慢できたことがある。まず、商品にほれ込まないとお客さんには売れません。これは絶対に外せない心構えだと思います。FC 加盟を単なる投機とする考えもあるかもしれないですが、まだまだそういうレベルではないと思うし、今のオーナーさん達にとっても受け入れNGだと思います。
一方で、ビジネスでもありますので、大企業が出店に乗りだすことはあると思います。現に、JR九州ファーストフーズさんが加盟して、一号店を今年3月に出店、次の物件も探しています。他のファーストフードチェーンも運営されている会社が新事業として出店する場合は、個々の店舗のビジネスパッケージが小さいので、複数店舗を持たないと事業としての面白みはないでしょう。あわせて、エリア内で FCの開発も担当するディベロップメント・エージェント(DA)になっていただき、全国を10社位で網羅したいとも思っています。DAは、サブウェイに共通の制度であり、アメリカ本国からすれば我々もDAのひとつです。我々を含めて10社、各社が年に平均10店舗をつくる。年間100店舗出店を続けられるチェーンにしていくのが、私のいまの夢です。これはサブウェイが成長していく源泉でもあります。本国は、直営店をひとつも持っていなくて、代理店113社が作って拡大させています。イギリスがここ5年で1000店を越えたのは、DA17社が積極的に出店したからです。そういう構造を日本でも作って、FCさんと一緒に伸びていくチェーンになりたいと思っています。
日本サブウェイ株式会社
平成3年(1991年) サントリー株式会社を株主に設立、米国SUBWAY本部との間でマスターフランチャイズ契約を締結
平成4年(1992年) 赤坂に国内1号店を出店
※以降、FCにより積極的に出店、現在は24都府県・157店舗に達する。
本社:東京都港区赤坂3-8-8 赤坂フローラルプラザビル4F
同社代表取締役社長 伊藤彰氏
1958年12月3日・神奈川県出身
大学卒業後サントリー入社
千葉エリアで酒類営業を4年間担当後、社内募集に志願して国際部へ。
スペイン・マドリッドでレストラン支配人を務めるなど、10数年にわたり外食関連事業に従事。1998年に日本サブウェイ入社、2003年に社長就任。