潜水艦型のパンにハムや野菜などを挟んだサブマリンサンドイッチは、アメリカでは昔から愛されてきた伝統的なメニューだ。SUBWAYという名前は、このサブマリンサンドの “ SUB ” に、あなたの好み通りに作りますという意味を示す “ WAY ” を組み合わせたもの。「サブマリンにいろいろなお好みを詰め込んで、あなただけのサンドイッチをお楽しみください」。会話しながらつくる対面式スタイル、そこから育まれるホスピタリティ精神などサブウェイ40年の歴史を踏まえながら、日本サブウェイが展開する独自戦略に注目していきたい。なお、今回は、代表取締役 伊藤彰氏のインタビューを交えてお届けする。
サブウェイは、独自のオーダーシステムにより、他のファーストフードと比べて物理的に会話のやりとりが多くなる。コミュニケーションが豊富で、手軽な日常的な食事を目指すことから、「 サンドイッチ界の立ち食いそば屋になりたい 」 と伊藤社長は常々語っているそうだ。顧客とのコミュニケーションが濃いサブウェイで、オーナーやスタッフに求められる共通した資質というのはあるのだろうか?
【伊藤社長】 もちろん一概にはいえないですが、既存のオーナーさんの2号店、3号店が好調です。いま156店舗ある中で、130店程がFC店舗、それを60オーナーで運営していただいています。平均して2店舗以上を持っていただき、9店舗を持つオーナーさんも二人います。先日、神奈川にあるイオン内に既存オーナーが店舗を出したのですが、「 オープンの前日まで店の形があるだけなのに、翌日きちんとオープンしてびっくりしました 」 とイオンの方が驚いていました。新しいスタッフのトレーニングは別で進めていたと思いますが、そういう経験というメリットが成功につながる一番のポイントだと思います。新しく始めようというオーナーさんも、最初から多店舗展開する意欲を持った方が成功するように思います。
これは、創業者のフレッド・デルーカの考えにも通じるところです。フランチャイジーに新しいビジネスとしてサブウェイフォーマットを使って、成功してもらうことが彼の夢です。サブウェイを十分に活用していただいて、自己実現につなげてほしい。いまの日本人はあまり口にしなくなりましたが、車を買う、家を建てるという高い目標を掲げてほしいとデルーカはよく言います。「 高い目標を掲げないと妥協してしまうので成功しない 」 というのが彼の口癖です。
スタッフに関しては、サブウェイのサービスは難しいという前提があると思います。ハンバーガー屋さんはバックで作ってもらって提供するのでサービスしやすい面があります。サブウェイの場合は、サービスに集中してお客様と深い会話もできますが、それがすべて作りながらですから難しい。両者を評価すると、サービスの質としてサブウェイが下になってしまう可能性もありますが、それでも、深いコミュニケーションが取れることはサービスとして大きな武器になるはずです。大事なのは会話をする時に心遣いをすることだと思っています。
その心遣いを統一させるために、スタッフ用のブランドブックを作成しました。「 なんでサブウェイで働くのか?」というのは長い間のテーマでした。サブウェイには、“eat fresh.” というタグラインがありますが、日本人にはあまりピンと来ないフレーズです。そこで、2007年にアルバイトからオーナー、本部スタッフまで集めてワークショップを開き、討論を重ねました。「 何のためにサブウェイでやっているのか? 」 という議題です。そこで統一したものを作らないと、サブウェイがあっちこっちに行ってしまいそうな気がしたのです。実際に議論してみたら、意外と統一されていたのですが、それをまとめて最終的にサービスにつなげる、それをサブウェイで働くことの自慢にしたいという方向に持っていきたかった。それを絵本のように分かりやすく表現したのが、「 I SUBWAY 」 プロジェクトです。大切なのは、Weではなく 「 I 」 が主語になっていることです。私がどうサブウェイと向き合えるか、私がどのようにサービスするのか、従業員全員に共通するものにしたのです。仕事上、困ったときはこれを読んで解決策を探るのです。
内容としては、サブウェイはどういう場所であるべきか、どんなサービスをするべきかなどが書かれています。いま作っているサンドイッチは、ドレッシングの量やパンの種類が変わるから、もう二度とできないもの。ひとつひとつを心を込めて作ろうといったことがまとめてあります。また、巻末には、サブウェイチェーンの理念も記されています。「 わたしたちは、環境に配慮し、人々のからだとこころの 『 健康 』 に貢献する新しいファーストフード文化を創造していきます 」 。これを礎にして、企業としての戦略を組み立てていくのです。そこから、今年のコミュニケーションワードは、「野菜のサブウェイ」と決めました。サンドイッチから離れて野菜を食べてもらおうというこだわりを持つほうが、いいコミュニケーションが図れると考えたのです。
日本サブウェイ株式会社
平成3年(1991年) サントリー株式会社を株主に設立、米国SUBWAY本部との間でマスターフランチャイズ契約を締結
平成4年(1992年) 赤坂に国内1号店を出店
※以降、FCにより積極的に出店、現在は24都府県・157店舗に達する。
本社:東京都港区赤坂3-8-8 赤坂フローラルプラザビル4F
同社代表取締役社長 伊藤彰氏
1958年12月3日・神奈川県出身
大学卒業後サントリー入社
千葉エリアで酒類営業を4年間担当後、社内募集に志願して国際部へ。
スペイン・マドリッドでレストラン支配人を務めるなど、10数年にわたり外食関連事業に従事。1998年に日本サブウェイ入社、2003年に社長就任。