「サッポロライオン編」外食産業界のパイオニア・サッポロライオン~世紀を越えた繁栄の源を探る~

外食企業物語 サッポロライオン編 外食産業界のパイオニア・サッポロライオン 世紀を越えた繁栄の源を探る

サッポロビールの関連会社として、全国でビヤホールやレストランなどを経営する 株式会社サッポロライオン。明治時代に東京・銀座で誕生した日本最初のビヤホールをルーツとする同社は、ビヤホール業態の歴史を誇るパイオニア企業である。創業から一世紀というのは、はやり廃りが大きな飲食業においては、まさに悠久の歴史といえる。伝統を重んじる老舗から、全国200店舗以上をネットする総合外食企業へと発展した秘訣について、代表取締役社長・山崎範夫氏にお話をうかがった。

第5回 誰からも尊敬される飲食店が、これからの100には求められる!

第5回:誰からも尊敬される飲食店が、これからの100には求められる!

― 山崎社長は、長い現場経験がおありですが、店長や料理長クラスの方がお店をやっていく上で気をつけるべきことは何だとお考えですか?

外食企業物語「サッポロライオン編」外食産業界のパイオニア・サッポロライオン~世紀を越えた繁栄の源を探る~【 山崎氏 】 私どもの経営理念 「 JOY OF LIVING 」 は、飲食を通じて 「 生きている喜び 」 を感じていただくという意味です。それと同時に、お客さまが飲食をしたあとに、「 美味しかったよ 」 とか 「 楽しかった 」 といってくれたら、提供している側も生きている喜びを共感できます。そういう意識を持つことが大切ではないでしょうか。

外食企業物語「サッポロライオン編」外食産業界のパイオニア・サッポロライオン~世紀を越えた繁栄の源を探る~そのために、いろいろ勉強して、たくさんの人と話をしてほしいと思います。飲食店に来る人は、皆がみんな幸せな気分というわけではありません。憂さ晴らしの人もいれば、悲しみを紛らわせようとしている人もいるはずです。しかし、帰るときには、すべての方に 「 幸せだな 」 とか 「 生きてて良かったな 」 と思わせたいというのが弊社の理念にはこめられています。極端かもしれませんが、「 これが最後の晩餐 」 と決意して来られる方もいるかもしれません。そのような時でも、働いている私たちの笑顔に救われるという可能性があるわけです。従業員の皆さんには、生きている喜びを感じてもらう場所をつくる人になってほしいと思います。私は、よく店に顔を出しているのですが、昔から知っているお客さまからは、「 まさか、社長になるとは思ってなかったよ 」 と声をかけられることがあります。酔っぱらっていたら、「 社長になると思ってたよ 」 とおっしゃいますが、そういう話ができるだけでも生きてきた喜びを味わえますよね。

喜びを共有するという意識があれば、すばらしい店ができあがっていくはずです。なぜなら、どうすればお客さまに喜んでいただけるかを一生懸命に考えるようになるからです。目に付くところが汚れていれば嫌だなと思うし、お客さまより先にそれに気づくようになるのです。お客さまの思いを先読みして動けるようになることが、従業員教育の重要なテーマにもつながってくると思います。

― 最後に、今後のサッポロライオンおよび山崎社長の目標をお聞かせください。

外食企業物語「サッポロライオン編」外食産業界のパイオニア・サッポロライオン~世紀を越えた繁栄の源を探る~【 山崎氏 】 新しいものをどんどん入れて、時代に合った業態を開発していかないと企業の将来はありません。新しい人材を増やして、変わっていくニーズにきっちりと対応していきたいと思います。お客さまの志向もいろいろと変わって、いままでのビヤホールだけでは対応できないことも現実に発生しています。それを踏まえて 「 いい会社 」 にしていきたいです。

利益志向を持ちつつも、適正な利益の中で、皆さんから尊敬される会社であり、従業員からは働いていてよかったと思われるように進めていきたい。そうすれば、150年、200年とつながっていくと思います。「 いい会社 」 を徹底的に追求して、全員で試行錯誤しながら、少しずつでも進めていけば、評価してくれる人、支持してくれる人が出てくると思っています。

外食企業物語「サッポロライオン編」外食産業界のパイオニア・サッポロライオン~世紀を越えた繁栄の源を探る~競争を軸に考えている経営者は、尊敬を得られないし、長続きしないだろうと思います。外食は、昔からやっている小さなお店がいっぱいあって、それぞれが個性を発揮しています。そのお客さまを奪い取るという発想ではなく、いかに共生するかを考えていくべきです。店同士、お互いに食べにいくことも大切でしょう。お互いに勉強しながら、思いやる気持ちをもって運営していく。それが 「 いい食文化 」 をつくることになると思います。



株式会社サッポロライオン

株式会社サッポロライオン

http://www.ginzalion.jp/

【代表取締役社長】山崎 範夫氏
【本社】東京都中央区日本橋本町2-6-3 小西ビル5・6F

明治32年(1899年)東京・銀座8丁目に「恵比壽ビヤホール」(当時は日本麦酒株式会社が経営)として創業
大正3年(1914年)札幌狸小路2丁目にビヤホール開店(当時は札幌麦酒株式会社が経営)
昭和11年(1936年)大日本麦酒株式会社より飲食部門を分離独立、共栄株式会社として発足
昭和24年(1949年)共栄が二分割され、日本共栄株式会社(現株式会社サッポロライオン)と朝日共栄株式会社が設立
昭和33年(1959年)サッポロビヤホール、ニッポンビヤホール、広島ニッポンビヤホールの3社を吸収合併
昭和41年(1966年)サッポロ共栄株式会社に社名変更
昭和54年(1979年)株式会社サッポロライオンに社名変更
昭和63年(1988年)東証第二部へ上場
平成15年(2003年)持株会社サッポロホールディングス設立を柱とするサッポログループの事業再編に参画

※総合外食企業として、ビヤホール・ビヤレストランをはじめとする幅広い業態を展開。全国主要都市に202のチェーン店を運営している(平成21年8月1日時点)

株式会社サッポロライオン
株式会社サッポロライオン

代表取締役社長 山崎範夫氏

昭和25年高知県生まれ。慶應大学在学中からサッポロライオンのビヤホールでウェイターのアルバイトを体験する。卒業後2年間もアルバイトを続けた後、上司の勧めで、昭和50年(1975年)に入社。全国各地の店舗で店長・支配人として現場経験を重ねたほか、本社営業部やメニュー開発部などにも配属。平成15年(2003年)7月から現職、初のサッポロライオン生え抜き社長となる。

取材協力:経営企画室長・取締役執行役員 多田重夫氏(写真左)
経営企画室 西村礼佳氏(写真中央)

文: 貝田知明
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