「サッポロライオン編」外食産業界のパイオニア・サッポロライオン~世紀を越えた繁栄の源を探る~

外食企業物語 サッポロライオン編 外食産業界のパイオニア・サッポロライオン 世紀を越えた繁栄の源を探る

サッポロビールの関連会社として、全国でビヤホールやレストランなどを経営する 株式会社サッポロライオン。明治時代に東京・銀座で誕生した日本最初のビヤホールをルーツとする同社は、ビヤホール業態の歴史を誇るパイオニア企業である。創業から一世紀というのは、はやり廃りが大きな飲食業においては、まさに悠久の歴史といえる。伝統を重んじる老舗から、全国200店舗以上をネットする総合外食企業へと発展した秘訣について、代表取締役社長・山崎範夫氏にお話をうかがった。

第3回 サッポロライオンは、ジョッキの生ビールのような会社!?

第3回:サッポロライオンは、ジョッキの生ビールのような会社!?

― 「 美味しいビールを出し、ビールに合ったおつまみを出して、喜んでいただく 」 という変わらない価値が伝統をつくっているのですね?

外食企業物語 サッポロライオン編 外食産業界のパイオニア・サッポロライオン 世紀を越えた繁栄の源を探る【 山崎氏 】 外食企業として長く続けるためには、それだけではダメです。変わらぬ価値をきっちりと出しつづけながら、もう一方で新しい業態を開発して、時代性を反映させていかなければいけないのです。普遍性と時代性の二本柱で進めてきたことが、110年も続いた要因だと思っています。サッポロライオンのベースになるものは、あくまでもビヤホールです。ビヤホールで培った財産や資産をもとにして、時代を取り入れた新しい業態を開発しています。

外食企業物語 サッポロライオン編 外食産業界のパイオニア・サッポロライオン 世紀を越えた繁栄の源を探る私は、「 サッポロライオンという会社は、ジョッキの生ビールみたいないもの 」 と表現することがよくあります。黄色いビールの部分がビヤホールで、普遍的な意味を示しています。変わらない味や価値を提供していく部分です。対して白い泡はいずれ消えていくものですが、ビール自体の鮮度を保ってくれています。その泡部分が新業態にあたるのではないかと思っているのです。ビヤホールだけでは、すぐに鮮度を失ってしまいます。新しい業態をやることで、鮮度が保たれます。時代性を吸収することで、少しずつ会社全体の価値も変わっていくのです。それが110年という年月につながったのだろうと考えています。

そういう考え方を持っていますから、社長に就任してからは、「 ビヤホールの復活 」 と 「 新業態の開発 」 という二つの柱を掲げました。ビヤホールの部分をないがしろにしたら、サッポロライオンは消えていくしかありません。110年の歴史と伝統で培われたものは誰にも真似できないし、そこから生まれる信用やブランド力は、つくろうとしてもできるものではありません。

外食企業物語 サッポロライオン編 外食産業界のパイオニア・サッポロライオン 世紀を越えた繁栄の源を探るそもそもビヤホール自体、そう簡単にできる業態ではありません。投資が掛かりますから、ちゃちゃっとやって3年で回収するというわけにはいきません。最初の投資は大きいですが、20年、30年と続けることで、実る果実も大きくなるのです。キャッシュの面だけではなく、働いている人間の中に実るものも大きいです。そこから、ビヤホールにはない新しいものを発想してきたのです。各時代の特性を取り入れることで、企業のダイナミズムみたいなものが生まれてくるわけです。ただ古いからいいというわけではありません。時代を少しずつ取り入れながら変わっていくのです。新しいニーズを排除してしまうと、何もなくなってしまう可能性があると考えています。

― 普遍性と時代性のバランスを取ることが継続の秘訣というわけですね。

外食企業物語 サッポロライオン編 外食産業界のパイオニア・サッポロライオン 世紀を越えた繁栄の源を探る【 山崎氏 】 そう言えると思います。私どもだけではなく、老舗と言われるお店はたくさんありますが、外部のコンサルタントの指摘を鵜呑みにして失敗した事例も多くあります。もともとあった価値を壊して、すべてを新しく代えてしまうケースです。変えた時こそ流行るかもしれないが、それでは必ず失敗すると思います。長年培ってきたものを活かすという視点が欠けているからです。大切なことは、外部の方々の意見を消化したうえで、老舗の価値を出していくことです。時代に合わせるばかりで、伝統的な価値がなくなるのは危険です。反対に、古い価値にこだわり過ぎれば、時代や社会から取り残される危険性があるのです。ビヤホールもできた当初は新業態です。美味しいビールにこだわりながら、お客さまの声を大切にすることで定着していったのです。



株式会社サッポロライオン

株式会社サッポロライオン

http://www.ginzalion.jp/

【代表取締役社長】山崎 範夫氏
【本社】東京都中央区日本橋本町2-6-3 小西ビル5・6F

明治32年(1899年)東京・銀座8丁目に「恵比壽ビヤホール」(当時は日本麦酒株式会社が経営)として創業
大正3年(1914年)札幌狸小路2丁目にビヤホール開店(当時は札幌麦酒株式会社が経営)
昭和11年(1936年)大日本麦酒株式会社より飲食部門を分離独立、共栄株式会社として発足
昭和24年(1949年)共栄が二分割され、日本共栄株式会社(現株式会社サッポロライオン)と朝日共栄株式会社が設立
昭和33年(1959年)サッポロビヤホール、ニッポンビヤホール、広島ニッポンビヤホールの3社を吸収合併
昭和41年(1966年)サッポロ共栄株式会社に社名変更
昭和54年(1979年)株式会社サッポロライオンに社名変更
昭和63年(1988年)東証第二部へ上場
平成15年(2003年)持株会社サッポロホールディングス設立を柱とするサッポログループの事業再編に参画

※総合外食企業として、ビヤホール・ビヤレストランをはじめとする幅広い業態を展開。全国主要都市に202のチェーン店を運営している(平成21年8月1日時点)

株式会社サッポロライオン
株式会社サッポロライオン

代表取締役社長 山崎範夫氏

昭和25年高知県生まれ。慶應大学在学中からサッポロライオンのビヤホールでウェイターのアルバイトを体験する。卒業後2年間もアルバイトを続けた後、上司の勧めで、昭和50年(1975年)に入社。全国各地の店舗で店長・支配人として現場経験を重ねたほか、本社営業部やメニュー開発部などにも配属。平成15年(2003年)7月から現職、初のサッポロライオン生え抜き社長となる。

取材協力:経営企画室長・取締役執行役員 多田重夫氏(写真左)
経営企画室 西村礼佳氏(写真中央)

文: 貝田知明
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