昭和26年(1951年)に創業した ロイヤルグループ は、長い歴史のなかで変わることなく 「質の追求」 を事業活動の中心にしてきた。グループの基幹事業でもある「ロイヤルホスト」は、昭和46年(1971年)に福岡で誕生して以来、「多くのお客様に、美味しい食事をもっと気軽に楽しんでいただきたい」という思いから全国にネットワークを広げている。美味しさと料理の品質にこだわるというグループの一貫した姿勢は、高い調理力につながり、さまざまな食文化の提案へとつながっている。今も変わらぬ徹底した企業姿勢や移りゆく時代への適応力などロイヤルが持つ企業力について、執行役員・佐々木徳久氏へのインタビューを元に迫ってみたい。
― 佐々木様は、ロイヤルホスト改革プロジェクト担当という肩書きもお持ちですが、このプロジェクトはどういうものでしょうか?
【 佐々木氏 】 ロイヤルホスト改革プロジェクトは、一昨年(2008年)10月に立ち上げられたもので、実質的には昨年1月からスタートしました。商品開発のメニュー企画であったり、販売促進・広報を担当するマーケティング、昨今進めている店舗改装部門も含まれています。ロイヤルホストのマーケティングは、低価格ファミリーレストランといかに差異化をしていくのかが、現在の大きな戦略となっています。最近は、低価格のFR業態をスタンダードなファミリーレストランと呼ぶ傾向がありますよね。では、私たちロイヤルホストは何なんだと言いたくなりますが、ミドルプライスファミリーレストランと呼称されているようです。いつの間にかミドルプライスになってしまったわけですが、であれば、低価格帯の店舗とは違う価値をきちんと出していくべきだと思っています。生き残るための差異化をしていかないといけないといけません。
― 具体的戦略をお教えていただけますか?
【 佐々木氏 】 メニューとしては、洋食を磨き込もうとしている面があります。和風・健康・美容というキーワードをいかに洋食と融合させて、お客様に提供していくのかということを考えています。そのものずばりの和食をロイヤルホストで提供していた時期もあるのですが、それではやはり違うのです。老舗の和菓子屋がシュークリームを作ってもダメなのと同じようなもので、うまく行かない。やはり、ロイヤルホストはハンバーグやオムライスをつくっていこうと思いました。価格もこれまでは1000円~1200円位という山で、少し高めの設定をしていました。それを700~900円台と1200円台に分け、日常使いとごちそう感という2つの山を持たせるようにしているのです。
店舗デザインとしては、集中的な改装をしている最中で、昨年度は25店舗を改装しました。今年度は72店舗を改装予定で、すでに6月末時点で69店舗以上で実施しています。これは、どうしても分社化した弊害が出てきているからです。短期的な視野で営業を重視すると、店舗コンセプトの面がどんどん弱まってしまうのです。コンセプトを考える時には、ある程度中長期で計画をしないと良くなっていかないものです。改革プロジェクトではなるべく中長期でものを見るようにしています。しかしながら、分社すると、どうしても今年の利益はどうかと短期的にならざるを得ません。各店舗に中長期的視野を持ってもらう意味でも、店舗を改装してコンセプトの再確認をしてほしいと考えています。ロイヤルホストを良くしていくために、QSCの向上、顧客体験価値の再構築、商品の明確な差異化、マーチャンダイジングをする中でのコスト低減と品質の向上を実践していこうと考えています。
― 最後に、これからのロイヤルホストについての展開と展望を教えてください。
【 佐々木氏 】 外的環境では少子高齢化が進むので、どう考えてもこれからの需要は下がっていくでしょう。健康志向や環境意識が高まって、昔のように、物が欲しいというのではなく、心の価値を求める時代に変わってきています。そういうところも踏まえ、少しずつ変えて行かなければいけないと思っています。マーケティング・教育・改装推進・メニューという4つのバランスを取りながら変えつつあるというのがロイヤルホストの現状です。
簡単な言葉で表現するなら、「 レストランの基本価値をもう一度つくり直す、きちんとおもてなしをする 」 ということを進めているところです。広がり過ぎていたメニューの幅を狭めて、お客様が召し上がる商品の品質を少しでも高められるような改訂をしています。そして、店舗改装の次は、新厨房を導入していこうと思っています。新しいシステムに変えるのが目的ではなく、時間と温度で管理できて、再現力が高い厨房を模索しています。現状、それには電化が一番適しているので、電化厨房化を進めているのです。
いま行っていること、これから行っていくべきことは、QSCを向上させながら、ロイヤルホストらしさというフィルターを通してバリューアップを果たすことです。長い年月が経って、ホスピタリティという思想も薄れつつあるのでてきたので、ロイヤルホストらしいホスピタリティをいかに表現していくのかといった課題をひとつずつ解決していきます。マーチャンダイジング、開発体制の強化、新厨房の推進、収益構造の変革といったさまざまなプロセスを経ながら顧客のバリューアップを果たしていきたいと思っています。そして、変わっていくロイヤルホストを知っていただき、ブランドの再構築につなげていきたいと考えています。
編集後記
取材を通じて、ロイヤルホストらしさとは何か?というのが、少しだけですがイメージできるようになりました。インタビューの帰りに、取材陣全員で 「 お好きなだけパンケーキ 」(現在は終了しています)に行ったのですが、店内のどこにも 「 食べ放題 」 という言葉がありませんでした。言葉のインパクトとしては、「 食べ放題 」 の方が大きいのでしょうが、そこはあくまで優雅で上品に 「 お好きなだけ~ 」 と称しているわけです。それがロイホらしさなのかと言われると確信はもてませんが、言葉ひとつに対するこだわりがあるのは立派な差異化ではないでしょうか。
ロイヤルホールディングス株式会社
http://www.royal-holdings.co.jp/
【代表取締役社長】菊地 唯夫氏
【本社】福岡県福岡市博多区那珂3-28-5
【東京本部】東京都世田谷区桜新町1-34-6
昭和26年(1951年) 日本航空国内線の営業開始と同時に福岡空港において機内食搭載と喫茶営業を開始。福岡市堅粕で製菓・製パン業を開始。
昭和28年(1953年) 福岡市東中洲にレストラン「ロイヤル中洲本店(現花の木)」を開業、有限会社ロイヤルを設立
昭和29年(1954年) ロイヤル中洲本店にマリリン・モンロー、ジョー・ディマジオ夫妻来店
昭和31年(1956年) ロイヤル株式会社(資本金1,000千円)を福岡市東中洲に設立
昭和37年(1962年) セントラルキッチンシステム(集中調理方式)を採用、業務用冷凍料理の製造に着手
昭和45年(1970年) 大阪万国博覧会のアメリカゾーンに外国店扱いで出店
昭和46年(1971年) ロイヤルホスト1号店を北九州市の黒崎に出店
昭和53年(1978年) 福岡証券取引所に上場
昭和57年(1982年) 東京都世田谷区桜新町に東京本社(現東京本部)を設置
平成2年(1990年) 福岡市博多区那珂の本社・工場(ロイヤルセンター)再構築工事の竣工
平成17年(2005年) 持株会社制に移行し、会社名をロイヤルホールディングス株式会社に変更
事業統括本部 執行役員 佐々木徳久(ささき・のりひさ)氏
昭和37年東京生まれ。法政大学文学部に在学中からロイヤルホストでアルバイトスタッフとして働く。卒業後、ロイヤル株式会社(現ロイヤルホールディングス株式会社)入社 。ロイヤルホスト南東京地区長、業態開発室長、西日本事業部長を経て、平成17年にロイヤル九州(現ロイヤル西日本株式会社)代表取締役社長に。平成20年からロイヤルホールディングス株式会社執行役員となる。
取材協力:管理本部広報室PR担当リーダー 古城尚之氏