モスバーガー、テリヤキバーガー、ライスバーガー、ニッポンのバーガー匠味…。 オリジナリティーのあるハンバーガーを追求しつづけ、食の安全や健康にも積極的なモスバーガーの企業姿勢は、どこから生まれてきたものであろうか。飲食業に懸ける同社の思いを含め、その歴史や戦略を振り返ってみる。
第 5 回 |
おいしさを追求することで、日本の農業を活性化モスフードサービスは、新しい取り組みとして、群馬県の生産者団体と共同で 農業生産法人サングレイス を設立、全国 3ヶ所で全天候型耐候性ハウスを使用したトマトの栽培を07年2月からスタートさせている。トマトは熊本が一大産地だが、供給の端境期があるうえ、天候の影響も受けやすいので、供給を安定させようという目的。群馬・静岡にハウスを設置し、青森に配送拠点を置くことで、手薄な東日本をカバーするとともに輸送コストの低減も可能となる。なお、独立法人であるため、モスの規格以外の野菜を一般市場にも出荷していく予定だ。農家側は技術を持っているが資本がなく大規模な展開ができない、対してモスフードサービスには農業の技術はないが資本を出すことができる。それをマッチングさせて、良質な野菜を大規模に作り出すことで農業を活性化させようという大所高所からの狙いも含んでいるのだ。
日本にファストカジュアルレストランを!「緑モス」の業態戦略ファストカジュアル業態の「緑モス」は、 2004年春からスタートした新戦略。開発の経緯は、究極のハンバーガー「匠味」とつながる側面があり(第3回参照)、ファストフード業界が低価格競争から高額商品へシフトしていくなかで、モスがいままで強みとしてきたものを明確に打ち出すことである。そして、単なるファストフードではなく、ハンバーガー専門店であることを理解してもらおうという狙いである。 モスバーガーの進化形を開発するにあたって、アメリカのファストカジュアル業態を調べてみると、注文をもらってから調理するスタイルや前会計の手軽さなど、従来からモスバーガーで実践していた手法に近いことがわかり、新店舗を “ 日本のファストカジュアルの代表 ” にしようとしたのである。しかし、ファストカジュアルと名乗っても言葉が浸透していないし、開業から 30年経ってモスバーガー=ファストフードという認識も広まっている。そこで、既存の店舗(通称・赤モス)よりサービスの質をさらに向上させ、看板などのカラーイメージを変えて、「緑モス」というファストカジュアル業態を誕生させたのである。また、既存店を順次移行させる予定もあり、緑モスではメニューの完全入れ替えを行わなかった。これまで扱ってきたものを存続させつつ、プラスα の要素としてメニューのクオリティを上げていくために、緑モス専用商品を追加投入している。ファストカジュアル「緑モス」は、決して新しいものではなく、既存店舗が発展した形態であるという思いも込められているのである。
顧客の立場で、モスバーガーのさらなる発展を目指すモスフードサービスは、「緑モス」への積極転換や既存業態での新規出店で事業規模拡大を進めてきたが、今後は、狭小商圏対応の小型店舗「モスバーガーオリジナル」、宅配・デリバリー専門の「モスバーガーデリバリーキャビン」、フードコート専門業態の「モスバーガーファクトリー」など、 “ モスバーガー ” の名を冠した業態の多様化 でモスバーガー事業の発展に乗り出す構えだ。また、モスバーガー事業に続く柱となる事業として展開している紅茶とスイーツの「マザーリーフ」、「カフェ・レジェロ」も積極的に出店していく予定である。 これまで推進してきた事業により、安心・安全に配慮したインフラの整備やブランドイメージの向上などは進んでいるが、課題もまだまだ多いというのが同社の考え方。今後予定される事業展開には、それらの課題を改善する意味も含まれているそうだが、あくまで “ 顧客の視点から取り組む ” という姿勢である。 |