「モスフードサービス編」日本発の美味しいハンバーガーを! ~独自性にこだわるモスの商品戦略~

外食企業物語 モスフードサービス編 日本発の美味しいハンバーガーを!独自性にこだわるモスの商品戦略

モスバーガー、テリヤキバーガー、ライスバーガー、ニッポンのバーガー匠味…。 オリジナリティーのあるハンバーガーを追求しつづけ、食の安全や健康にも積極的なモスバーガーの企業姿勢は、どこから生まれてきたものであろうか。飲食業に懸ける同社の思いを含め、その歴史や戦略を振り返ってみる。

第3回 モスの商品開発に根付く櫻田マインドが究極のハンバーガーを生む

第 3 回
モスの商品開発に根付く櫻田マインドが究極のハンバーガーを生む

現開発スタッフにも創業者とともに汗を流した経験がある

創業者・櫻田慧が自ら先頭に立って商品開発を続けてきたモスバーガーだが、今でも櫻田マインドとでも呼ぶべき考え方は開発スタッフに息づいている。“ 日本のハンバーガー屋であるモスがやるならこういう商品 ”というものだ。MOS BURGER WEBSITEこれは、研修などで系統立てて教えてきたものというよりは、無我夢中で開発しつづけてきた状況を振り返ってみると、いつの間にか構築されていたというものだ。開発をする渦中にいた当時の若いスタッフは、一緒に作っていくうちに “ モスらしさ ” を肌で感じ取ってきたのである。櫻田慧は 97年に他界したが、いま活躍している開発スタッフにも、彼と一緒に仕事をした者はおり、モスらしさを失ってはならないという使命感を強く持っている。

連載1回目、加盟店オーナーに対して、理想と目標の共有を求めると記したが、それは社員に対しても同じ。極端ないい方かもしれないが、モスバーガーの理想や目標のベクトルを説明した上で、「それでも入社したいと思いますか」「いっしょになって夢を実現したいと思いますか?」という姿勢を示すのだそうだ。その連帯感こそが、モスらしさの源にあるのだ。

 

モスの強みを伸ばすことが究極のハンバーガーになる

櫻田慧の甥にあたる櫻田厚 現社長が 98年12月に就任した後で開発された商品で最もインパクトがあったのは、2003年発売の「ニッポンのバーガー匠味(たくみ)」だろう。贅を尽くした究極のハンバーガーは、610円縲鰀1000円というファストフードの域を超えた価格帯ながらヒットして、一躍話題の商品となった。

櫻田厚 現社長「究極のハンバーガーを創る」という社長の発言から開発されたものだが、その真意は、やはり “ モスらしさ ” であった。当時のファストフード業界は、 100円を切るハンバーガーが登場する低価格競争時代にあったが、モスは価値重視を主張して競争には乗らなかった。この姿勢を応援する消費者もあり、同社はコンセプトは間違っていないと感じていたが、徐々に他のチェーン店でも高価格商品にシフトする傾向が見られはじめた。250円程度の商品だが、それまでが100円以下であったことを考えると高額だろう。なおかつ、健康を重視する製品や野菜をメインにするという路線の新商品が登場してきた。これに先んじて健康路線を打ち出し、当時290円で「モスバーガー」を出していたモスにとっては、独自性が薄れることになってしまう。そこで、きちんとモスバーガーの商品開発コンセプトやハンバーガー作りにかける思いを説明する必要があるという意味で、キーワードとなったのが “ 究極 ” という言葉だったのである。

ニッポンのバーガー匠味トップからの指示は、素材も価格も限定しない、調理方法にも口を出さないので、“ 究極 ” を考えて作ってみよというものだったという。それこそ、具材として松阪牛まで試したが、脂身が多い霜降り肉ではハンバーガーに大切な歯応えが出せなかったほか、パティが成形しづらい上に、焼くと脂が流れ出してしまうと悪いことづくめだったようだ。モスのハンバーガーづくりの集大成となる「匠味」は、素材だけ豪華にすればいいというものではなく、ハンバーガーとしての美味しさ、手軽に食べられる簡便性を踏まえた上で、作り手の思いを究極にする作業だった。結果的には、「牛肉・野菜の産地を特定できること」「効率よりも手間を重視するオペレーション」「快適なサービスを提供できる環境」という、これまでモスが掲げてきた強みを究めることだったのである。



株式会社モスフードサービス

株式会社モスフードサービス

http://www.mos.co.jp/

日本オリジナルのハンバーガーショップを展開するFC本部として 1972年7月に設立。基幹事業である「モスバーガー」は、ファストカジュアル業態「緑モス」への転換を推進しているほか、“お客さまにもっと楽しんでいただく”ことをコンセプトに、紅茶やスイーツ、ハンバーグといった洋食など新しい飲食事業の開発も積極的に進めている。

取材協力:広報IR室 リーダー 松田由美子様

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