“Mr.” や “Mrs.” は尊敬の念が込められた単語である。｢ ミスタードーナツ ｣ の “ミスター” にも ｢ ドーナツをつくる人を尊敬する ｣という意味が込められている。創業者ハリー･ウィノカー氏の人を大切にする心とダスキン創業者の鈴木清一氏の人を大切にする心がふれあい、日本にミスタードーナツが誕生した。外食産業創生期の1971年に誕生し、今なお成長を続けるミスタードーナツの歴史を紐解く。
ミスタードーナツを展開する株式会社ダスキンは1963（昭和38）年2月に鈴木清一氏によって創立された。
1961（昭和36）年に海外のビジネス研修に参加した鈴木氏は ｢ ダストコントロール ｣ ｢ フランチャイズ ｣ ｢ レンタル ｣ という新しいビジネスの仕組みに出会った。｢ ダストコントロール ｣ の技術を日本にはじめて持ち帰り、日本初の家庭用化学ぞうきん “ ホームダスキン ” を開発した。そして1964年にレンタルとフランチャイズという新しいビジネススタイルで全国展開することになった。
【 広報担当 】 創業者はもともと社名を ｢ 株式会社ぞうきん ｣ にしようとしたようです（笑）。流石に社員からは ｢ ぞうきんの○○です ｣ と名刺を出すのは格好悪くて嫌だというような意見があって、ダスト（ほこり）の ｢ ダス ｣ にぞうきんの ｢ キン ｣ の二つを併せて ｢ 株式会社ダスキン ｣ になったという逸話が残っています。
当時の日本には ｢ ぞうきん ｣を借りたり買うという文化はなかった。ぞうきんは家庭でぼろぼろになったタオル等を縫ってつくるものというのが一般的な考え方であった。
【 広報担当 】 当時としては高額でしたので、お客様は一様に驚かれていたそうです。そこで考え出されたのが、ご家庭を一軒一軒訪問して、実際に掃除のデモをしながらお使いいただくというやり方です。そうすると本当に綺麗になることだけではなく、水拭き掃除の負担が大幅に軽減できることが実感できるので喜ばれたそうです。現在のビジネススタイルが創業時から確立されていたのです。
｢ レンタル ｣ ｢ フランチャイズ ｣ の仕組みをいち早く取り入れ、さらに一般家庭の主婦を募集して定期訪問レンタルを行うという画期的な流通システムを確立することで、清掃用具のレンタル商品を全国に展開できたのである。
鈴木氏はその後も貪欲にフランチャイズのシステムを学ぶため米国に渡った。そして1968（昭和43）年に米国ミスタードーナツの創業者ハリー･ウィノカー氏と出会うことになる。
【 広報担当 】 創業者は、外食産業の研究のためではなくあくまでもフランチャイズの研究のためにミスタードーナツ社の視察をしました。その際にハリー･ウィノカー氏に会い色々と話をしたそうです。米国ミスタードーナツ側から日本での店舗展開の打診があったそうですが、もともと飲食ビジネスへの参入は考えていなかったので即答はせずに帰国しました。ただ、実際にドーナツを食べてみるとおいしく、両社の企業理念にも相通じるものがあったので興味がわいていたようです。
帰国後にもミスタードーナツからのオファーが続いた。鈴木氏は、米国で食べた本場のドーナツのおいしさ、そして明るいお店には人があふれ、ドーナツを楽しそうに食べている光景を思い、｢ こんなにおいしいドーナツをひとりでも多くの人に食べてもらおう、そしてひとりでも多くの人々に喜んでもらおう ｣ と決心した。そして1970（昭和45）年の1月に渡米した際、悩んだ末、事業提携を決断（仮調印）した 。
【 広報担当 】 仮契約にあたって創業者は東京と大阪だけのフランチャイズ権取得と考えていたようです。しかしハリー･ウィノカー氏からは日本全域のフランチャイズ権の取得を提示され、その契約金が当時のダスキンの資本金の2倍だったのです。一旦ホテルに持ち帰って一晩悩んだそうです。その際に日本にないおいしさ、明るい店舗でお客様が楽しくされている様子、自分自身でも充分楽しめるお店だからこそ絶対に日本で成功するに違いないと決断。1970年1月27日に事業提携契約を決断し、翌1971年4月2日大阪の箕面に１号店をオープンしました。
株式会社ダスキン
大阪府吹田市
現 代表取締役社長 山村輝治氏
ミスタードーナツ
1970年 ダスキンと米国ミスタードーナツが事業提携契約調印
1971年 1号店箕面ショップオープン
1974年 100号店八代ショップオープン
1987年 500号店小野原ショップオープン
1997年 1000号店大阪ドームシティショップオープン
2001年 1500号店枚方長尾ショップオープン
2010年 創業40周年
取材協力：株式会社ダスキン ミスタードーナツ事業本部 広報室 室長 喜多晃氏
