社員食堂やレシピ本でクローズアップされた大手計量機器メーカーのタニタと業務提携を行い、2012年1月 「 丸の内タニタ食堂 」をオープンし注目を集めるきちり。同社は現在、関西と関東に65店舗を多様な業態でチェーン展開している。同社が創業以来目指す 「 外食産業の新スタンダードの創造 」とは何か。平川昌紀社長に、その成長の経緯と戦略を語ってもらう。
同社の歩みを年表で追って紹介すると、1997年11月に平川氏が27歳でモスバーガーのFC店を開業してから、98年に(有)吉利を設立し、2000年11月現在の㈱きちりに商号変更、そしてついに2007年株式上場を果たす。開業15年を経た2012年1月には計量機器の製造・販売メーカー(株)タニタと業務提携して 「 丸の内タニタ食堂 」 をオープン。これが様々なTVや雑誌で取り上げられ、「 きちり 」 の名も一躍全国区となって現在に至る。
この最終章では、異業種との提携を始めとする同社の現在の取り組みと、今後の展望について、平川社長に語ってもらった。
「 丸の内タニタ食堂 」 や 「 NTT東日本関東病院タニタ食堂 」 は、当社のプラットフォーム戦略を最大限に活用した、異業種との初のコラボレーションです。これはまさしく、当社が創業以来、一貫して追求してきた 「 外食産業の新しいスタンダードの創造 」 が一つの形になったものに他ありません。
タニタさんは健康機器分野のトップメーカーですが、外食ビジネスの経営リソースやノウハウは乏しい。そこで、「 健康メニュー 」 というタニタの社員食堂のコンセプトを当社のプラットフォームに乗せてもらい、競合優位性をもちながら、効率的な店舗運営を可能にしたのです。
こうしたプラットフォームを使った取り組みは、現在では、当社の65店舗に加えて同規模の外食店の調達を含め、全部で140店舗以上と、スケールメリットを持って行っています。これは、たとえ1店舗目からであろうと、当社の企画力や調達力といった強みを必要とされるあらゆる規模の業態からご利用いただけるものです。ただし、やみくもにご提供するわけではありません。その会社がお客様にとって明確な価値やブランドを持っているかどうか、また、その会社がその業界のリーディングカンパニーかトップカンパニーであるかどうか、それらを総合したものが、当社が現在アライアンスを組む際の判断基準となります。
当社がBtoBでアライアンスを組む先として私は、3つのカテゴリーを考えています。
1つ目は健康・美容分野、2つ目はエンターテ-メント分野、3つ目は1次産業(農業・畜産・水産)の生産者です。これらのブランドを使って、まずはアンテナショップを経営し、それを検証して多店舗化につなげるというやり方です。アンテナショップの第1目的は、ブランドの認知と普及にあります。これが達成できて、業態としても収益性の高い、展開力のあるものであるならば、2次的目的として多店舗展開をするという考え方なのです。
必ずしも多店舗展開が目的ではなく、多店舗展開を最初から望んでいない企業もあります。
例えば、5月にサタケ社と組んで 「 おむすびのGABA 」 を東京・秋葉原へ出店しました。同社は、精米機で世界トップシェアをもつ会社です。但し、お米屋さんではないので米を売りたいわけではないのです。玄米の要素をもった白米 「 GABAライス 」 を世に知らしめたい、健康に良く美味しいお米を知って欲しいという目的でやっているので、多店舗展開に固執していないのです。
これらの取り組みを始めとして、当社は、今後も 「 新たなスタンダードの創造 」 に向けて、全力で取り組んでいきたいと思っています。当初、当社は “ 居酒屋 ” と言われることが多かったのですが、居酒屋はあくまでもスケールメリットを生み出すための一つの通過点であり、今後は、居酒屋という一面だけではなく、様々な面で魅力を持った多面的企業として成長していきたいと考えています。そして、当社が心血を注いで作り上げたこのプラットフォームを多くの企業にご利用いただけるビジネスモデルを確立していきたいと考えています。
株式会社きちり
東京証券取引所市場第二部上場
(2013年3月)
東京本社:東京都渋谷区渋谷1-17-2 CRD Shibuya1st 12F
大阪本社:大阪市中央区安土町2-3-13 大阪国際ビルディング8F
設立年月日:1998年7月16日
代表取締役 平川昌紀氏
1969年 大阪府生まれ。甲南大学卒業後、リゾート開発会社に入社。
1997年 モスバーガーFCで飲食店の経営をスタート。
1998年 有限会社吉利を設立(2000年株式会社へ改組)。
2007年 大阪証券取引所ヘラクレス市場上場
2013年 東京証券取引所市場第二部上場