社員食堂やレシピ本でクローズアップされた大手計量機器メーカーのタニタと業務提携を行い、2012年1月 「 丸の内タニタ食堂 」をオープンし注目を集めるきちり。同社は現在、関西と関東に65店舗を多様な業態でチェーン展開している。同社が創業以来目指す 「 外食産業の新スタンダードの創造 」とは何か。平川昌紀社長に、その成長の経緯と戦略を語ってもらう。
同社が現在展開中の 「 KICHIRI 」 と 「 いしがまハンバーグ 」 には、平川社長の理念やの独自のこだわりがしっかりと根付いている。それは、出店や商品開発、スタッフ教育の面からもうかがうことができる。ここではその独自のこだわりについて、平川社長に語ってもらう。
当社は、出店に関しても当社独自のスタンダードに基づいて開発を行っています。例えば、「 KICHIRI 」 は、料理だけでなくお酒も楽しんでいただく業態ですので、当然、サラリーマンやOLの方々が立ち寄り易い、飲食店が多い繁華街や駅前に限定して展開しています。一方、「 いしがまハンバーグ 」 は業態開発の頃より魅力を感じていた、年間200億円以上の商業施設やショッピングモールに限定した出店を行っています。
商品開発に関しては、当社は価格訴求型のインフラ外食ではないので、たとえコストアップにつながったとしても当社が考える品質以下にはしないというこだわりをもっています。例えば、人気№1メニューのローストビーフには、オーストラリアの和牛と言われる黒牛の混血種を使用しています。また、当社の人気商品であるデザートの 「 フォンダン・ショコラ 」 に使用するチョコにはフランス産のカカオバリー社製を、コストの合理化を超えて使用し続けています。タレに使用するゴマのペーストに至るまで、品質を絶対落とさないように、食材には充分吟味を重ねたものを使っています。そこに品質を守るという合理的な理由があれば、徹底的にこだわる姿勢を貫いているのです。
さらに、「 KICHIRI 」 は居酒屋ではなく “ 新日本様式のカジュアルレストラン ” をうたっていますので、そこで提供する料理には、やきとり・たこわさといった居酒屋の定番メニューは一切お出ししません。ちょっと洋風でちょっと創作が入った料理を提供しています。デパ地下やコンビニの惣菜・サラダ売り場では頻繁にメニューの刷新や入れ替えが行われていますが、その中にエスニックやオリエンタル風な料理が並んでいても、今の若い人たちは何の抵抗もなく買っていますよね。その世代の人にとってはそれらも日本的な食事の一つとして受け入れられているのだと思います。当社でも、これらをマーケティングして参考にしながらアレンジを加えたものを提供し、人気メニューになっているものもあります。
当社の理念やこだわりをお客様に直接お伝えするのは、まさしく社員やスタッフ達に他なりません。ですから彼らには、年一回の社員総会やパーティー、昼食ミーティングや現場のコンテストなど様々な場を作り、色々な方法を使って私の思いや考え方を伝えています。
そこではまず、当社のやっていることは、サービスではなくおもてなしだということをしつこく言っています。当社の考えるおもてなしとは、自分たちの心や気持ちを形にして相手に差し出すこと、渡すことだと教えています。形には、「 ふるまい 」、「 よそおい 」、 「 しつらえ 」 の3つがあります。「 ふるまい 」 とは、言動・行動であり、「 よそおい 」 とは身だしなみのことです。身だしなみはおしゃれとは違います。おしゃれは自分のためにするものですが、身だしなみは相手のためにするものだからです。そして、「 しつらえ 」 とは空間の作り方のことです。これは、店内を清潔に保つだけでなく、BGMや空調に至るまで考えるということです。
「 おもてなしNo.1を目指そう 」 を社内スローガンにこれら3つの形の中に自分たちの 「 大好きがいっぱい 」 という気持ちを乗せよう、これが当社の行動指針です。最近では、「 大好きがいっぱいだから、妊婦さんのためにブランケットをご用意したいので買ってください 」 といった風に 「 大好きがいっぱいだから…したい 」 という共通の会話が自然に生まれてくるようになりました、彼らもこの考え方をよく理解をしてくれているなと感じています。
株式会社きちり
東京証券取引所市場第二部上場
(2013年3月)
東京本社:東京都渋谷区渋谷1-17-2 CRD Shibuya1st 12F
大阪本社:大阪市中央区安土町2-3-13 大阪国際ビルディング8F
設立年月日:1998年7月16日
代表取締役 平川昌紀氏
1969年 大阪府生まれ。甲南大学卒業後、リゾート開発会社に入社。
1997年 モスバーガーFCで飲食店の経営をスタート。
1998年 有限会社吉利を設立(2000年株式会社へ改組)。
2007年 大阪証券取引所ヘラクレス市場上場
2013年 東京証券取引所市場第二部上場