社員食堂やレシピ本でクローズアップされた大手計量機器メーカーのタニタと業務提携を行い、2012年1月 「 丸の内タニタ食堂 」をオープンし注目を集めるきちり。同社は現在、関西と関東に65店舗を多様な業態でチェーン展開している。同社が創業以来目指す 「 外食産業の新スタンダードの創造 」とは何か。平川昌紀社長に、その成長の経緯と戦略を語ってもらう。
私が外食業界に入るきっかけとなったのは、学生時代に読んだ二冊の本との出会いでした。
1つは、日本マクドナルドを創業された故藤田田氏の 「 ユダヤの商法 」、2つ目はナポレオン・ヒルの 「 思考は現実化する 」 です。藤田さんの本からは 「 外食 」 というものをはっきりイメージすることができました。そしてこれからは食と女性がターゲットとなる時代が来ると確信し、<外食産業の新しいスタンダードを創造する>というビジョンを思い描けたのです。外食は移り変わりの早い業界ですが、だからこそ自分にもチャンスがあるのではないか。新たなスタンダードを創ることで、新たな外食ビジネスのイノベーターになれるのではないか、と考えたのです。そしてナポレオン・ヒルの本からは 「 全ては思ったことからスタートする 」 という考えに啓発され、「 外食 」 で日本のリーデイングカンパニーになるような会社を作ろうという志を持つようになり、起業を決意したのです。
しかし、いざ外食で起業しようとしても、当時の私にはノウハウなど全くありません。私はどちらかというと深く、手堅く物事を進める性質なので、まずはノウハウを身に着けてから今後の自分の事業をどのようにやっていくか再度考え直そうと思ったわけです。
そこで手始めに、1997年モスバーガーとのフランチャイズ契約を結んだのです。なぜFCから着手したかというと、FCの仕組みを一から学びたかったからです。数ある外食の中で、ハンバーガービジネスを最初に選んだ理由は、起業のきっかけとなったのがマクドナルドの藤田さんの本であったという影響もありましたが、それ以上に、モスバーガーという企業に価値と魅力を感じていたからです。ご存じのように、モスバーガーは日本のオリジナル企業であり、創業者の故桜田慧さんも脱サラをして築き成長していった企業です。学生時代からの志である「外食産業で日本のリーデイングカンパニーを創り、上場もする」という思いでスタートした私にとって、だからこそモスバーガーでそのノウハウを学ぶことには価値があると考えたのです。
しかし、FCを手掛けながら一方で、独立開業する業態として、ハンバーガービジネスは、物凄くハードルが高いということも分かりました。では、参入障壁が比較的低くて成功確率が高い業態は何か?と考えた時、料理や場の提供、トータルコーディネートなどに価値を感じてもらえる業態であれば、例え当初は上手くいかなく試行錯誤したとしても、最終的に成功に導けるのではないかと考えて居酒屋業態に参入することにしました。そして、1998年に大阪・柏原市にて創作居酒屋 「 きちり喰堂(くらうど) 」 をオープンしました。
以後、お陰様で順調に大阪市内にも出店を果たし、多くの業態のレストランを手掛けることができました。
次号では、同社の企業理念とその実現のための店つくりをご紹介しよう。
株式会社きちり
東京証券取引所市場第二部上場
(2013年3月)
東京本社:東京都渋谷区渋谷1-17-2 CRD Shibuya1st 12F
大阪本社:大阪市中央区安土町2-3-13 大阪国際ビルディング8F
設立年月日:1998年7月16日
代表取締役 平川昌紀氏
1969年 大阪府生まれ。甲南大学卒業後、リゾート開発会社に入社。
1997年 モスバーガーFCで飲食店の経営をスタート。
1998年 有限会社吉利を設立(2000年株式会社へ改組)。
2007年 大阪証券取引所ヘラクレス市場上場
2013年 東京証券取引所市場第二部上場