「日本ケンタッキー・フライド・チキン編」クリスマスにはチキン ~外食企業が創り出した日本文化~

外食企業物語 日本ケンタッキー・フライド・チキン編

日本のクリスマスには欠かせない存在となったケンタッキーフライドチキン。ご承知のように、「クリスマスにチキンを食べる」という習慣は日本だけのもの。これは、販促活動の一環として、1974年に日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFCJ)がスタートさせた習慣だが、企業キャンペーンが日本の食文化へと花開いた希有な例といえるだろう。

このクリスマスキャンペーンをはじめ、爆発的に店舗数を拡大させた同社の黎明期の戦略は、日本独特の文化やマーケットにいかに適応するかが課題であったという。ケンタッキーフライドチキンならびにKFCJの歴史を踏まえながら、日本文化に向けた同社の企業戦略や理念を振り返ってみよう。

第5回 カーネルの信念を守り続け、「安心できるおいしさ」に情熱を注ぐ

最終回
 カーネルの信念を守り続け、「安心できるおいしさ」に情熱を注ぐ

~素材の生産から調理まで一括管理する独自の供給システムを構築~

 お客様に心から楽しんでお召し上がりいただくこと。その喜びがカーネル・サンダースの生涯の原動力であり、カーネルが何よりも大切にしていたのが、“サザン・ホスピタリティ(アメリカ南部特有のもてなしの心)”である。日本の「おもてなし精神」とも合致する、この信念を受け継ぐKFCJでも、常に料理やサービスの質の向上を図っている。
  本当のおいしさにこだわり続けて誕生した「ハーブ鶏」は、エサと一緒に4種類の天然ハーブとビタミンEを与えることで、鶏特有のにおいを抑えている。これを飼育しているのは、設備、飼育方法、飼料、健康管理などに関する認定基準を満たした全国360の「KFC登録飼育農場」である。
  約38~42日令のやわらかい若鶏で出荷されるハーブ鶏は、さらに、独自の厳しい認定基準をクリアした「KFCカットチキン生産認定工場(全国に12工場)」へ送られる。工場内は作業場が細かく区分けされ、区域間の移動を制限するために作業工程ごとに作業服の色が変えるなど、万全の衛生管理システムを採っている。KFCとピザハットの世界的な食品安全・衛生管理基準である「STARシステム」に基づいた、衛生管理・品質管理のもとでカットされたハーブ鶏は各店舗へ届けられ、さらに店舗スタッフがチェックを重ねる。そして、独自のチキン調理の認定資格、「COM(Confidential Operation Manual)ライセンス」をもつスタッフの管理のもとで、衛生面に細心の注意を払いながら、1ピースずつ丁寧に仕上げるのである。

~80年代から安全性に配慮、企業風土に根付かせる~

 安心できる素材を使い、店舗で手づくりしているできたてのおいしさを最高のサービスとともに提供すること。設立から36年間、KFCJグループが貫いてきたこの姿勢は、“FHH & H=Fresh(新鮮)・Healthy(安全で健康的)・Handmade(手づくり)&Hospitality(おもてなしの心)”と呼ばれている。その象徴となるのが、素材の生産から流通、店舗での調理にいたるまで一貫した上記の供給システムであり、心のこもったサービスを実践するためにKFCグループ全店で実施しているCHAMPS活動というわけである。なお、CHAMPSは、店舗活動のすべてをお客様の立場からチェックし、公正な基準で厳しく評価・改善するというアメリカ発のシステム。審査項目は多岐にわたり、不備な点は即刻改善できる仕組になっている。

※CHAMPS Cleanliness=清潔さ、Hospitality=おもてなし、Accuracy of Orders=オーダーの正確さ、Maintenance of Facilities=店舗設備のメンテナンス、Product Quality=商品の品質、Speed of Service=サービスの速さ

  食の安全への関心が高まるにつれ、KFCJでも最近になって、“FHH & H というフレーズで安全・安心を強調しているが、実は、FHH&Hは、80年代から社内ポリシーとして謳われていた。ハーブ鶏の販売開始こそ1994年だが、研究自体は約10年前から重ねられていたほか、「KFCカットチキン生産工場認定」が89年に開始、「COMライセンス」も93年から導入されている。味に対する追求であることはもちろんだが、これらの施策は安全性の追求という側面が強い。食の安全性が全く騒がれていない時期から、企業風土として安全・安心を心掛けて来たのである。2004年1月に国内で鶏インフルエンザが発生して、鶏肉の購入を控える騒動になったが、このときには、すばやくテレビや広告などでKFCの安全性を訴える啓蒙活動を展開した。騒動によって、何かを変えたとか、新しく始めたことは何も無く、これまでにやってきたことをPRしたのである。1~2月こそ買い控えがあって、厳しい状態に売上が落ちたが、活動の効果もあって3月から盛り返すことができた。



日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社

日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社

http://www.kfc.co.jp/

1970年の設立以来、カーネル・サンダースから受け継いだ伝統を守り伝えると同時に、時代に即した新しい形のメニューや店舗展開で着実に成長を続ける フードサービスのリーディングカンパニー。

1991年には「ピザハット」事業にも乗り出し、KFCと合わせて全国に約1500店舗を構える。

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