日本のクリスマスには欠かせない存在となったケンタッキーフライドチキン。ご承知のように、「クリスマスにチキンを食べる」という習慣は日本だけのもの。これは、販促活動の一環として、1974年に日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFCJ)がスタートさせた習慣だが、企業キャンペーンが日本の食文化へと花開いた希有な例といえるだろう。
このクリスマスキャンペーンをはじめ、爆発的に店舗数を拡大させた同社の黎明期の戦略は、日本独特の文化やマーケットにいかに適応するかが課題であったという。ケンタッキーフライドチキンならびにKFCJの歴史を踏まえながら、日本文化に向けた同社の企業戦略や理念を振り返ってみよう。
第 3 回 |
オリジナルチキンの美味しさを忠実に伝え、素材を究める
~日本人にはなじみがなかったフライドチキンの衝撃~ KFCの「オリジナルチキン」の美味しさは、11種のスパイスを調合したカーネル秘伝の味付けと、100%植物油を使って圧力釜で仕上げる独特の調理法にある。フライドチキンは、アメリカ南部でポピュラーな料理。“グレート・ユニーク・テイスト”と現地で絶賛されたKFCに対して、当時の日本人も「こんなに美味いものがあったのか」という感想が大多数を占めたという。現在のように一般的でこそないかもしれないが、当時から鶏の唐揚げはもちろんあった。しかし、スパイスを駆使した美味に衝撃を受けた人が多かったのである。 ~オリジナルチキンに加味される日本独自の秘密~ カーネル・サンダースの味を最も忠実に再現しているため、氏も日本のオリジナルチキンを気に入っていたそうだが、実は日本で独自に工夫して美味しくする研究も常に行われている。しかし、これは、日本人の舌に合わせる研究ではない。スパイス部分は変えることなく、エサにまでこだわって育てたヘルシーな国産ハーブ鶏を使用するといった素材への工夫である。やはり、アメリカと日本の鶏は種類が異なり、そのため、肉質も違ってくる。そうなれば、鶏の脂質とのバランスを考えた揚げ油にする必要もある。素材の味を良くするという方向から、美味しさので追求を今も変わらずに続けているのである。 |
日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社
1970年の設立以来、カーネル・サンダースから受け継いだ伝統を守り伝えると同時に、時代に即した新しい形のメニューや店舗展開で着実に成長を続ける フードサービスのリーディングカンパニー。
1991年には「ピザハット」事業にも乗り出し、KFCと合わせて全国に約1500店舗を構える。