「柿安編」美味しいものをお値打ち価格で ~柿安・業態開発の強みを探る~

外食企業物語 柿安編 美味しいものをお値打ち価格で 柿安・業態開発の強みを探る

今年で創業136年を迎える株式会社柿安本店。新興企業の多い外食産業の中、その伝統は今なお輝いている。創業以来、お客様第一主義を貫き、「美味しさへのこだわり」「お値打ち感へのこだわり」が企業理念として息づいている。文明開化の代名詞といわれた牛肉に早々に目をつけたその先見性は、現代においても同社の業態開発力に見ることができる。内食の精肉店、中食の惣菜店、外食のレストランと食の全てを網羅する総合食品企業「柿安」。その最も得意とする業態開発を中心に紐解いていきたい。なお、今回は代表取締役社長・赤塚保正氏の独占インタビューの模様を交えて物語を進めていく。

第5回 エポックとなった健康ビュッフェ「三尺三寸箸」の誕生~レストラン事業~

第5回:エポックとなった健康ビュッフェ「三尺三寸箸」の誕生~レストラン事業~

時代のニーズを的確に捉えて、
安全 ・ 安心と旬にこだわる外食事業

牛肉しぐれ煮の大ヒットによる食品事業の成長、時流に乗った惣菜事業の成長の陰に隠れ、また、バブルの崩壊による法人需要の落ち込みに BSEの問題が拍車を掛けたことで、外食事業は3店舗で年商8億円までに縮小することになる。もちろんこの間に同社が手をこまねいていたわけではない。

時代のニーズを的確に捉えて、安全・安心と旬にこだわる外食事業1995年(平成7年)には、郊外型のレストラン 「 柿安 柿次郎 」 を創業の地・桑名に出店。会席中心であったそれまでの店舗は、客単価が 8,000円~10,000円と高く、一般消費者が気軽に行けるような店舗ではなかった。そこで、柿安は、一般消費者がハレの日に利用できるように、昼食時で 2,000円前後、夕食時でも 5,000円までで食べられる郊外型のカジュアルなレストランを創り出したのである。

そして、 2003年(平成15年)に日本のレストランが命名したと言われるいわゆる食べ放題スタイルのバイキングをビュッフェレストランとし、しかも健康食ビュッフェの先駆けとして大ブレークした 「 三尺三寸箸 」 を大阪の梅田に出店した。三尺三寸箸では、安全安心の農法で生産され時代のニーズを的確に捉えて、安全・安心と旬にこだわる外食事業た新鮮な野菜類を中心とした食材を使用し、DETOK(解毒する)や免疫など話題の健康メニューをいち早く開発してきた。また、三尺三寸箸がこだわるのは健康メニューだけではない。野菜や根菜類の季節感が失われてきたと言われて久しい。だからこそ “ 旬 ” にこだわり、旬の素材を活用したメニュー開発にもこだわっているのである。

− 三尺三寸箸を出した経緯をお聞かせください

【 赤塚社長 】 当時、食品事業は、BSEの影響を受けながらも堅調に出店を続け、惣菜事業の方は、一気に出店を重ねている状態でしたが、唯一元気がなかったのがレストラン事業でした。商売が上手くいかないと、社員の元気も無くなる。会社としては、社員に元気を取り戻してもらうことが重要ですから、レストランでも何か新しいことをしなければいけないと考えていたのです。

時代のニーズを的確に捉えて、安全・安心と旬にこだわる外食事業丁度その頃、お客様から 「 できたての惣菜をすぐに食べられるところはないのですか 」 という声があったのです。そして、美容・健康・安全・安心が時代のニーズとなり、“ 種類が多い ” “ 選べる楽しさがある ” “ 美容と健康に良い ” といったことが、「 豊かな食生活 」 のキーワードになりました。

一方、会席料理の柿安は、コースのために選べる楽しさがない。嫌いなものが出てくると、食べないのにお金を払わされることになります。そして、惣菜は、持ち帰りの間に湯気が出なくなり、外食に比べると出来立て感に劣る。では、外食と中食の欠点を補完しあうものはなにか。そこで目をつけたのがビュッフェだったのです。

時代のニーズを的確に捉えて、安全・安心と旬にこだわる外食事業だからといって、欧米のビュッフェをそのまま持ってきても駄目。柿安流にアレンジすることが必要でした。柿安のお客様は女性の方が多く、その関心事は 「 美容 」 です。また、世の中全般の関心は、「 健康 」 の方向に向いている。さらに、“ 種類が多い ” “ 選べる楽しさがある ” “ 美容と健康に良い ” ものは何なのか。それが、柿安のできたての惣菜の中で、「 お好みのものをお好きなだけ食べていただく 」 というビュッフェ業態の三尺三寸箸だったのです。三尺三寸箸では、職人が作った80種にわたるできたての和食、洋食、中華、そして、女性の大好きなデザートを提供することにしました。料理は、野菜を中心にすることで、美容と健康に留意しました。


三尺三寸箸の成功により柿安のレストラン事業は新たなるステージへと進むことになる。 2006年(平成18年)10月、点心と中華料理をベースにした創作料理をビュッフェスタイルで提供する銀座の 「 香港飲茶 」 、初の海外出店となる 「 柿安 国際美食 」 を上海に出店。さらに、2007年(平成19年)4月には、横浜に 「 柿安 上海DINING 」 、岐阜の大垣に 「 上海柿安 」 と立て続けに中華ビュッフェレストランを出店した。そして、同じく今年4月には、満を持したかの如く、名古屋に 「 柿安 滝の水店 」 をオープンした。これは、「 しゃぶしゃぶ日本料理 柿安 」 の屋号として、何と12年ぶりになる2号店だ。


− 柿安 滝の水店を出した経緯をお聞かせください

【 赤塚社長 】 昨年(2006年)12月に社長に就任して、自分の政策と方針を考えた時に、もう一度社員一同で原点に立ち返ろうと思ったのです。柿安の経営理念である 「 美味しいものを、お値打ち価格で 」 をもっと追及していこうではないかということです。そして、原点に返ることによって、もう一度柿安の強みは何か見直してみようと思ったのです。

時代のニーズを的確に捉えて、安全・安心と旬にこだわる外食事業では、柿安の強みとは何か。それは牛肉を中心に、牧場 ~ 加工工場 ~ 精肉の販売のノウハウまで持っている 「 肉 」 です。他店が国産牛しか提供できない値段で、黒毛和牛を提供できるノウハウを持っているわけです。それが、出店の発端になっています。

しゃぶしゃぶとしては、 9年半ぶりとなるこの店では、黒毛和牛3,000円、柿安牛4,000円、松坂牛5,500円でご提供しています。高・中・低価格の各商品であれば、中 → 低 → 高 の順で売れ、時代のニーズを的確に捉えて、安全・安心と旬にこだわる外食事業高価格商品は売上の10%程度になるというのが一般的です。しかし、この店では、中 → 高 → 低 の順で、中・高がそれぞれ40%を占めるのです。普通、5,500円では松坂肉を食べられないということをお客様がよくご存知なので、こういう傾向になっているのです。これは、「 美味しいものを、お値打ち価格で 」 という経営理念を実現できている証拠と実感しています。

 



株式会社 柿安本店

株式会社 柿安本店

http://www.kakiyasuhonten.co.jp/

1871年(明治4年)、新時代の象徴である牛肉に魅せられた柿安初代・赤塚安次郎が三重県桑名市に牛鍋屋を開店して創業。1968年(昭和43年)11月の法人化以来、「牛肉しぐれ煮」をはじめとする各種総菜・精肉の販売を全国展開する一方、外食事業も強化。

平成7年に郊外型レストラン「柿安 柿次郎」を桑名市にオープン、その後もビュッフェレストラン「柿安 三尺三寸箸」、「讃岐きしめん 大吉」、飲茶ビュッフェ「柿安香港飲茶」など新業態を次々に出店。

2006年(平成18年)10月には、ビュッフェレストラン「柿安 国際美食」(中国・上海市)で海外にも進出している。精肉事業、惣菜事業、レストラン事業、食品事業の4事業で食文化を創造する一方、『美味しいものをお値打ち価格で』というお客様第一主義を貫いている。

赤塚保正 代表取締役社長

赤塚 保正

代表取締役社長

昭和38年(1963年)、三重県出身。
昭和62年(1987年)、慶應義塾大学法学部卒業後米国に留学。
平成元年(1989年)、株式会社柿安本店入社。
平成10年(1998年)、取締役レストラ ン営業部長、平成13年(2001年)、常務取締役レストラン営業部総支配人、平成16年(2004年)、専務取締役レストラン事業本部長兼精肉事業本部長等を歴任後、平成18年12月に代表取締役社長に就任。

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