「柿安編」美味しいものをお値打ち価格で ~柿安・業態開発の強みを探る~

外食企業物語 柿安編 美味しいものをお値打ち価格で 柿安・業態開発の強みを探る

今年で創業136年を迎える株式会社柿安本店。新興企業の多い外食産業の中、その伝統は今なお輝いている。創業以来、お客様第一主義を貫き、「美味しさへのこだわり」「お値打ち感へのこだわり」が企業理念として息づいている。文明開化の代名詞といわれた牛肉に早々に目をつけたその先見性は、現代においても同社の業態開発力に見ることができる。内食の精肉店、中食の惣菜店、外食のレストランと食の全てを網羅する総合食品企業「柿安」。その最も得意とする業態開発を中心に紐解いていきたい。なお、今回は代表取締役社長・赤塚保正氏の独占インタビューの模様を交えて物語を進めていく。

第3回 お袋の味が生んだ事業~食品事業~

第3回:お袋の味が生んだ事業~食品事業~

おふくろの味、おばあちゃんの味を演出してヒット商品に

お袋の味が生んだ事業~食品事業~ 1972年(昭和47年)、中部地区の名鉄百貨店において 「 牛肉しぐれ煮 」 の販売が開始されて以降、関西地区、関東地区そして全国へと順次販売網を拡大していく。大ヒット商品となった 「 牛肉しぐれ煮 」 を端緒とする食品事業は、しぐれ関連の他に、おはぎ・わらび餅等の和菓子事業、オリジナル麺を使用したうどん事業などが展開されていく。

−大ヒットとなった「牛肉しぐれ煮」は、料亭で生み出された商品ですか?

お袋の味が生んだ事業~食品事業~【 赤塚社長 】 いえ、実は家庭の弁当から生まれたものなのです。私の祖母に当たる初代会長のヒデは、商売をやりながら子供たちの食事も作らなければならなかった。それも 7人の子供がいましたから相当大変ですよね。そこで、祖母は牛肉の細切れに生姜を混ぜ、醤油と味醂の味付けをしてフライパンでパーッと炙る、簡単なすき焼き弁当を作ったのです。これが相当美味しかったらしいのです。しかも保存食にもなる…。そこから、これをおかずとして売り出そうと考え出されたのが、「 牛肉のしぐれ煮 」 なのです。料亭どころか、子供たちのおかずから誕生したオフクロの味なのです(笑)。

−牛肉から和菓子とはイメージが湧きませんが、どの様な経緯で生まれたのですか?

【 赤塚社長 】 もともとは、10年ほど前に柿次郎という桑名の路面店でわらびもちを売ったのが始まりです。そこで、お客様の方からもっと本格的な和菓子を売ってほしいという声がありました。幸いにも料亭をやってきたこともあって、和菓子職人がおりましたので、具体化することができたのです。それと、当社の食品事業には、「 牛肉しぐれ煮 」 という法人需要に強い商品はありましたが、個人需要に強い商品が無かったため、個人向け商品お袋の味が生んだ事業~食品事業~の柱になるのではないかと考えて事業化を決意したのです。なお、現在では、「 柿安 柿次郎 」 と関連会社の柿安グルメフーズ株式会社の 「 口福堂 」 で和菓子を取扱っています。

−和菓子の売り方でこだわったことは?

【 赤塚社長 】 口福堂では、お客様の前でおはぎを握ったり、お餅に黄粉をまぶしたりして販売をしています。そのため、販売員として、お年を召された方を配しました。何故かというと、おはぎは、若い人が作っていても美味しそうに見えないからです。おはぎというのは、昔ながらの味、昔を懐かしむ 「 おばあちゃん 」 の味ですからね。

『おはぎ』のイメージ写真あとは、一種のパフォーマンスですが、黄粉やゴマをお餅にまぶすのではなく、山盛りにしてあげるということをやっています。これは、お店をいろいろと見に行ったり、実際の経験値から実現させました。「 余った黄粉は、牛乳に混ぜて飲むと美味しいし、健康にもいいよ 」 とおばあちゃんに言われるとなぜか納得するものですよね。

−食品事業の今後の展開についてお教えください

お袋の味が生んだ事業~食品事業~【 赤塚社長 】 残念なことですが、「 牛肉しぐれ煮 」 は、斜陽商品になりつつあると自覚しております。これは、食生活の変化やバブル崩壊以降の法人需要の伸びが見込めないことから致し方ないことです。しかし、全くだめかというとそうではないのも事実です。例えば、今回伊勢丹さんがリニューアルして、 10店舗ほどあった佃煮店を4店舗だけに絞り込みましたが、当社の店はちゃんと残っています。これまでに築いた知名度やブランドを活かして、着実にやっていく商品だと考えています。

一方、和菓子部門は、非常に良好な状態となっています。おかげさまで、売上も年商 10億円に手が届くところまで来ました。和菓子産業で10億円といえば、かなり大手の部類に入るのではないでしょうか。特徴としては、坪効率の良さが挙げられます。例えば、昨年秋にオープンした 「 口福堂 ラゾーナ川崎店 」 は、6坪で月商1,500万円ほどです。さらに、利益率も高いという強みもあります。「 口福堂 」 もいまや25店を超え、30店近くまで数を伸ばしています。当社では1日あたり1トンもアンコを炊いているのですが、名古屋では、柿安の取扱いがが最も多いらしいです。和菓子部門は、柿安の5本目の柱になると確信しています。  

株式会社 柿安本店

株式会社 柿安本店

http://www.kakiyasuhonten.co.jp/

1871年(明治4年)、新時代の象徴である牛肉に魅せられた柿安初代・赤塚安次郎が三重県桑名市に牛鍋屋を開店して創業。1968年(昭和43年)11月の法人化以来、「牛肉しぐれ煮」をはじめとする各種総菜・精肉の販売を全国展開する一方、外食事業も強化。

平成7年に郊外型レストラン「柿安 柿次郎」を桑名市にオープン、その後もビュッフェレストラン「柿安 三尺三寸箸」、「讃岐きしめん 大吉」、飲茶ビュッフェ「柿安香港飲茶」など新業態を次々に出店。

2006年(平成18年)10月には、ビュッフェレストラン「柿安 国際美食」(中国・上海市)で海外にも進出している。精肉事業、惣菜事業、レストラン事業、食品事業の4事業で食文化を創造する一方、『美味しいものをお値打ち価格で』というお客様第一主義を貫いている。

赤塚保正 代表取締役社長

赤塚 保正

代表取締役社長

昭和38年(1963年)、三重県出身。
昭和62年(1987年)、慶應義塾大学法学部卒業後米国に留学。
平成元年(1989年)、株式会社柿安本店入社。
平成10年(1998年)、取締役レストラ ン営業部長、平成13年(2001年)、常務取締役レストラン営業部総支配人、平成16年(2004年)、専務取締役レストラン事業本部長兼精肉事業本部長等を歴任後、平成18年12月に代表取締役社長に就任。

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