「柿安編」美味しいものをお値打ち価格で ~柿安・業態開発の強みを探る~

外食企業物語 柿安編 美味しいものをお値打ち価格で 柿安・業態開発の強みを探る

今年で創業136年を迎える株式会社柿安本店。新興企業の多い外食産業の中、その伝統は今なお輝いている。創業以来、お客様第一主義を貫き、「美味しさへのこだわり」「お値打ち感へのこだわり」が企業理念として息づいている。文明開化の代名詞といわれた牛肉に早々に目をつけたその先見性は、現代においても同社の業態開発力に見ることができる。内食の精肉店、中食の惣菜店、外食のレストランと食の全てを網羅する総合食品企業「柿安」。その最も得意とする業態開発を中心に紐解いていきたい。なお、今回は代表取締役社長・赤塚保正氏の独占インタビューの模様を交えて物語を進めていく。

第2回 創業から続く柿安の基幹事業~精肉事業~

 

第2回:創業から続く柿安の基幹事業~精肉事業~

受け継がれた 「 こだわり 」 が柿安ブランドへ成長

創業から続く柿安の基幹事業~精肉事業~ 柿安の精肉事業の歴史は古く、創業時にまで遡る。初代・安次郎が、牛鍋屋と同時に牛の飼育を始め、精肉小売店を営んだのが始まりである。それ以降、柿安は産地・生産者の開発に積極的に取り組み、美味しいものを作ろうという意欲のある生産者との妥協のない共同開発・肥育にこだわり、品質の肉を提供しつづけている。

一方で顧客に対しては、柿安の肉がどういう食材であるかが一目でわかるようにブランド化にも取り組み、美味しさ徹底型の牛肉「柿安牛」・豚肉「鹿児島ダブルエックス」・鶏肉「天草大王」、健康付加型の「杜仲茶豚」・「すくすく鶏」など数々のブランド肉を世に送り出している。また、肉を買うショーケースの横に設けられたカウンターですき焼き丼が食べられる創業から続く柿安の基幹事業~精肉事業~といったイートインコーナー併設の精肉店、松坂牛・柿安牛・国産黒毛和牛のみを販売する牛肉特化型精肉店など 『 肉の柿安 』 ならではの面白い試みにも取り組んでいる。

ここからは、現在の精肉事業について赤塚現社長に伺ってみる。

−精肉事業の現況をお聞かせください

【 赤塚社長 】 現在は、百貨店を中心に牛、鳥、豚の対面販売とパック販売を中心にビジネスを行っていますが、これは、 BSE問題を機に精肉店の出店が増えたためです。百貨店では、長年にわたって他社の精肉店が営業をされていて、柿安が出店する余地があまり無かったのです。それらの店舗がBSE問題で次々と退店してしまいました。我々は、その機会を逃さずに百貨店に進出することができました。その結果、この10年間で、精肉店は300店ほどになり、事業そのものに勢いが出てきました。年商で見ると1店舗当たり5億円規模となっています。

創業から続く柿安の基幹事業~精肉事業~−着実に業績を伸ばしていますが、その秘訣はどこにあるのでしょう?

【 赤塚社長 】 ひとえに「ブランド力」だと考えております。以前、ある百貨店の方が「大手メーカー系の精肉店は特色がないが、柿安の場合は独自ブランドを持っている。だから出店をお願いするのです」と言ってくださいました。「沖縄の幻の豚 アグー豚」「鹿児島ダブルエックス」「天草大王鶏」等はこの 2年間程で創ったブランドですが、他店では扱っていません。つまり、柿安のお店でしか買えないブランドとなっている。そこにお客様は魅力を感じられて、わざわざ柿安に買いに来てくださるのです。今後のブランド肉は、「健康」をテーマにしていきたいと考えています。

−新業態も含めて、今後はどのような戦略を考えていらっしゃいますか?

【 赤塚社長 】 「売上規模」「商品構成」「販売方法」といった観点で、新たなマーケットを切り開いていきたいと思っています。新規の百貨店ができることは少ないでしょうし、既存の百貨店の精肉店が入れ替わるということも少ないですから、まずは新たな販売チャネルを考えていきたい。そして、販売方法については、百貨店の売り方との差別化が必要と考え、対面売りだけを行い、商品ラインナップも牛肉だけに絞るという手法を考えました。以前から、お声を掛けていただい創業から続く柿安の基幹事業~精肉事業~ていたイオンさんにお世話になり、1人あたりの牛肉消費量が最も多い奈良県を商圏に持つ「イオン高の原店」に、牛肉特化型の精肉店をこの 4月に出店しました。商品を絞ったことで、売り上げは1億~1.5億円と少なめですが、商品を絞ったことで店舗も小型化できます。ですから、その分だけ店数を増やすことができるので、7月には2店舗目を出店します。そして、業績が良ければ、このタイプを積極的に展開していきたいと思います。

あとは、松坂牛でも新たな展開があります。今まで松阪牛だったのに、区域の問題で柿安牛と名称変更せざるを得ないということがありました。あまり重要視して来なかったのですが、色々な方の声を聞くと、やはり「松阪牛」は世界のブランドです。そこで、 4月に松阪地区に指定牧場を作り、柿安の松阪牛は全てここから提供していくことにしました。


株式会社 柿安本店

株式会社 柿安本店

http://www.kakiyasuhonten.co.jp/

1871年(明治4年)、新時代の象徴である牛肉に魅せられた柿安初代・赤塚安次郎が三重県桑名市に牛鍋屋を開店して創業。1968年(昭和43年)11月の法人化以来、「牛肉しぐれ煮」をはじめとする各種総菜・精肉の販売を全国展開する一方、外食事業も強化。

平成7年に郊外型レストラン「柿安 柿次郎」を桑名市にオープン、その後もビュッフェレストラン「柿安 三尺三寸箸」、「讃岐きしめん 大吉」、飲茶ビュッフェ「柿安香港飲茶」など新業態を次々に出店。

2006年(平成18年)10月には、ビュッフェレストラン「柿安 国際美食」(中国・上海市)で海外にも進出している。精肉事業、惣菜事業、レストラン事業、食品事業の4事業で食文化を創造する一方、『美味しいものをお値打ち価格で』というお客様第一主義を貫いている。

赤塚保正 代表取締役社長

赤塚 保正

代表取締役社長

昭和38年(1963年)、三重県出身。
昭和62年(1987年)、慶應義塾大学法学部卒業後米国に留学。
平成元年(1989年)、株式会社柿安本店入社。
平成10年(1998年)、取締役レストラ ン営業部長、平成13年(2001年)、常務取締役レストラン営業部総支配人、平成16年(2004年)、専務取締役レストラン事業本部長兼精肉事業本部長等を歴任後、平成18年12月に代表取締役社長に就任。

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