昭和61年(1986年)11月、宮城県仙台市に1軒のピザ宅配の店舗が開店した。「ストロベリーコーンズ荒町通店」である。日本初の宅配ピザであるドミノピザが開店したのはその前年である。つまり、ストロベリーコーンズは日本における宅配ピザの草分けなのである。
ストロベリーコーンズの発展には、創業社長である宮下雅光氏の強力なリーダーシップとアイデア力を抜きには語れない。今回は、宮下社長の談話を交えて、同社の発展の歴史を紐解いていきたい。
- 宮下社長が考える外食産業の役割とは何ですか?
【宮下社長】 う~ん。難しい質問ですね。色々と多岐に渡りますからね。でも、食に対する企業コンプライアンスの問題がこれだけたくさん出てくるとやはり人の問題、教育の問題を重要視しなくてはいけないですよね。
例えば、大阪の高級料亭と言えばピンと来ると思いますが(笑)、あれだけ食の業界で経験を積まれ、お年を召された方でも ” 食べ残し ” と ” 手付かず ” とは違うなどと平気で言ったり、記者会見の時に長男に話す事を耳打ちで指示したりと・・・。今の日本を象徴しているのかなぁと思いましたね。
親が言い訳を言ったり、子供を過保護に守ったりしたら、子供達も同じようになってしまいますよね。言い訳だけだったらかわいいものですが(笑)、今の子供達は逆切れをしますからね。自分を苛めたから、文句を言われたからということだけで人を殺してしまうという時代になってしまった。今の日本人は、本当に我慢をするということができなくなってしまいましたよね。
教育が悪いよね。家庭の教育が悪いし、学校の教育が悪いと私は感じますね。
じゃあ、誰が今の子供たちを教育しているのかと言うと、外食産業なんですよ。流通業が教育をしているわけですよ。外食産業は、教育産業(笑)。
- “ 外食産業は、教育産業 ” とは良い言葉ですね。
【宮下社長】 今の若い子達は、最初から挨拶もできないんですよ (笑)。我々のところにアルバイトの子が来るでしょ、そうすると挨拶もできない。店に来たら 「 おはようございます 」 でしょ。何かやってもらったら 「 ありがとうございました 」 でしょ。帰る時には 「 お疲れ様でした 」 「 さようなら 」 でしょと、最初にそういう風にしつけているのです。幼稚園児では無く、大学生達に対してですよ(笑)。
でもね、そうは言っても、今の子は非常に頭が良いのですよ。ちゃんとしつけると、ちゃんとやるんですよ。我々のビジネスは、サービスをしてお客様からお金を頂いていますよね。お金を頂戴する責任って言ったらいいのかな、そういうことをちゃんと理解できるのですよ。
そういうことを目の当たりにすると、今の親や教師は自分のことで精一杯で、子供達をちゃんと教育していないと感じますね。だから我々フードサービスの人間が教育をやっているんですよ(笑)。
- 外食産業の方々は、若い人達に教育をしているんだという自負をもたれているんですね。
【宮下社長】 みんなそう思ってやっていると思いますよ。命を懸けてやっていると思いますよ (笑)。
(前回話題に出た)吉野家の安部さん。彼はアルバイトから社長にまで登りつめたじゃないですか。話によると安部さんは、創業者の松田さんから相当スパルタ教育を受けたようですよ(笑)。そして創業者のDNAをとことん注入されたので社長になられたのですよ(笑)。
例えば、BSE問題の時も全く経営感覚がぶれなかったじゃないですか。オーストラリア産牛肉を使えば、牛丼は作れるわけですよね。量は足りないかもしれないけれど。それも中国やブラジルなどから牛肉をかき集めるという方法もあるわけですよ。でもそれをやらなかった。味が変わるからという理由で。頑なですよね、松田創業者のDNAが体中駆け巡っているんでしょうね(笑)。
でも結果的にはブランドイメージを守りましたよね。松田創業者の意向を守りましたよね。更に企業コンプライアンスも守り通している。これは凄い事ですよ。
- 最後になりますが、ストロベリーコーンズの今後についてどう考えられているかお教えください。
【宮下社長】 あまり考えていないんですよ (笑)。あまり目標を持たないんです。要するに発生時点管理主義ということですね(笑)。外食の経営者は良く言うじゃないですか、「 何年後に何店舗持ちたい 」 と。そういうことも考えたことが無いのですね。もちろん個人的に夢や目標はありますよ。壮大な夢が(笑)。でもストロベリーコーンズに対しては、今ご注文を頂いたお客様が、美味しいと言って下さる、それだけかな。一期一会というものはそういうことでしょ。う~ん、何も無い。日々精進で・・・。何も無いです(笑)。
- とはいっても新しいビジネスを考えていらっしゃいますよね (笑)。
【宮下社長】 今までは、商品のデリバリーをやってきたじゃないですか。今度は調理場のデリバリーをやろうと思っています (笑)。商品のデリバリーだと、例えばピザを作ってお客様にお届けするまでタイムラグがあるじゃないですか。そうじゃなくて厨房ごとお客様の近くに持っていけば、出来立て、熱々の商品を召し上がっていただけますよね。どうやってやるかというとトラックにコンパクトタイプのフードサーバーを載せて移動させる。このフードサーバーというのは当社が特許を持っている優れものなんですよ。
これだと球場で使ったりできるんですよ。地元楽天イーグルスの、名前が変わった・・・クリネックススタジアム宮城に “ うまいもん 苺 ” というマグロかつ丼の店を出しています。この清水産のマグロを使ったかつ丼は美味しいと評判ですよ(笑)。あと加盟店さんがソフトバンク・ホークスのヤフードームに出されていますね。
それと、海外進出ですかね。メイドインジャパンのピザとパスタを海外に逆輸出させようかと(笑)。
まず、第一弾として、カナダのバンクーバーのショッピングセンター内に ストロベリーコーンズ を出そうと考えています。その次は、中国も見据えています。
IT業界からこの業界に転身された異色の外食起業家・宮下雅光社長。人生七転び八起きを自ら体現された方の興味深い話は尽きる事が無かった。
最後に “ 個人的な夢と目標 ” についてもお聞きする事ができた。6回に渡って連載してきた外食企業物語・ストロベリーコーンズ編はこれで一旦区切りを付けさせていただきたいと思うが、近々番外編として、宮下社長の夢と目標についてもデリバリーさせて頂きたいと思う。
株式会社いちごホールディングス
昭和58年(1983年)日本シンク株式会社として設立
昭和61年(1986年)株式会社ストロベリーコーンズに商号変更
平成15年(2003年)株式会社いちごホールディングスに商号変更
本社:宮城県仙台市青葉区本町2丁目2番3号
事業内容:グループ会社の調達・物流業務及び持株会社としてグループ経営戦略の策定・管理
株式会社ストロベリーコーンズ
http://www.strawberrycones.com/
設立:平成15年(2003年)
本社:東京都港区浜松町2丁目7番16号 第3小森谷ビル6階
事業内容:フランチャイズチェーン本部事業 /ピザ等宅配事業/レストラン事業
同社代表取締役社長 宮下雅光氏
1950年8月19日生まれ
北海道出身、 日本電子工学院 (現・日本工学院専門学校)卒業
社団法人日本フードサービス協会 副会長 兼 情報システム委員会 委員長
社団法人日本フランチャイズチェーン協会 常任理事
全日本デリバリー業安全運転協議会 副理事長