昭和61年(1986年)11月、宮城県仙台市に1軒のピザ宅配の店舗が開店した。「ストロベリーコーンズ荒町通店」である。日本初の宅配ピザであるドミノピザが開店したのはその前年である。つまり、ストロベリーコーンズは日本における宅配ピザの草分けなのである。
ストロベリーコーンズの発展には、創業社長である宮下雅光氏の強力なリーダーシップとアイデア力を抜きには語れない。今回は、宮下社長の談話を交えて、同社の発展の歴史を紐解いていきたい。
BSE、鳥インフルエンザのみならず、企業による賞味期限表示偽装、産地偽装、食べ残し再利用や中国産冷凍餃子の問題など近年食に関わる不祥事が続いている。食に関わる我々にとって非常に残念な状況である。今一度外食産業界はお客様の命をお預している事を肝に銘じ、襟を正す必要があるのではないか。
さて、今回は、ストロベリーコーンズの食の安全・安心に対する取り組み、考え方について見て行きたいと思う。
- 昨今、食に対する安全性の問題が社会問題化していますが、貴社の取り組みについてお聞かせください。
【宮下社長】 食の安全性というのは、私たちの業界では当たり前のことなんです。だけれども当たり前のことができていないというのは非常に残念な事ですね。
だから、という訳ではないですが、当社の場合、検査の設備であるとか体制がきちんと整った業界最大手といわれる企業とお付き合いをすることになります。(その他の企業には)本当に申し訳ないですけれども。 例えば、当社の主力食材である粉物に関しては、 日清製粉グループ であるとか、チーズに関しては 雪印乳業 であるとかとお付き合いしています。
ピザの場合、200℃以上の高温で焼きますので殆どの菌は消えてしまうのです。ただ一つ消えないのが、チーズのリステリア菌という非常に危険な菌なのです。先日も欧州でイタリア産チーズからリステリア菌が見つかったという報道がありましたが、チーズを直輸入する場合、チーズ原木輸入時に行う菌検査やシュレッド工場も無菌状態にしなければいけないという食品衛生管理のプロ中のプロじゃないと危険なのです。
当社の場合、チーズ原木は、デンマーク、ドイツ、ニュージーランドやオーストラリアから伊藤忠商事が輸入をして、雪印乳業がシュレッドしてPBで当社に納入していただいています。使っているチーズも最高級品と言われている物ですよ(笑)。安いものはいくらでもありますが、危険性もある。チーズというものは当然カビが生えるのですね。これは仕方がない事なんだけれども。安いチーズの場合どうしているかというと、カビが生えたら漂白剤につけてしまうんですよ。危ないでしょ(笑)。味は、熱い内は気にならないんだけど、冷めたらわかりますよね。
こんな事は、フードビジネスに関わる以上、チェーン展開している以上、やってはいけない事なんですよ。それを律する事ができなければフードビジネスをやってはいけないのです。
ただね、当社のピザは安いじゃないですか。だから同じように見られちゃうことがあるんですね(笑)。うちのチーズは最高級ですから大丈夫ですよ(笑)。
- 中国産の食材に関してはどの様にお考えですか?
【宮下社長】 天洋食品の冷凍餃子事件から中国産食品の安全性に対する問題が大きくなってしまいましたが、中国産の全てが全て安全ではないという考え方は間違っていると思います。例えば冷凍餃子事件にしても、私は意図的な犯罪、フードテロだと受止めています。あそこまで残留農薬があるなんて考えられないですから。
でも、我々の業界は消費者が一番ですから。消費者が受け入れられないものを我々が提供するわけには行かないですよね。だから、冷菜の内、アスパラガスとブロッコリーは、かつて中国産を100%使っていたのですが、今では南米産に切替えて行っています。
- 食の不祥事の問題点はどこにあるとお考えですか?
【宮下社長】 食の不祥事の殆どは経営者が関わっています。だから、経営者の資質の問題だと思いますね。経営者がコンプライアンスの遵守にどれだけ真剣に取組んでいるのか。どれだけ責任感を持って事業に取組んでいるのか。フードビジネスというのは、当然製造者責任というのがあるのですよ。何百年続いている店だろうが、やってはいけないことはやらない。そういう気持ちをどれだけ持ってこのビジネスを行っているのかが大切な事ですね。
その点、吉野家の安部さんは凄いですよね。先月(4月)自社工場で特定危険部位が含まれている牛肉が1箱だけ見つかった。見つけ出す検査体制も凄ければ、それを隠さず公表しているところも凄い。品質管理やコンプライアンスの遵守という当たり前のことを当たり前のようにやっている。やっぱり、吉野家は食の安全・安心を一番に考えているのだなぁとあらためて思いました。
株式会社いちごホールディングス
昭和58年(1983年)日本シンク株式会社として設立
昭和61年(1986年)株式会社ストロベリーコーンズに商号変更
平成15年(2003年)株式会社いちごホールディングスに商号変更
本社:宮城県仙台市青葉区本町2丁目2番3号
事業内容:グループ会社の調達・物流業務及び持株会社としてグループ経営戦略の策定・管理
株式会社ストロベリーコーンズ
http://www.strawberrycones.com/
設立:平成15年(2003年)
本社:東京都港区浜松町2丁目7番16号 第3小森谷ビル6階
事業内容:フランチャイズチェーン本部事業 /ピザ等宅配事業/レストラン事業
同社代表取締役社長 宮下雅光氏
1950年8月19日生まれ
北海道出身、 日本電子工学院 (現・日本工学院専門学校)卒業
社団法人日本フードサービス協会 副会長 兼 情報システム委員会 委員長
社団法人日本フランチャイズチェーン協会 常任理事
全日本デリバリー業安全運転協議会 副理事長