「がんこフードサービス編」「美味しくて安い、そして楽しい」-日本の文化を守り続ける 関西外食産業界の雄「がんこ」

外食企業物語 がんこフードサービス編 「美味しくて安い、そして楽しい」 日本の文化を守り続ける 関西外食産業界の雄「がんこ」

関西圏を中心に94店舗の和食店を展開する がんこフードサービス は、同志社大学出身の創業者小嶋淳司代表取締役会長が大阪の十三に開業した4坪半の寿司店が始まりである。「 美味しくて安い、そして楽しい 」、このコンセプトには、本当に美味しい料理をリーズナブルに提供するだけではなく、食事の “ 場 ” や “ ひと時 ” を大事にしていきたいという気持ちが込められている。食文化を通じて、和の心や和の伝統を大切に守りながら事業展開をはかる 「 がんこ 」 の現状について、代表取締役社長の志賀茂氏にお話をうかがった。

第3回 “がんこスタンダード”の確立

第3回 がんこスタンダードの確立

難波本店- 複数業態になったことで事業展開に変化はございましたか?

都市化現象が顕著になってくると、ターミナルに人が集まってくるようになります。大阪で言うと梅田とか難波、京都の河原町、神戸の三宮などですね。当然、この様なターミナルの駅前立地となりますと家賃も高くなります。でも飲食では1階が高くて2階、3階と上に行くに従って段々家賃も安くなってきます。要するに多層階で借りることによって、トータルの家賃としては安上がりで済みます。

当社には、寿司業態、炉端焼き業態、そして 「 十三本店 」 では鍋物料理などの和食も始めていました。それぞれの業態を1階、2階、3階に入れることによって家賃が抑えられれば他の飲食店さんに対する優位性が出ます。そういったことから “ 複数業態多層階出店 ” を始めました。最初が 「 難波本店 」 でしたが、今では当社の基本形、いわばがんこスタンダードと言える形となりました。

がんこスタンダードの確立複数業態多店舗出店もいきなり始めたわけではありません。1976(昭和51)年に 「 宗右衛門町店 」 を出しましたが、この店も大型で、200席以上ありまして、1階が寿司店、地下1階が炉端焼き店でした。オープン時に20日間の半額セールをやりましたら戎橋まで行列ができるほどの繁盛をしたのです。これは凄いと思っていたのですが、セールが終わったらピタッと客足が止まってしまいました。いわゆる坊主ですね(笑)。これはまずいということで、打開を図るために毎日本部から数名のメンバーが宗右衛門町に通って、1年ほど経ってからやっとお客様についていただいた次第でした。

この様な経緯の後で、しかも 「 難波本店 」 は地下1階から4階まで500坪もある大型店でした。企業としてはリスクヘッジをしなければなりませんから、当初1981(昭和56)年にオープンした時にはまず、1階が寿司店と日本料理店、地下1階が炉端焼き店という2フロアーでスタートしました。お陰さまで繁盛店となりましたので、2階にちょっとゆったりしたお座敷の炉端焼き、3階を小部屋、そして4階を大宴会場というように段階を踏んで拡張していきました。

がんこ地中海本まぐろ 紹介ページ- 難波本店で日本料理の業態を出された経緯をお教え下さい。

この当時は、漁師さんが陸に上がられたり、養殖技術が充分に発達していなかったりと魚の値段がどんどん高くなってきていました。寿司は魚がメインですから、寿司だけだと高く売らざるを得なくなります。そうすると創業以来の「美味しくて安くて、そして楽しい」という理念から逸脱してしまうことになります。日本料理をドッキングさせることにより、野菜や肉、或いは加工した物といった食材を使えますので、トータルで見たら値段を抑えることができます。

がんこスタンダードの確立また、社会的には女性の社会進出がちらほら見える頃でしたので、日本料理なら女性にも受けるであろう。更にファミリーレストランも全盛期でしたが、これに飽き足らないお客様の受け皿にもなりうると考えました。

先に、「十三本店 」 で鍋料理などの和食を取扱っていましたが、もう少し雅(みやび)な感じというか、ハレのお食事を提供したいと考え、炊き物、焼き物、揚げ物、蒸し物や和え物などを加えて、松花堂弁当、吹き寄せ弁当や膳物などといった本格的な日本料理をお出しすることにしました。

がんこスタンダードの確立時代の要請というか時代背景もありました。当時、本格的な日本料理を食べようと思ったら、料亭やホテルに行くしかありませんでした。そうするとお昼でも5000円とか10000円、夜になると30000円とか50000円もかかってしまいます。これでは普通の方がお手軽には使えません。「 美味しくて安くて、そして楽しい 」 のがんことしては、本格的な日本料理を1/2価格、1/3価格にすることによって普通のお客様に食べていただこうと思いました。ですから、見た目も美しい 「 やわらぎ弁当 」 は1200円(税抜)、懐石料理は3000円(税抜)からご提供しています(2011年現在)。



がんこフードサービス株式会社

がんこフードサービス株式会社

http://www.gankofood.co.jp/

大阪市淀川区

代表取締役社長 志賀茂 氏

1962年 小嶋淳司氏(現会長)、同志社大学経済学部卒後寿司店で修行
1963年 小嶋氏、大阪十三にて4坪半の寿司店個人創業
1969年 小嶋商事株式会社設立
1980年 がんこフードサービス株式会社に改称

志賀茂氏
志賀茂氏

志賀茂 氏
1946年 現京都府福知山市出身
1972年 同志社大学経済学部卒業 小嶋商事株式会社入社
1983年 取締役 営業部長 その後、常務取締役、専務取締役、副社長を歴任
2005年 代表取締役社長就任 現在に至る
関西経済同友会・幹事などの公職に就く

文: 齋藤栄紀
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