「がんこフードサービス編」「美味しくて安い、そして楽しい」-日本の文化を守り続ける 関西外食産業界の雄「がんこ」

外食企業物語 がんこフードサービス編 「美味しくて安い、そして楽しい」 日本の文化を守り続ける 関西外食産業界の雄「がんこ」

関西圏を中心に94店舗の和食店を展開する がんこフードサービス は、同志社大学出身の創業者小嶋淳司代表取締役会長が大阪の十三に開業した4坪半の寿司店が始まりである。「 美味しくて安い、そして楽しい 」、このコンセプトには、本当に美味しい料理をリーズナブルに提供するだけではなく、食事の “ 場 ” や “ ひと時 ” を大事にしていきたいという気持ちが込められている。食文化を通じて、和の心や和の伝統を大切に守りながら事業展開をはかる 「 がんこ 」 の現状について、代表取締役社長の志賀茂氏にお話をうかがった。

第1回 がんこ寿司登場

第1回 がんこ寿司登場

代表取締役会長 小嶋淳司氏がんこフードサービスは、創業者である小嶋淳司代表取締役会長(以下、小嶋氏)が1963(昭和38)年、大阪の十三に4坪半の寿司店を開業したことから始まった。

小嶋氏は、和歌山県の朝来(あっそ)でよろず屋を営む両親の末っ子として生まれた。よろず屋とは、下駄の鼻緒や洋服を売ったり、近所の農家の方から鋤(すき) や鍬(くわ) の修理を頼まれると鍛冶屋の如く直したりといわゆる “ なんでも屋 ” であった。早くに父親を亡くし、2人の兄が大阪に出てからは、店を切り盛りする母親の女手一つで育てられることになる。中学生の頃から店を手伝うようになり、高校2年生の時に母親が倒れてからは、学業より家業に傾注していくことになった。

同志社大学母親の商売の哲学が、「 安もんを安くは当たり前、エエもんを安う売る 」 であったため、近隣で仕入れるのではなく、わざわざ大阪の問屋を回ったり、「 奈良の王寺にベッチン(※1) 鼻緒の生産者がいる 」 と聞くと直接仕入れるために訪問したりと良い品物を安く手に入れて、安く売るといった商売方法を高校生ながらも身につけた。小嶋氏が24歳になった時、次男の兄が実家に帰って来てくれることになったことを機に大学へ進学することにした。きちんとした商売をするために必要なことを学ぶという明確な目的を持ち、同志社大学の経済学部に入学した。

(※1)ベッチンは、綿糸を用いて織り、毛羽(けば)を表面に出したビロード。女性・子供服地、足袋・鼻緒などに用いる。

外食企業物語 がんこフードサービス編 「美味しくて安い、そして楽しい」 日本の文化を守り続ける 関西外食産業界の雄「がんこ」学生時代の小嶋氏は、一般学問の傍ら自分が始めるべき商売についても臨店調査などを積極的に行った。その中でも和食系の飲食業に強く関心を惹かれることになる。「 和食の中でも日本料理となると、器代とか造作のための費用が結構かかるのでいきなりやるのは厳しい 」、その点、「 寿司ならネタケースと包丁に飯切など元手が少なくて済むので、独立するには丁度良い 」 更に 「 高度成長期を迎え、今後は可処分所得がどんどん増えて来るに違いない 」、「 そんなら寿司屋がエエ 」 と考えた。

外食企業物語 がんこフードサービス編 「美味しくて安い、そして楽しい」 日本の文化を守り続ける 関西外食産業界の雄「がんこ」1962(昭和37)年同志社大学を卒業後、当時大阪でも1、2といわれた高級寿司店であった黒門の榮寿司で修行をすることになる。その後、屋台寿司店でも修行を行い、1年間で高級と低価格の両方の寿司店を学ぶことになる。修行をしながら出店場所を決めた。大阪にはいわゆるキタとミナミ以外にも鶴橋、京橋、天満など飲食業が盛んな地域が多々ある。その中でも競争が激しいながらも比較的家賃が安かったのが十三である。十三で1番になれれば大阪でも1番になれると考え、翌1963(昭和38)年3月に4坪半と小さい店であったが、十三で立ち寿司店の 「 がんこ寿司 」 を創業した。

激戦地十三で、真面目に、地道にコツコツと商売をすることで、「 がんこ寿司 」 は繁盛した。繁盛したことだけではなく、この真面目にコツコツと地道に商売を行ってきたことが、その後の 「 がんこ寿司 」 発展の大きな礎となったのである。



がんこフードサービス株式会社

がんこフードサービス株式会社

http://www.gankofood.co.jp/

大阪市淀川区

代表取締役社長 志賀茂 氏

1962年 小嶋淳司氏(現会長)、同志社大学経済学部卒後寿司店で修行
1963年 小嶋氏、大阪十三にて4坪半の寿司店個人創業
1969年 小嶋商事株式会社設立
1980年 がんこフードサービス株式会社に改称

志賀茂氏
志賀茂氏

志賀茂 氏
1946年 現京都府福知山市出身
1972年 同志社大学経済学部卒業 小嶋商事株式会社入社
1983年 取締役 営業部長 その後、常務取締役、専務取締役、副社長を歴任
2005年 代表取締役社長就任 現在に至る
関西経済同友会・幹事などの公職に就く

文: 齋藤栄紀
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