「 大阪王将 」 を中心に、「 よってこや 」 「 太陽のトマト麺 」 などの業態で多店舗展開をはかる イートアンド株式会社 。現在では、外食事業の他にも、市販冷凍餃子で全国2位のシェアの食料品販売事業も展開、さらにはデパ地下など中食へも展開するなど、総合フードサービス企業として顧客のニーズに応えるべくボーダレスな展開を行っている。コーポレートスローガンに 『 おなかいっぱいの幸せを 』 を掲げ、生活食文化の向上に貢献するために、様々な 「 食の価値 」 の提供を追い求める同社の取り組みについて考察する。
外食産業界において、イートアンドが、ソーシャルメディア活用の先進的企業のひとつであることは間違いない。ソーシャルメディアとは、簡単に言うとインターネットを使って、ブログやTwitterなどで情報のやり取りができるもので、企業では自社の情報や販促に活用する事例が増えてきている。イートアンドも文野社長がブログを使って情報発信を活発に行い、「 大阪王将 」 や 「 よってこや 」 などの各業態がFacebookやTwitterを顧客とのエンゲジメント醸成に活用、フォロワーも1万人を超えている。
この中で立ち上げたのが、モバイルを中心とした web サイト 「 食生活研究所 食らぶ 」 である。各ソーシャルメディアが情報発信や交流をメインとしているのに対して、「 食生活研究所 」 は顧客とのコミュニケーションを反映して商品開発などに活用するという、いわゆるマーケティングツールなのである。
「 食生活研究所 」 の立ち上げのきっかけは、「 大阪王将 」 などの外食店舗や冷凍食品を利用される数多くの顧客との縁を長く持ち続け、顧客の声を商品開発や販促に活かしたいと考えたところからでる。メールマガジンや会員アンケート、「 お役立ちレシピ 」 などのコンテンツを通じて顧客とのコミュニケーションから評価や改善要望などを抽出して、商品やサービス、業態開発の意思決定に反映させるために、昨年(2010年)カットオーバーされた。
「 食生活研究所 」 には、シナジーマーケティング株式会社 のクラウド型CRMシステム 「 Synergy! 」 が使われている。「 Synergy!」 は、顧客管理システムを中心にメール配信、アンケート、問い合わせ管理等多彩なコミュニケーションツールが搭載され、クラウド型のため自社でサーバーなどを持たずに済むため外食企業には最適なシステムである。
「 食生活研究所 」 の成功事例として 「 ふわとろ天津飯 」 がある。「 大阪王将 」 では、餃子に次ぐ看板商品の必要性を感じていた。そこで 「 食生活研究所 」 を使用して、商品開発に活かすことにしたのである。まず、名前とイラストだけで食べたいと思う商品を投票してもらうというアンケート調査から始めた。その結果絞られた商品のコンセプトを決めて再度アンケート調査を行い、評判の良かった商品の試食会を行った。試食会ではインタビューとアンケートを行い、最終的に残ったのが 「 ふわとろ天津飯 」 であった。それから試食会でのモニタリング調査の定量・定性分析結果をもとに商品をブラッシュアップし上でエリアごとの店舗テストを実施し、レギュラーメニュー化へと進んで行った。
過去の 「 大阪王将 」 では、店主と顧客がカウンター越しに会話をしたり、常連同士でコミュニケーションをとったりと繋がりや絆の様なものがあったが、店舗の規模が大きくなるに従い、それが希薄になってきた。それを補うものがソーシャルメディアや食生活研究所だったのである。「 食生活研究所 」 の会員数も約9万人(2012年5月現在)と増加した。「 食生活研究所 」 の目的のひとつが 「 お客様に開発プロセスへ参加していただく 」 である。今後も顧客の意見を最大限取り入れ、思いを共有するとともに、“ 共創 ” の色合いをより強めて運営を行っていくという。
イートアンド株式会社
代表者:代表取締役 文野 直樹氏
本社所在地:大阪府大阪市中央区南久宝寺町2丁目1番5号
1969年9月 創業
1977年8月 大阪王将食品株式会社設立
1996年8月 株式会社大阪王将に社名変更
2002年10月 イートアンド株式会社へ社名変更
2011年12月 大阪王将300店舗達成
取材協力:マーケティング部 ゼネラルマネジャー松本吉浩氏