「ドトール編」日本に“トマ・カフェ(コーヒーでも飲もうか)”文化を! ~喫茶業界に新風を起こしたドトールコーヒーの業態戦略~
「ドトールコーヒーショップ」をはじめ多彩なブランドのカフェを全国に展開、業界のリーディングカンパニーの地位を確立している株式会社ドトールコーヒー。 “一杯のおいしいコーヒーを通じてやすらぎと活力を提供する”を企業理念に掲げる同社の歴史と業態開発戦略をひも解いてみる。
第6回 ドトールの成長路線に向けて、相互補完を図れる最高のパートナー(1)
本年4月26日、「ドトールコーヒーと日本レストランシステムが経営統合へ」という衝撃的なニュースが外食業界を駆け巡った。この発表後、米投資ファンドのハービンジャー・キャピタル・パートナーズの一連の発言により、にわかにその動向に外食関係者の耳目が集まった。6月28日に開催された株主総会においては、850人弱という過去最高の出席者を集め、82%の賛成票をもって経営統合案が一歩踏み出すことになった。
計画では、本年10月1日に共同持株会社である株式会社ドトール・日レスホールディングスが誕生する。外食ドットビズでは、これまで5回にわたって、ドトールコーヒーの企業物語を掲載してきたが、株主総会を経て、正式に経営統合へ動き出した同社について、独自の取材のもと、経営統合が持つ意味を掘り下げていく。そして、今回の外食企業物語・ドトールコーヒー編を締めくくりたいと思う。
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ドトールの成長に必要不可欠な経営統合
企業統合への道筋は、2005年(平成17年)7月1日の鳥羽豊の社長就任時まで遡る。
1962年(昭和37年)にゼロからスタートした会社を43年間で700億円規模に育て上げた鳥羽博道名誉会長は、そのカリスマ性から、良い意味でトップダウン的な経営であった。これに対して、鳥羽豊社長は、組織的経営への移行を模索していた。そして、創業以来の急成長を遂げてきたドトールも、ここ数年は安定期に入りつつあり、成長のスピードを上げることによって社員に活躍の場を与えたいとも考えていた。
自社のおかれているマーケットを見ると、喫茶市場は約 1.1兆円と言われ、末端売上が950億円に上るドトールは、10%弱のシェアを持っていることになる。シェアをあげることは可能であるが、それには限りがある。
しかし、マーケットの視野を広げ、外食産業全体で見てみると、1999年(平成9年)を境に縮小傾向とはいえ、その規模は24兆円以上もある。喫茶市場と外食市場では、単純に24倍もの違いがある。ドトールが、成長のスピードを上げるためには、「 外食市場に挑戦したい、否、挑戦する必要がある 」 と考えたのである。
当初、ドトールは、単独での業態開発を考えていたようである。しかし、ドトールの得意とする喫茶業の業態開発とレストラン業の業態開発は違うものである。そこで、レストランの業態開発力を外部に求め、レストラン業を中心とした企業との協業を考えたのは自然の流れだったのではないだろうか。
日本レストランシステムとの経営統合へ
では、何故に経営統合の相手が日本レストランシステム(以下、日レス)であったのか。その理由として、相互補完を図れるであろう両社の関係性が挙げられる。ドトールの強みは、その店舗展開力にある。「 ドトールコーヒーショップ 」 のように、単一ブランドを、フランチャイズを含め1000店以上展開できることは、外食企業には大きな力である。その反面といっては何だが、業態開発力に弱みがあると言えるだろう。喫茶業態は別として、レストラン業態を広げていくところが苦手だ。日レスは、その逆で、単一ブランドを全国津々浦々に多数広げていくノウハウに難があると言えるだろう。これは、直営店を基本にしており、フランチャイズシステムのノウハウを持たないことが理由の一つだろう。しかし、様々な業態、それもレストランを中心とした業態をロケーションに合わせて出店していく業態開発力には絶大なる強みを持っている。
つまり、ドトールは店舗を増やしていく 「 縦の力 」 を持ち、日レスは業態を広げていく 「 横の力 」 を持っていると言えよう。さらには、ドトールは喫茶業態で、日レスはレストラン業態というように、すべての面で補完要素が見出せるというわけである。ドトールが苦手なところは、日レスが得意。日レスの弱い所は、ドトールの強い所。ドトールが標榜する成長路線に対し、両社が足りないところを補完しあって突き進めるということにより、日レスとの統合がベストであると判断したのである。
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株式会社ドトールコーヒー
http://www.doutor.co.jp/
コーヒー豆の焙煎・卸会社として1962年に設立。1972年の「カフェ コロラド」を皮切りに、「ドトールコーヒーショップ」「エクセルシオール カフェ」などさまざまなブランドで全国展開するカフェ業界のリーディングカンパニー。
取材協力:広報部 鈴木美重子様