「ドトールコーヒーショップ」をはじめ多彩なブランドのカフェを全国に展開、業界のリーディングカンパニーの地位を確立している株式会社ドトールコーヒー。 “一杯のおいしいコーヒーを通じてやすらぎと活力を提供する”を企業理念に掲げる同社の歴史と業態開発戦略をひも解いてみる。
既存店の拡大に留まらず新たな業態開発を手がけ、成長を続けていることがドトールをカフェ業界のリーディングカンパニーたらしめている。
ドトールコーヒーショップ誕生から5年後の1985年(昭和60年)にはレストラン業に進出。 “ おおらかなスパゲティハウス ” をコンセプトにした 「 オリーブの木 」 をオープンしている。 「 オリーブの木 」 は、厳選した良質なデュラム小麦を低温熟成させた生麺の開発から着手したほか、スパロボと呼ばれる自動炒め機や全自動ゆで麺機も独自に開発、省力化を果たし、フランチャイズ展開されている。
1996年(平成8年)には、 “ 都会のコーヒーリゾート ” をコンセプトとするハワイアンリゾートカフェ 「 カフェ マウカメドウズ 」 を出店。ハワイの直営農園 「 マウカメドウズ 」 で収穫された本物のコナ・コーヒーを日本に居ながら楽しめる同店舗は、コーヒーやスイーツ、料理といった味だけではなく、装飾など店内の雰囲気でもハワイのリゾート気分を満喫できることが大きな特徴。
1998年(平成10年)に開店した 「 ル・カフェ ドトール 」 は、既存の業態よりもワンランク上のコーヒーショップという位置付け。最高のコーヒーを最高の店で、気軽に楽しんでいただきたいという考えのもとで、銀座の中心地に誕生した。シンプルでありながらアーティスティックなインテリア、開放感溢れるオープンテラス、厳選素材で提供されるメニューの数々など、パリのエスプリと日本の「粋」を効かせたドトールの最高級ブランドとなっている。
イタリアの人々が朝食やランチ、ティータイム、ディナーと思い思いに楽しんでいる「バール」をイメージした店舗が1999年(平成11年)から展開されている 「 エクセルシオール・カフェ 」 。バールに欠かせないエスプレッソをメインにしたカフェ業態で、ここで働くスタッフは、コーヒー抽出の職人であるとともに、もてなしのプロでもある “ バリスタ ” というコンセプトである。
ドトールの主力業態である「 ドトールコーヒーショップ 」 は、ヨーロッパでのカルチャーショックから誕生した。新業態として誕生した各店舗も同じように世界各国のコーヒー文化を取り込み、日本の市場に適した形態にアレンジして展開されている。そして、最も大切なことは、立ち飲みスタイルの構想を長年温め、時期を見て 「 ドトールコーヒーショップ 」 として成功させたように、時代時代の変化に応じた新しい業態やカフェスタイルを提供していることではないだろうか。それがより多くの顧客に対して、一杯のコーヒーでやすらぎと活力、そして喜びを提供することにつながっているのだろう。
約30年にわたってフランチャイズ制を取り入れているドトールコーヒーは、その成否のポイントを3点挙げている。
1.については、常に指導する立場にいるために、直営店でのノウハウ向上に努めている。
2.については、約1ヶ月にわたる教育プログラムで、 「 店を成功させるために最も重要なのは経営者その人の魅力 」 という考え方、 「 高い理想を掲げ、現状を打破し、革新し続けることが永遠の繁栄をもたらす 」 という IRP ( Ideal Revolution Prosperity ) 精神などを徹底してもらうのだという。また、その前提として、加盟希望者には 「 人に喜ばれることが心から好きかどうか 」 を第一条件に求めている。それがなければ、人々にやすらぎと活力を提供するという喫茶業の使命を果たせないからである。
3.の共存共栄の関係は、言葉通り、チェーン店が儲からなければ、本部も儲からないという関係である。 「 われわれは加盟する方々の生活を是が非でも守らなければいけないという強い責任感をもって仕事をしてきた。チェーン店の人たちに幸せになってもらうために、常に厳しく指導をさせていただく責任もある 」 というのが創業者・鳥羽博道の言葉である。カフェの利用者だけではなく、チェーン店の人々に対しても、一杯のコーヒーを通じて、やすらぎと活力、そして喜びや幸せを届けようとしている。この考えこそが、ドトールコーヒーの成功の源となっているのではないだろうか。