夏の特別講習編~挑戦と感謝の心を持って、“魅せる商売”に徹する!

夏の特別講習編 挑戦と感謝の心を持って、“魅せる商売”に徹する!

東京・神楽坂に居酒屋「MASUMASU(ますます)」、炉端焼きの「肴町五合」、しゃぶしゃぶ専門の「しゃぶ屋」と3店舗を構える志小田氏。18歳から外食産業に身を投じ、フレンチ、イタリアン、カフェレストラン等を渡り歩いてきた経験をいかんなく発揮して、3店とも神楽坂の人気店に育て上げています。
飲食店経営は、ただの商売人ではなく、“笑売人”であり、“Show売人”になるべきという志小田氏から、飲食店経営に必要な心構え、お客様との関係づくり、地域とのふれあいの秘訣を教えていただきました。
なお、今回のインタビューは、志小田氏も出店した地元商店街主催の「神楽坂まつり」会場で収録しました。

第2回 店を持つときに必要なのは、地を知り、地に感謝すること

店を持つときに必要なのは、地を知り、地に感謝すること

店を持つときに必要なのは、地を知り、地に感謝すること独立するためには、どうしたらいいのかを常に考えていたのですが、いろんな事情もあってなかなか踏みきれませんでした。契機になったのが、「てやん亭゛・西麻布店」の立ち上げに参加できたことだと思います。店のコンセプト・料理内容・皿選び、そしてオペレーションや人材教育。あらゆる体験をさせてもらい、地域や人と人のつながりの大切さを知りました。時に地域密着の個人の店は、人(スタッフ)が入れ替わると売り上げが下降してしまう恐れがあることも勉強しました。やはり、店=人なのです。地域の人達に支えられながら、人と人のつながりが集まりあって一つのお店が出来上がっていくものなのです。
  そんな環境で半年が過ぎ、ようやく西麻布店も軌道に乗った頃、岩澤氏から「てやん亭゛・西荻窪店、戻ってやってみないか」と声を掛けてもらいました。それが個人事業主として一人でスタートするきっかけとなったのです。不安もありましたが、古巣ということもあり、慣れ親しんだ地で、店、食器もすべてそろっている上に、昔からのお客様もいる。 “帰ってきたんだ”と温かく迎えてくれました。本当に嬉しくて・・・(涙)。

 いろいろな人に恵まれ、助けられながら楽しく・・・これもまた 2 年続けることができました。しかしこの現状に甘えていてはいけない。ずっとこのままお世話になっていたら、次の後輩達も育たないですから、早く新しく自分のお店を出店しようと思ったのです。そう決めたら、いつの間にか、募集を掛けることなく仲間が集まってきて神楽坂に出店することになりました。それも人の巡り合わせですが、本当に恵まれているなと思っています。

 通いの事もあり JR 中央線沿いから物件を探し始めました。飲食バブルでなかなか物件が無く、都心の神楽坂の方まで来てしまいました。もともと京都が好きなのですが、神楽坂にはそんな風情がありました。路地を巡っているうちに、いまの物件に巡り会ったんです。一軒家の空き住宅なのに店舗相談となっていて、住宅を借りるくらいの家賃、敷金・礼金で物件を確保できました。それも自分の足で歩き回り、地を知り、調べた結果なのかもしれません。

炉端焼き「肴町五合」
炉端焼き「肴町五合」

神楽坂は、もともと花街として発展してきた街です。ですから古い部分をたくさん残しながら、新しくなりつつあるという温故知新をテーマにしました。接客方法や商売を楽しむということは「」で学んできたことが基礎になっています。そして、料理をアレンジをするという部分では、イタリアンやフレンチのエッセンスが生かせているかもしれません。夕方、耳を澄ませると三味線も聞こえてくるような街で、他から見れば、敷居が高いような地域ですが、街の人達はもっと活性化したいという思いがあって、神楽坂はとても温かい街です。ですから地域の集まりやイベントには進んで出るように心掛けています。お店をやらせてもらっている、商売をやらせてもらっているという思いで、地域に感謝をしなくちゃいけません。その気持ちがあれば、自然と近所の人たちと挨拶をするようになるでしょうし、ゴミが落ちていれば拾うようになります。「自分たちの街」という意識が生まれるのです。夜遅くなったら、店の音量を下げるようにするのもマナーで、そういうやり方を徹底すれば、近所の方にも利用して頂けるようになると思います。もちろん自分達も近所の店に行きます。周りを知らないと自分たちがどういうスタンスでやっていいのか分からないですからね。店を出すには、まず、「地を知る」ことが大切でしょうね。

この神楽坂まつりは、昨年からいわゆるテキ屋さんが入らず、商店街が主催するようになっています。地域の飲食店に声を掛け、商店街の心粋で格安の出店料で屋台を出すことができます。私がこんなカッコしているせいか、「テキ屋がいるじゃないか」と警察から町会に意見があったらしいですが(笑)。でも、こういうお祭りには、ちょっと危なそうな匂いって必要ですよね。その雰囲気を自分だけでも残してみようかなと演出したんです(笑)。本来、日本の飲食の始まりは屋台だと聞いています。寿司屋も天ぷらもラーメンも屋台から始まり、今だからこそ屋根がついて店舗になっている。自分たちがこうやって、雨風をしのげて水道が引いてある店を持てていることにありがたいと思わなくちゃいけないでしょうね。昔の人に比べたら、なんて楽なことをしているんだろうと。しかも、お客様が選んで「わざわざ」お店まで足を運んでくれる、そんな絶好なチャンスは無いですよね。だったら、もっともっと自分たちで新しいことをアピールしていくことが必要だろうといつも考えています。自分のところにいるスタッフも近い将来個人で店を持とうと考えてやっています。自分がチャンスをもらえたように、若い人にはチャンスの場を与えたいし、新しいことにもっともっとチャレンジしていってほしいなと思いますね。

若い人にチャンスを与えたい
若い人にチャンスを与えたい


志小田 亨、

志小田 亨、

1967年生まれ。高校時代のアルバイト経験から飲食業を志し、フレンチやイタリアンをはじめ居酒屋などさまざまな飲食店で修業を重ねる。2001年に東京・神楽坂で「MASUMASU」をOPEN 、以降も神楽坂で業態を変えた系列店を次々と展開している。

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