子供の時の夢を実現できる人はそう多くはない。「天下の台所」大阪をかかえる関西で生まれ育った一人の男がその夢を実現し、今繁盛店を育て上げた。一つの繁盛店を作ることにより、その街を元気にしたい。お客様に喜んでいただける料理で、その産地の人にも喜んでいただきたい。「炭火やきとりちんどん」をはじめに関西地区で積極的にチェーン展開を行っている株式会社RETOWNの松本篤社長に飲食業起業に対する熱い思いを語っていただいた。
住宅関連のビジネスで、飲食店の手持ち資金は確保しました。しかし、まだ一つ抜けていたことがありました。それはチェーン店運営をするためのノウハウです。もともとFCビジネスに興味を持っていたので、飲食店を経営する場合にもチェーン店展開をしようと思っていたところ、タイミング良く、知人から紹介された 「 ぢどり亭 」 という焼き鳥チェーンの本部に役員として迎えられたのです。
「 ぢどり亭 」 では、経営全般に係わる仕事をさせていただきましたが、特に店舗開発の面では、40数店舗の新規出店を経験させてもらいました。「 ぢどり亭 」 には3年間お世話になりました。そして、2004年の7月に有限会社RETOWNとして会社を設立しました。
飲食店をやるにあたって、ベンチャーリンク時代には業態さえ良いものができれば成功できると思っていましたが、「 ぢどり亭 」 を経験したこで、“ どうもそれだけではないな ” と考えるようになりました。「 業態 」 と 「 人 」 と 「 立地 」 と 「 お金 」 の4つがきれいに揃って、初めて安定した成長ができるんだということに気付いたのです。お金の部分に関しては、業績が良ければ調達が可能なのですが、人と不動産に関しては一朝一夕で揃えることはできません。事実、お金があっても人や立地でご苦労されて、なかなか店舗数を伸ばせずに足踏みをされている企業をたくさん見てきました。
そのため、創業当初から人材の事業部と不動産の事業部を作りました。これらの事業はすぐに売上げが立つものではないのに、1店舗もお店を持たないうちから作るなんて無謀ですよね(笑)。ただ、チェーン展開をしていく上でこの2つの事業はなくてはならないものであるという信念はゆるぎなかったですね。
でも信念だけでは食っていけません。社員たちの給料も支払わなくてはいけませんでしたので、最初にやったことは、有限会社焼味尽(やみつき)本舗の 「 焼味尽とくちゃん 」 のフランチャイズパッケージングのコンサルティングでした。これが2004年の8月からです。それから焼味尽本舗のフランチャイズ本部の代行業務を請け負うことになり、さらに 「 本家ぶつぎり牛たん焼味尽本舗 」 のフランチャイズ加盟開発業務を請け負うことになりました。フランチャイズ加盟開発を行うにあたっては、自分たちも店のことを理解していないとできませんので、FCパッケージのパイロット店として、2004年の12月に直営1号店となる焼味尽本舗北浜店と翌年1月に直営2号店の焼味尽本舗福島店をオープンしました。ここで初めて自分の店を持つことができたのです。
自分たちでFCパッケージのパイロット店をやることは非常に有意義でした。業態の良いところは伸ばせばいいですし、課題は解決していけばいいわけですから。この年の2月に焼味尽本舗のFC1号店をオープンさせてから半年ほどで6店舗オープンさせることができました。
ただ、この間にいろいろと考えさせられることがありました。FC本部の代行をやりながら感じていたのですが、所詮代行は代行なんですね。人様の業態をお預かりして、それを展開していくということは、オーナーのコンセンサスを取りながらやっていかなくてはなりません。オーナーの考えと私どもの考えが一致していれば問題がないのですが、なかなかそう上手くは進まないものなんです。自分たちの思い通りに物事を進めることができなかったり、スピード感が遅く合わなくなったりといった問題が露呈してきました。そのため、やはり自社業態をしっかりやっていこうと考え、2005年の6月に直営の3号店で、自社ブランド1号店となる 「 炭火焼鳥ちんどん 」 大正店を出店しました。
松本篤
株式会社RETOWN 代表取締役
1975年兵庫県・神戸市出身
2007年7月に有限会社RETOWN 創業
2007年8月より有限会社焼味尽(やみつき)のコンサルティング及びフランチャイズ代行業務開始
2004年12月に直営1号店及びFCパイロット店として「焼味尽本舗・北浜店」開店
2005年6月に自社ブランド1号店となる「ちんどん・大正店」開店
2005年7月に株式会社に転換
2010年5月時点で直営・FCで33店舗出店。屋号は、「炭火焼鳥ちんどん」「WINEBAR MELA」「鉄板居酒屋天乃屋」「紀州勝浦生まぐろほんまや」「黒毛牛焼肉犇(ひしめき)屋」「HEALTHY HOT POT Mus Mus」(ベトナム)など