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「執念」と「覚悟」がなければ、“愛”のある飲食店はつくれない!-ナニワの繁盛指南役が語る、愛される店づくり理論-株式会社リンク代表、店舗プロデューサー 川野秀哉氏

サッポロビールは、起業家の皆さんを応援しています。

第6回 すべてを提供する「覚悟」がなければ、愛顧客は生まれない!

第6回 すべてを提供する「覚悟」がなければ、愛顧客は生まれない!

美味しい物を食べる下地があった上に、僕の場合は、通販システムの事業でいろいろな食材の知識を教えていただいたことが大きな武器になっています。うちの総料理長が相手でも 「 お前、塩が効いてへんやんけ 」 と平気で言います。料理長も 「 うちのBOSSは、ほんまにえ~舌持ってる 」 と認めてくれてます。

【 季節の鍋野菜サラダ 】豚料理専門店豚公司ホームページより特に感激してくれはったんは、白菜やえのき茸など鍋に入れる野菜をサラダにした 「鍋野菜サラダ」。「季節の鍋野菜サラダ」 「豆腐の鍋野菜サラダ」 「シーザー鍋野菜サラダ」 の3種類ありまして、ベーコンなども入った 「 シーザー~ 」 のドレッシングをどうするかが問題になったんです。「 季節~ 」 は柑橘系ドレッシング、「 豆腐~ 」 はゴマ油系なので、「 シーザー 」 はすっぱくして黒酢を使おうと料理長が案を出したんです。僕は 「 おじさんたちって酸っぱいもん好きそうに見えて実は苦手やから、せやな…メープルシロップかけよか 」 って言ったんです。蒸しブタにメープルシロップかけて喰うのは、アメリカではポピュラーな食べ方なんですが、最初に出会うたのはソウルのグランドハイアットでした。朝食ビュッフェにローストポークが出て、白人のお客さんらがナッツと一緒にメープルシロップをドバーッとかけてるんです。試してみたら、これがよく合ってうまかったんです。ローストポークみたいにカスカスになってくる料理に対して、塩気と甘みの組み合わせはよう合うんですよ。この経験があったんで、とっさにメープルシロップが出てきたんですが、料理長に食べさせたら目をシロクロさせてました。アイデアとしてはジャンクフードに近いかも分からんけど、料理長も 「 味の組み合わせからしたら間違うてない。社長と会うてへんかったら、この味は一生知らんかった。おもろい 」 と感激してくれました。いろんなものを喰って、味の引き出しを増やすのがオーナーの仕事やないかなと思います。

【 帯広ぶた丼 】勢いでメニューをどんどん作って、鍋、定食、一品料理、お土産の品数が増え、肉にもいろんな種類がありーので、店の規模に似合わないほどでかいメニューブックになりました。昼も夜も同じフルメニューをひとつだけです。いまは、どこもかしこもランチ専用メニューを置いてますが、あれは誰が決めたんでしょう? 夜9時、10時に定食を食べる人がうちの店にはたくさん来はりますよ。出してあげたらいいじゃないですか。昼間に鍋を食べて酒飲みたい人もいてはりますよ。出せばいいじゃないですか。当たり前のことだと思いますが、それをやる 「 覚悟 」 ができてないんです。

【 とんこんすのひるごはん 】昼の時間帯は、“ ようさん客をさばいたろ ” と考えてランチメニューにするんでしょう。特に、ビジネス立地にある居酒屋はそうです。回転率を高めようとしているのかもしれませんが、急いでる人は店側が勧めなくても定食を頼みますやん。逆に、「 今日は大切なお得意さんが来はったから、昼からゆっくり鍋でも喰おう 」 っていう客層もビジネス街にはおられるんですよ。昼の接待に飲食店を使いたい人もいてはるんです。メニューを作ったらからには、「 昼であろうが夜であろうが、自分たちができるすべての料理をお召し上がりいただきたい! 」 というのが、飲食店の覚悟だと思います。店の勝手な都合で 「 パウチもどきのランチメニューなんて出すな!」 という持論を、自分の店でようやく実現できました。

過去にご指導させていただいたお店でもそう勧めてきましたが、いつも鼻で笑われてました。やっぱり、たくさんの客をさばいたろうという気持ちがあるんです。失礼な話ですよ。“ さばく ” って漢字で書くと “ 捌く ” なんです。「 手へん 」 に 「 別れる 」 ですよ。さばけばさばくほど、お客さんは離れていきますよね。これが全国的なブームになれへんかなと思ってます。昼に安いランチメニューを出して、夜の集客につなげるという狙いがあるのかもしれませんが、昼に下手な物を出して見切られてしまって、夜【 旧上ロースかつ定食 】豚料理専門店豚公司ホームページよりに来てもらえないのはようある事例です。うちの 「 豚公司黒亭 」 は小さな店ですが、昼の客単価は1000円なんです。ケチな大阪で昼1000円はすごいことですよ。でも、本当に美味しいもんを出そう思たら、それなりの原価が掛かるんやから、それを正直に出さなあかんのやと思います。「 ランチやから、こんなもんでええやろ 」 と思うた瞬間に、その店のすべてが低く評価をされてまうんです。日本の外食業界の足を引っ張っているのは、ランチメニューじゃないかと思うこともあるんですよ。

飲食店が「覚悟」を持ってはじめて、一人ひとりのお客さんにホンマに美味しいもんを食べさせてあげることができる。これから飲食での起業を目指す方には、覚悟をしなければ、「優しさ」も「愛」も店に生まれてこないと心に留めておいてください。



会社名

株式会社リンク

http://www.linkweb.co.jp/

代表取締役(店舗プロデューサー) 川野秀哉氏
1959年大阪府出身

1987年にコンピュータソフト会社リンク創業、通販ソフトおよび通販事業の立上げ指導を業務としていた。その後、飲食店をはじめ各種店舗のアドバイスも手がけるようになり、繁盛店には必ず愛顧客(来店の度に新しいお客を連れてくるお客)がいることに注目して「愛顧客理論」を確立。

日経レストラン誌には、02年から2年間「愛顧客育成講座」「愛社長養成塾」を毎月4頁執筆。幅広い読者層の支持を集めて、連載終了後はナニワの繁盛指南士として活躍、「愛される店の理由」も上梓する。05年には自ら「豚料理専門店豚公司(とんこんす)」を開店、愛顧客育成の実践などノウハウのショールーム的な位置付けで人気店に育てている。

文:貝田知明
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