徹底分析・外食産業の現状と未来への展望 ~アナリストが見た日本の外食産業動向~

徹底分析・外食産業の現状と未来への展望 アナリストが見た日本の外食産業動向

長い低迷期にあるといわれている外食産業界。バブル経済崩壊後の不況が大きな要因となっていることは確かですが、外食産業特有の課題もその裏には隠されています。外食産業および関連産業の産業構造・経営動向等に関する調査や財団法人 外食産業総合調査研究センター(外食総研)主任研究員である堀田宗徳氏に、数々の数値データをもとに外食産業が抱える課題と展望を語っていただきました。

第二部 最終回

第7回 外食産業の現在と未来の課題に向けて

外食産業は、 8 年連続の市場規模減少により商圏は縮小し、自社競合や消費者の多様なニーズに対応するため多業種・多業態化が活発化しており、新業態開発のリスク回避のため M&A も活発に行われるようになってきています。

M&A に関しては、従来から実施している歴史の浅い企業に加え、最近では、すかいらーくロイヤルホールディングスといった老舗外食企業も参入することで、益々活発化の様相を呈しています。 M&A は、業容の拡大には有効的な手段であると思われますが、あくまでも友好的でなければなりません。労働集約的産業といわれる外食では、従業員の不安が拡大するため、優良企業であっても業績が低下する可能性があると思われるからです。

一方、国内市場の縮小を受け、売上高の拡大が期待できないと判断して、海外への進出を行っている企業も多くなってきており、特にアジア地域への進出が注目されています。

食材面では、 O157 の発生から始まった食の安全性についての消費者意識が高まっており、安全・安心のできる食材の仕入れ、メニューの提供が必要となってきており、さらには情報公開も求められるようになってきています。

中食産業は、外食が減少を続けるなか、前年実績を上回って推移しており、外食産業のみならず、小売業や食品メーカーなどからも注目を集めています。消費者の動向をみても、簡便志向、単身者(高齢者も含む)の増加、女性の社会進出、食品メーカー等の技術革新などもあり、中食を支持していることが伺えます。ただ、外食企業の中食進出が思ったほど多くないことを考えると、中食産業は、「有望なマーケットではあるが、難しいビジネス」であるように思われます。

数々の課題を抱える外食産業ですが、これからは、少子高齢化への対応が問題になってくるのではないでしょうか。外食産業は、アルバイト・パートの労働力依存度が高く、現在でも人材確保が難しくなっていますが、今後は、若年層の人口が減少するために労働力をどのように確保するのかが企業の浮沈、ひいては業界の発展を左右することになると予想されます。そして、高齢化社会へどのように対応していくのかも、外食企業と外食産業に与えられた使命になると考えられます。



堀田 宗徳

堀田 宗徳

1957年生まれ。1989年に農林水産省の外郭団体である財団法人 外食産業総合調査研究センター(外食総研)に研究員として入社、99年に主任研究員となる。05年からは、関東学院大学人間環境学部および尚絅学院大学総合人間科学部で非常勤講師(フードサービス論)も務める。専門領域は、個別外食企業の経営戦略の分析、個別外食企業の財務分析、外食産業のセミマクロ的動向分析、外食産業市場規模の推計、外食産業に関する統計整備。フードシステム全集第7巻の「外食産業の担い手育成に対する制度・施策」(共著、日本フードシステム学会刊)、「外食産業の動向」「外食企業の経営指標」(いずれも外食総研刊「季刊 外食産業研究」掲載)など著作も多数あり。

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