長い低迷期にあるといわれている外食産業界。バブル経済崩壊後の不況が大きな要因となっていることは確かですが、外食産業特有の課題もその裏には隠されています。外食産業および関連産業の産業構造・経営動向等に関する調査や財団法人 外食産業総合調査研究センター(外食総研)主任研究員である堀田宗徳氏に、数々の数値データをもとに外食産業が抱える課題と展望を語っていただきました。
第二部
これまで申し上げてきたように、外食産業の市場規模が減少し、商圏内での競合が激化するなか、企業の中には国内での売上高の増加が困難と判断して、海外へ進出する傾向がここ数年、目につくようになってきております。
最近の主な外食企業の海外進出は、圧倒的に中国が多くなっており、次いで台湾、シンガポール、米国という順になっており、アジア地域への出店が目立つかたちとなっています。
具体的にみると、中国進出企業では、今後も経済発展が見込めると判断した「味千ラーメン」展開の重光産業や中華料理の本場で日本式中華を展開するとした王将フードサービスなどがあります。
また、香港などに出店した1号店が好調であったため、中国にも出店している企業としてはワタミ、モンテローザなどがあります。中国に馴染みがあまりない料理を低価格で提供しているのは、イタリアンのサイゼリヤや宅配ピザのトロナジャパンなどが中国へ進出しております。 カレー店展開の壱番屋では、米食習慣のある東アジアへの進出の一環として、中国や台湾に進出しています。一方で、中国に進出したものの、日本国内での経営に資源を集中するために撤退を決定したリンガーハットなどの例もあります。
台湾への進出をみると、壱番屋、ワタミ、ペッパーフードサービスは中国へも進出しており、アジア地域への出店の一環として台湾にも出店しています。 B-R サーティワンアイスクリームは、既に他社のアイスクリーム店が現地で数多く出店していることから、市場が拡大すると判断して台湾に出店をしております。
タイへ進出している定食屋展開の大戸屋は、現地の日本食ブームや国内マーケットの縮小等の理由で出展を進めています。また、タイへは既にすかいらーくが出店しフードコートなどで展開しています。
シンガポールへの出店は、ペッパーフードサービスや「牛角」等展開のレックスホールディングスが実施しており、理由としては、やはり生活レベルが他の国に比べて高いことなどを上げています。
米国へは、レックスホールディングスが既にハワイとロサンゼルスに出店していましたが、今回、初めて東海岸のニューヨークに焼肉店を出店しました。牛肉調達コストが安く、日本食ブームが背景となっております。
以上、海外進出の状況をみてきましたが、やはり、中国への進出が中心となっています。これは、日本と距離的に近いこと、人口が多く大きな市場があること、そして、沿海地域を中心に経済発展が著しく、 2008 年には北京オリンピック、 2010 年には上海万博の開催が予定され、インフラ整備等で今後も経済成長が見込め、生活者の経済的水準も高くなることなどが要因と考えられます。
今後も日本国内の外食マーケットの大きな伸びが期待できないなか、海外進出のノウハウがある企業は、中国のみならずアジアを中心とした海外進出を活発化していくと考えられます。
堀田 宗徳
1957年生まれ。1989年に農林水産省の外郭団体である財団法人 外食産業総合調査研究センター(外食総研)に研究員として入社、99年に主任研究員となる。05年からは、関東学院大学人間環境学部および尚絅学院大学総合人間科学部で非常勤講師(フードサービス論)も務める。専門領域は、個別外食企業の経営戦略の分析、個別外食企業の財務分析、外食産業のセミマクロ的動向分析、外食産業市場規模の推計、外食産業に関する統計整備。フードシステム全集第7巻の「外食産業の担い手育成に対する制度・施策」(共著、日本フードシステム学会刊)、「外食産業の動向」「外食企業の経営指標」(いずれも外食総研刊「季刊 外食産業研究」掲載)など著作も多数あり。