長い低迷期にあるといわれている外食産業界。バブル経済崩壊後の不況が大きな要因となっていることは確かですが、外食産業特有の課題もその裏には隠されています。外食産業および関連産業の産業構造・経営動向等に関する調査や財団法人 外食産業総合調査研究センター(外食総研)主任研究員である堀田宗徳氏に、数々の数値データをもとに外食産業が抱える課題と展望を語っていただきました。
第一部
外食産業の動向を探る上で、まず、市場規模をみてみますと、平成 17 年は前年より 0.8 %減少し、 24 兆 2,781 億円となっています。業種別にみると、お好み焼き屋、たこ焼き屋、ハンバーガー店などを含む「その他の飲食店」(対前年増減率 0.8 %増)、「保育所給食」(同 2.1 %増)を除くすべての業種で軒並み前年実績を下回っています。減少した要因としては、個人消費こそ徐々に上向き傾向にあるものの、依然法人需要が停滞していることや人口の停滞などがあげられます。ちなみに、ここでいう外食産業とは、なじみのある飲食店や喫茶店、居酒屋、料亭・バーなどのほか、国内線の機内食・列車食堂、ホテル・旅館の食事、宴会、学校給食や社員食堂、入院患者の食事を含んでいます。
平成17年外食産業市場規模推計値(単位:億円、%)
資料 :(財)外食産業総合調査研究センターの推計値
外食産業のマーケットを他産業と比較しますと、「百貨店・総合スーパー」の年間販売額は 16 兆 4,087 億円、「自動車小売業」(新車、中古車、バイク、カーステレオなど関連機器も含む)は 16 兆 362 億円(いずれも平成 16 年実績、商業統計)となっており、いかにマーケットが大きいかが伺えます。
しかし、外食産業のマーケットを時系列でみますと、バブルの好景気の影響もあり、平成元年から 3 年にかけて大きくマーケットが拡大しましたが、バブルが崩壊すると急速に増加率が縮小、平成 6 年には、外食産業の市場規模を推計して以来、初めて前年実績を下回り、 0.2 %減の 27 兆 7,012 億円となりました。その後は、増加に転じましたが、増加率は 3 %以下で推移しました。なお、平成 9 年に外食産業のマーケットが最も拡大し、 29 兆 702 億円の市場規模となりました。 平成 10 年からは前年実績を下回り続け、平成 17 年まで 8 年連続の減少となり、外食産業の歴史の中で前例のない状況となっております。
外食産業の市場規模は、景気の影響を強く受ける傾向があります。近年では、消費者ニーズの多様化・高度化による影響も受けるようになっていますが、これは、外食産業のさらなる成熟化の現れのように思われます。
資料:(財)外食産業総合調査研究センターの推計
堀田 宗徳
1957年生まれ。1989年に農林水産省の外郭団体である財団法人 外食産業総合調査研究センター(外食総研)に研究員として入社、99年に主任研究員となる。05年からは、関東学院大学人間環境学部および尚絅学院大学総合人間科学部で非常勤講師(フードサービス論)も務める。専門領域は、個別外食企業の経営戦略の分析、個別外食企業の財務分析、外食産業のセミマクロ的動向分析、外食産業市場規模の推計、外食産業に関する統計整備。フードシステム全集第7巻の「外食産業の担い手育成に対する制度・施策」(共著、日本フードシステム学会刊)、「外食産業の動向」「外食企業の経営指標」(いずれも外食総研刊「季刊 外食産業研究」掲載)など著作も多数あり。