「 名古屋名物の料理は?」 と聞かれると、多くの人が 「みそかつ」 と答えるのではないだろうか。そんな名古屋のソウルフードみそかつの老舗 「矢場とん」。現在、名古屋を中心に東京・銀座、タイ・バンコクなどに20店舗を展開する。その成長は試行錯誤の連続であった。「矢場とん」 成長の秘密を探るため、同社代表取締役 鈴木拓将氏に話を伺った。
矢場とんは、2001年に「名古屋エスカ店」をオープンして以降も、「ジャズドリーム長島店」、「東京銀座店」、「栄LACHIC店」、「名古屋駅名鉄店」、「中部国際空港店」、「レストラン わらじや」、「名古屋ルーセント店」、「栄セントライズ店」、「福岡JR博多シティ店」、「栄 松坂屋店」、「イオンモールナゴヤドーム前店」、「東京グランルーフ店」、「富山三井アウトレット小矢部店」、更に、テイクアウト専門店 として「東京KITTE GRANCHÉ店」、「栄 松坂屋地下店」、「星ヶ丘三越地下店」、「名古屋駅ジェイアールタカシマヤ店」と店舗展開を続けている。
そして2014年11月には初の海外出店となるバンコク・トンロー店をオープンし、海外展開も視野に入れる。
店舗を拡大するのは、名古屋に出張で来られた方が 「東京でも食べたい」 などと言う、お客さまからのニーズやご要望にお応えするという目的ももちろんありますが、何より一番に考えているのは、社員に夢を持たせてあげたいからです。ただ、「頑張ったら店長になれる」 という夢を実現してあげるためには、やみくもに店を増やすのではなく、社員一人一人をきちんと育て、彼らが矢場とんの思いを理解しそれを実現できるようになってから出店したいと考えています。そこには 「社員は人財」 と考え、大切に育てたいという思いがあります。
矢場とんが企業として着実な歩みを続ける中で、特筆すべき取り組みを行っている。それが、カンボジアに募金で学校を建てるという 「カンボジア小学校建設プロジェクト」 だ。校舎を建てるだけではなく、図書館を開設し、1,000冊以上の本を寄贈、ため池を作り1,000本の植樹を行い、学校だけではなく周辺地域の生活改善のために、2008年 「矢場とんスクール」 を開校した。この取り組みが、実は社員たちの寄付で行われているというのは、この規模、この業界の企業にとって他に類を見ないことだろう。一般的な会社員と違って飲食店の社員は賄がつく。そこで浮いた給料のうち、社員一人一日100円を任意で寄付するという仕組みにより、学校1校建てるのに必要な資金の600万円が2年間で集まるという。現在4校目の建設が計画中である。また、同社では、社員をローテーションで連れていくというカンボジアでの研修旅行を毎年数回行っている。それには、カンボジアの子供たちとの交流を通して、「自分たちが毎日こつこつ貯めたお金で学校を建てることができるのだ」 という自信や誇りを社員たちにもって欲しい。更に、現地の生活環境を垣間見ることで、自分たちの豊かさや幸せについてじっくり考えるきっかけにして欲しい。そういう社員に対する思いや願いが込められている。
矢場とんは、今や、社員170名、パートやアルバイトを含めると250名近い従業員を抱える企業となった。「働くひとりひとりが夢を持って一生懸命働き、幸せになれば、企業は勝手に成長する」 と語る拓将氏は、そのために 「人財」 を育てることが使命と考えている。夢を持つこと、仲間がいることの素晴らしさや、困った時にはSOSを発信し、恐れずに自分を変えていける、そんな 「人財」 を育てていくことが矢場とんイズムであり、その継承者たちが自分の家族や友人を幸せにし、会社を成長させていってくれると確信しているのだ。
株式会社矢場とん
創業 1947年5月
本社 愛知県名古屋市中区大須3-6-18
代表者 鈴木拓将
資本金 1,000万円
年間売上 約30億円
事業概要 名古屋名物みそかつ専門店(店舗・通販での販売)
鈴木拓将
1973年3月 愛知県名古屋市生まれ
1996年3月 中部大学 経営情報学部卒
1996年4月 株式会社名古屋ヒルトン入社
1998年8月 矢場とん有限会社入社
2014年6月 株式会社矢場とん代表取締役就任