「ワインって気取って飲むのも悪くないけど、もっとテキトーに楽しんじゃっていいものだと思うんですよ。」そう話すのは日本ソムリエ協会認定ソムリエの小久保尊(こくぼたける)さん。船橋にご自身が経営されているバーのオーナー兼シェフをされています。オシャレ風貌漂う小久保さんですが、実は生粋のアニメオタク。一見難しそうなワインの品種も、キャラクターに例えたら親しみやすいのではないかと出版した「図解 ワイン一年生」はたちまちベストセラーに。今回はそんな小久保さんに、「飲食店で働く人に知っていてほしいワインの基礎」を、全5回に分けて教えていただきたいと思います。
飲食店で働くみなさま、こんにちは。ワインはとにかく「品種」が命です。品種とは、いちごの”女峰”や“とちおとめ”のように、ワインで使われるぶどうにも品種というものが存在していて、様々な条件によっても味は変わってくるのですが基本的な味のベクトルはこの品種で決定します。
品種の数は、世界に数千種類あるといわれているのですが、実はトップグループに位置する主要品種は6品種しかありません。ワインを専門としている飲食店の方達からしたら、すごく当たり前の話になってしまうかもしれませんが、自分はまだワイン一年生だなぁと思う人は、これから紹介する6品種の味の特徴を、「ぼんやり」でいいのでつかんでみてください。これらの特徴をつかめれば、自分好みのワインがわかるようになり、ワインを知らないお客様に「なにかおいしいワインをください」とざっくり頼まれたとき、まずは自分がおいしいと思うワインの品種をお伝えして良いかと思います。
今回も拙著『図解 ワイン一年生』から一部を抜粋し、紹介していきます。前回、赤ワインと白ワインの「王道」のお話をさせてもらいましたので、わからない単語がでてきたら、ぜひそちらを参考にしてくださいね。
6つの「品種」を飲んでみる
① カベルネ・ソーヴィニヨン
もうこれは、まぎれもなく世界中で愛されるワイン。ぶどう界の主人公です。ボルドーにおいては超高級な神ワインにも化ける、パワフルボディの優等生でもあります。
② ピノ・ノワール
ブルゴーニュにおける最重要品種です。土地の選り好みが激しい孤高のクイーン。あの偉大な 【ロマネコンティ】も生み出す高質で複雑な味わいが魅力的です。
③ メルロー
カベルネ・ソーヴィニヨンと引けをとらないボルドーの重要キャラです。果実味があるのに、タンニン少なめ。まろやかで丸みのあるふくよかさはまさに美しき女性。そして女性なのに「腐葉土の香り」がするなんて反則…
④ シャルドネ
人懐っこいみんなのアイドルです。シャブリ、シャンパン、カリフォルニアの白と変幻自在、 産地や作り手によって味が大きく変わります。
⑤ リースリング
アイスワインなど数々の「高級甘口」の金字塔を打ち立てた甘口白の筆頭品種です。もともと酸っぱいからこそ、キリッとした辛口や、酸味とのバランスが良い甘口になり、ツンデレにもほどがあります。
⑥ ソーヴィニヨン・ブラン
青草やハーブの香りで口の中を容赦なく「爽やか」に仕上げる、すっきり白の代表選手です。青っぽさ、ネギっぽさといったハーブ感が特徴的です。
以上6種です。なんとなく味のイメージはつきましたか?
次に今説明した6種を使って、こんな風に味の好みを絞っていってみてください。
まず赤なら①カベルネソーヴィニヨンを飲んでみて、「重い、もしくは濃い」的なことを感じたら、次は②のピノワールをトライ。逆にカベルネソーヴィニヨンの濃厚な味が好きだといったら、次は③メルロー、といった感じです。
同じように白の場合は④シャルドネをベースにおき、もうすこしフルーティなものがよければ⑤リースリングを。反対にもう少しスッキリした味がいいと感じたら、⑥リースニングソーヴィニヨン・ブランを試してみてください。
このように赤のカベルネ・ソーヴィニヨンと、白のシャルドネを起点としたこの6つの品種のポジションをおさえておけば、ワインの基礎をマスターできたと言えるかと思います。是非、ご自宅で味の違いを比べてみてください。
次回は「料理に合うワイン」について、ご紹介していきたいと思います。
小久保 尊(Kokubo Takeru)
1983年、千葉県船橋市生まれ。
日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
「ワインと肉 COQ DINER」のオーナーソムリエ兼シェフ。大学在学中から船橋市内の某有名飲食店で経験を積んだのち、2011年9月に「ワインと肉 COQ DINER」を、翌年10月には2号店となる「立呑み 燻製COQ DINER離-HANARE-」を船橋にオープン。日本一の庶民派ソムリエとして語る、ワイン案内の“ハードルの低さ”に定評がある。