これだけは知っておいてほしいワインの話 小久保尊

これだけは知っておいてほしいワインの話

「ワインって気取って飲むのも悪くないけど、もっとテキトーに楽しんじゃっていいものだと思うんですよ。」そう話すのは日本ソムリエ協会認定ソムリエの小久保尊(こくぼたける)さん。船橋にご自身が経営されているバーのオーナー兼シェフをされています。オシャレ風貌漂う小久保さんですが、実は生粋のアニメオタク。一見難しそうなワインの品種も、キャラクターに例えたら親しみやすいのではないかと出版した「図解 ワイン一年生」はたちまちベストセラーに。今回はそんな小久保さんに、「飲食店で働く人に知っていてほしいワインの基礎」を、全5回に分けて教えていただきたいと思います。

第2回 ワインの「王道(ベタ)」を知ろう

vol2 ワインの「王道(ベタ)」を知ろう

 

飲食店で働くみなさま、こんにちは。前回こちらで「ワインのおいしいには段階がある」とお話しさせていただきましたが、今回は少しワインを飲み慣れたお客様におすすめするにあたり、「ワインの王道」について、拙著『図解 ワイン一年生』から一部を抜粋し、ご紹介したいと思います。

味の違いをマスターしよう!

味の違いをマスターしよう!ワインにとっての「まずはこれ」という定番。それはフランスワインの“ボルドーの赤”と“ブルゴーニュの赤”ですね。

「ボルドー」と「ブルゴーニュ」という名称は、商品名でも醸造所でもなく、フランスにある「地方」をさししめしめすというのは、みなさまご存知のとおり。日本でたとえるなら、さしずめ東北地方とか近畿地方みたいなものですね。けっこう大きな範囲でとらえた名称なので、ひとくちに“ボルドーワイン”“ブルゴーニュワイン”といっても価格やクオリティはピンキリです。ですが、お客様の赤ワインのお好みをうかがう上で、ワインを提供する側は、この2種類の味を舌に覚えさせておくことは欠かせません。

同じ赤ワインでありながら、ボルドーのワインの特徴は、「タンニン(≒渋み)が強く」て、「味がしっかり」。ブルゴーニュのワインの特徴は、「タンニン(≒渋み)が少なく」て「味が軽ろやか」。どんなに「ワインの味はわからない」という人でも、べろべろに酔っ払っていたりしない限り、飲みくらべてみればまったくの別物だと感じていただけるかと思います。

赤ワインの定番の次は、白ワインの定番です。白ワインをおすすめするときのポイントは、「辛口」「甘口」の違いを、正確に把握することです。というのも、たとえば過去にうっかり「すっごく甘いワイン」を飲んじゃった人が、「私は辛口の白が好き」と思い込んでいたり、偶然「とびきり酸っぱい白ワイン」に当たっちゃった人が、「白ワインは甘口に限る」と思い込んでいたりしている場合があるからです。

辛口の基準は、“ブルゴーニュの白”、甘口の基準は、“甘口のリースリング”として、舌に覚えさせましょう。

図解 ワイン一年生“ブルゴーニュの白”はなんでもいいのですが、有名なのは「シャブリ」ですね。シャブリはメジャーになりすぎた故に、味もピンキリなのですが、やっぱりシャブリが「白の辛口」を知る上では、最も標準的なワインだと思います。ちなみにシャブリは、ブルゴーニュ地方のシャブリ地区で造られたワインのことです。強引に日本人的感覚に合わせるとするならば、“東京都の世田谷区で造られたワイン”みたいなところでしょうか。甘口の“リースリング”は地区の名前ではなく、ぶどうの品種の名前です。「リースリングの甘口」といえば、“フランスのアルザス”か“ドイツの白ワイン”が王道になります。いずれかを飲んで、よく味わってみてください。

シャブリとリースリングを飲み比べてみると、同じ白ワインであっても、おいしさの感じ方が違うはずです。辛口が「うまっ!」というのに対して、甘口は「うみゃ~い」といった感じです。そんな感じはしませんか。そうですよね。味覚には個人差がありますから…。



小久保尊氏

小久保 尊(Kokubo Takeru)

1983年、千葉県船橋市生まれ。
日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
「ワインと肉 COQ DINER」のオーナーソムリエ兼シェフ。大学在学中から船橋市内の某有名飲食店で経験を積んだのち、2011年9月に「ワインと肉 COQ DINER」を、翌年10月には2号店となる「立呑み 燻製COQ DINER離-HANARE-」を船橋にオープン。日本一の庶民派ソムリエとして語る、ワイン案内の“ハードルの低さ”に定評がある。

ページのトップへ戻る