素敵なお店にはお客様が来ていただける。素敵なお店になれば従業員のモチベーションも上がりサービスアップにもつながる。そのためには、内装・家具・置物・絵画等々気を使わなくてはならないことが山ほどある。今回は「浮世絵」がお客様の心をつかんだ実例を挙げる。
昨年の9月7日(日)にNHKスペシャル ” よみがえる浮世絵の日本~封印が解かれた秘蔵コレクション ” においてスポルディング・コレクションが紹介された。このスポルディング・コレクションの中で日本が誇る浮世絵師・喜多川歌麿の作品が銀座・数寄屋橋にある ニュートーキヨー数寄屋橋本店 の 高尾 に期間限定で飾られている。来店のお客様に評判を呼び、それにより従業員のモチベーションアップによるサービスの向上がはかられていると聞き訪れることとした。
まずは、浮世絵とスポルディング・コレクションについてお話しよう。
浮世絵は江戸時代に流行した風俗画である。木版画の浮世絵は同じ絵柄を大量に刷り上げることができることから安価に流通し、一般大衆にもたやすく受け入れられた。このため歌麿をはじめとして、菱川師宣、東洲斎写楽、葛飾北斎、安藤広重といった後年にも名を残す画家が登場することとなった。
しかし、同じ絵柄が大量に出回ることとなり、更には偽造品が大量に出回ってしまったため、明治期以降、日本において浮世絵は軽視されてしまう傾向になり、多量の秀逸な作品が海外に散逸してしまった。海外の美術館に所蔵されている浮世絵は20万点以上といわれ、個人コレクションを含めるとその数は膨大となる。
その一つが ボストン美術館 に寄贈された6,500枚にも及ぶスポルディング・コレクションと呼ばれる浮世絵群である。
ボストンの大富豪であったウイリアムとジョンのスポルディング兄弟は1909年に日本を訪れたことをきっかけに浮世絵の収集を始めたと言われる。当時帝国ホテルの設計のために日本に滞在していた建築家フランク・ロイド・ライトを通じて多くの浮世絵を購入した。名建築家ライトの優れた審美眼で選択された浮世絵は質の高い作品であった。
1921年にスポルディング兄弟はボストン美術館に、これら6,500枚もの浮世絵を寄贈したが、その条件は同美術館の外に持ち出すことはもとより、公開展示を禁じるといった厳しいものであった。これは、浮世絵には植物性の染料が使われていたため、光に弱く退色しやすかったためである。スポルディング兄弟は公開ではなく、芸術の保存に力点を置くという判断をしたのである。
しかし、この判断が功を奏した。展示を禁止されたことで、光を遮断した低湿度の管理によって、虫やカビの害からもまぬがれて、作品の劣化をほとんど避けることができた。この結果80年以上経た現在でも当時の色彩のまま見ることができるのである。
公開されていないのだから見ることはできないだろうと思われた方もいらっしゃるであろう。確かに私達が実物をそのまま見ることはできないが、技術の発展によりデジタル化された高精細な浮世絵を見ることができるようになったのである。これは現存する他の作品と見比べても明らかである。
この高精細で原画に近いスポルディング・コレクションの作品が、 芸術新聞社 より安価で提供されることになったのである。
次回は、芸術新聞社より発行されているこのスポルディング・コレクションから厳選された歌麿の作品を実際に店舗内に飾り、お客様の好反応を得ていると言うニュートーキヨー数寄屋橋本店にある高尾でお聞きしたことをお伝えしたいと思う。
高尾 ニュートーキヨー数寄屋橋本店8階店
http://www.newtokyo.co.jp/honten/honten_8/8f.htm
所在地 千代田区有楽町2-2-3
電話 03-3575-4800
取材協力:芸術新聞社
ニュートーキヨー高尾本店
文: 齋藤栄紀