外食ビジネスをトータルでサポートする ~食のディストリビューター トーホー~

外食ビジネスをトータルでサポートする 食のディストリビューター トーホー

昨今ほど、「食の安心・安全」に対して数多くの報道がなされ、消費者が関心を持つような時代はなかったのではなかろうか。その様な社会環境において「食」を届ける企業の責任は重い。「食材」を外食産業に供給する業界側について考察することは重要であろう。
今回は、いち早く「食の安心・安全」を標榜し、更に「健康」「環境」と言った社会問題を見据えて活動を行っている株式会社トーホーの取り組みについて、同社代表取締役社長の上野裕一氏へのインタビューを交えてお届けする。

第6回 食のディストリビューター トーホーの外食産業に対する取組と今後の展開

第6回 食のディストリビューター トーホーの外食産業に対する取組と今後の展開

- 食のディストリビューター企業として、外食産業界に対して最も重要な事は何とお考えでしょうか。

【上野社長】 最も重要な事ですか。それは色々とありますが、一つ言えることは、お店の役に立つ情報提供と提案活動ですね。

外食ビジネスをトータルでサポートする 食のディストリビューター トーホー当社では、各営業拠点にプレゼンテーションルームを設置しています。ここにはテストキッチンも完備していますので、新商品の紹介や新メニューの試作、有名なシェフを招いて料理講習会や講演会など、情報交流の場として活用しています。

それから、営業マンによる提案活動。陳腐な言い方になってしまいますが、コンサルティング営業とか提案型営業を実践させています。厳しい環境の中で、外食企業の方が真っ先に切り詰めるのはFLコストじゃないですか。食品を販売している我々に期待されるのは、当然Fコストの削減になりますよね。こればかり言われると正直辛い(笑)。そこで、「 この商品を、このように調理をしたら簡単にできますよ。更に歩留がこの程度で収まるからコスト削減にも役立ちます 」 と言うような提案型営業をするわけですよ。それによってFコストとLコストをトータルでコスト削減ができるようになりますから。

- 当たり前の事ですが、提案型営業をやるとなると教育体制が重要になってきますよね。

外食ビジネスをトータルでサポートする 食のディストリビューター トーホー【上野社長】 その通りです。世の中で一般的な階層別とか職種別の研修は当然の如くやっていますが、特徴的なものにPB商品の勉強会があげられますね。当社では、” EAST BEE ” という外食産業向け業務用ブランドを持っているのです。このブランドの商品群はこだわりを持って作り上げてきたから、商品の一つ一つに物語があるわけですよ。その物語を各営業マンに理解させる。そうする事によってどうしたらお客様が納得してお買い上げいただけるのかがわかってくるのです。

もう一つが、最近導入し始めた 「 食材販売攻略セミナー 」 ですかね。これは、ホテルの総料理長を歴任された大ベテランの方を顧問に迎えたのですが、この方による研修会です。商品の中には売りにくい商品があるじゃないですか。例えば洋食で値が張るような商品とか。それを買っていただくためには調理方法やメニュー提案が必須になってきます。それをとことん植えつけてもらっています。

- 今後、外食産業に対する営業活動で更にもう一歩踏み込む事は考えられていますか。

外食ビジネスをトータルでサポートする 食のディストリビューター トーホー【上野社長】 当社は大手のお客様だけでは無く、小規模のお客様を大事に考えています。独立したての大変真面目なオーナーさんなど応援して差上げたいですよね。当初はお互いに苦労するけれどもそういった方のお店が繁盛して、チェーン展開していただくのを見るのは本当に嬉しいことです。そういった小規模のお客様をフォローできるのが当社の強味の一つと思っています。そのためにも、商品だけでは無く、経営相談などもできるソリューション営業、つまり問題解決型の営業マンを育成していきたいと考えています。値上げの話しかしない営業マンは、「 もう来んでもいい 」 「 顔も見たくない 」 と言われてしまいますからね(笑)。

- 最後に外食産業に対する今後の展開についてお聞かせください。

外食ビジネスをトータルでサポートする 食のディストリビューター トーホー【上野社長】 外食産業のお客様から 「 トーホーに言えば全て解決してくれる 」 と言われるようになりたい。食のソリューション企業となりたいと思っています。システム的なことに困っておられたら、関連企業のアスピットが解決をする。販促的なことに困っておられたら、ローコストで POPやメニューブックの制作支援をする。物件に困っておられたら、関連の不動産会社で物件情報を差上げる。資金に困っておられたら、関連会社のフィナンシャル・アドバイスで財務コンサルティングをする。などといったソリューションをお客様に提供して行きたいと考えております。

それから、事業所の出店を加速していきたいと考えています。今年に入って山陰地区に初めて営業所を設けましたが、次にやはり空白地区の札幌(5月20日出店)、北関東、静岡、徳島と順次出していきたいと考えております。お客様の利便性を考えたらやはり全国規模での営業所戦略をしていかないといけないと思っております。

5月12日(※) に別府に営業所を出すのです。話は変わりますが、別府に出すのには理由があるのです。

外食ビジネスをトータルでサポートする 食のディストリビューター トーホー一つは、団塊世代が退職後にどこに行くかというと、恐らく新婚旅行に行った土地を訪れ始めるだろうと読んでいるんです。となると別府、宮崎、箱根あたりが観光地として見直されてくるだろうと考えています。もう一つは、当社は和食部門が弱いのです。理由ははっきりとしているのですが(笑)。別府は和食の町ですし、地場に和食に強い問屋さんがあるのです。ここで和食のノウハウを構築しようという理由から出すことにしたのです。

当社は、近畿圏や九州圏を中心とした西日本地区には強いのですが、残念ながら関東地区はこれからです。そこで、すかいらーくさんから元々はお酒のディスカウンターだったフレッシュすかいらーくを買い受けて、トーホー・パワーラークスとして業務用の商品を取り揃えて関東の外食のお客様にもソリューションを提供していきたいと考えております。

(※) 取材日が 5月9日のため未来形となっている。


ディストリビューターの業界は、小麦粉をはじめとした原材料や原油の高騰、中国産食材の輸入縮小のみならず流通経路の多様化など厳しい状況である。にもかかわらず、「 私は楽天家なので、ポジティブに明るく元気にやって行きたい 」 と上野社長は述べられていた。

また、日本の食料自給率の低さを憂い、自給率向上のための施策も着々と打ち始めている。 兵庫楽農生活センター や自社農園における農業への参入や前述の 育みの里かんでかんで の運営。更には日本の魚をもっとと銘打った にっぽん地魚紀行 などは社会貢献に近い活動である。私企業としてみたら、一見無駄な事をやっているようにも見えるが、食に関わる企業であれば、環境問題とともに食料自給率の問題には真摯に取組んでいく必要があるだろう。

さて、6回に渡って取上げてきた食の供給サイドからの特集記事は今回で一旦区切りを付けさせていただきたいと思う。



株式会社トーホー

株式会社トーホー

http://www.to-ho.co.jp/

事業内容:外食産業に対する業務用食材の卸売業務等
設立 昭和22年(1947年)10月
所在地 神戸市東灘区向洋町西 5丁目9番
資本金 53億4,477万円(平成20年1月現在)
売上高 1,594億円(単体・平成20年1月期)

上野裕一氏

同社代表取締役社長 上野裕一氏

福岡県出身。九州大学経済学部中退。
1974年 全国加除法令出版入社。九州支社長・雑誌編集長を歴任。
1984年 トーホー入社。経営企画室長兼情報システム部長を歴任。
1999年 同社取締役、2003年取締役常務執行役員を歴任後、2007年に代表取締役社長就任。

ページのトップへ戻る