昨今ほど、「食の安心・安全」に対して数多くの報道がなされ、消費者が関心を持つような時代はなかったのではなかろうか。その様な社会環境において「食」を届ける企業の責任は重い。「食材」を外食産業に供給する業界側について考察することは重要であろう。
今回は、いち早く「食の安心・安全」を標榜し、更に「健康」「環境」と言った社会問題を見据えて活動を行っている株式会社トーホーの取り組みについて、同社代表取締役社長の上野裕一氏へのインタビューを交えてお届けする。
創業から36年目を迎えた昭和58年(1983年)にトーホーにとって大きな出来事が重なった。
まず、8月に、東蜂産業株式会社から株式会社トーホーへ社名変更を行った。それと同時に、中核の業務用食品卸部門をディストリビューター事業部、小売部門をコンビニエンス事業部(現、食品スーパー事業部)へと名称を新たにした事である。特にディストリビューター事業部は、ホテルやレストラン等の外食産業に対して、新しいイメージでの展開を繰り広げる事になる。
9月には、大阪証券取引所第2部と福岡証券取引所に株式の上場を行った。その後平成9年(1997年)7月に大阪証券取引所第1部、平成12年(2000年)11月に東京証券取引所第1部上場と順調に食材ディストリビューター企業として歩む事になる。
そして、昭和62年(1987年)にディストリビューター事業で新たな取り組みを行った。
プロの食材の店 「 A-プライス 」 の出店である。第1号店は、大分県の中津市に出店を行った。
「 A-プライス 」 は、卸とストアのそれぞれの利点を活かし、飲食業の方にお店に来ていただき、その場で購入し、お持ち帰りいただくという、キャッシュ&キャリー方式の店舗である。この方式により低価格を実現し、豊富な品揃えの中から必要な商品を手に取って確かめる事ができ、しかも必要な量だけ仕入れる事ができるという当時業界内でも新しい試みであった。
- 「 A-プライス 」 を出店した経緯をお教えください
【上野社長】 当時、私どもの業界でも効率化を求めざるを得ない時代背景になってきていました。与信や物流など効率化を図って行くための答えの一つが、キャッシュ&キャリー方式の導入でした。それと環境問題。車による配送を行いますので、排気ガスと交通渋滞の問題の解決も考えなければいけませんでした。
- 「 A-プライス 」 は、飲食店の方しか利用ができないのですか?
【上野社長】 会員制にして、一般の消費者の方にもご利用いただけるようにしました。よそには無い商品があるという物珍しさというのがありますよね。例えば、「 A-プライス 」 の場合には、よそには置いていないプロが使う食材があるということで一般のお客様にも喜んでいただきましたね。
九州の大分県でスタートした 「 A-プライス 」 の事業も順調に店舗展開を図って行った。現在では、関東に8店舗、近畿に23店舗、中国・四国に17店舗、そして九州は沖縄を含む全県に39店舗の計87店舗(平成20年5月31日現在)を展開するまでになった。
また、インターネット環境が普及した現在、 A-プライスの事業は、インターネットを利用した様々な取り組みも行っている。
飲食店様のお役に立つ情報満載のサイト 「 A-PRICEどっとこむ 」 と、全国の漁港から獲れたて地魚を発送できる 「 にっぽん地魚紀行 」 である。
「 A-PRICEどっとこむ 」 は、会員向けに、最新の特売情報や新商品情報、メニュー情報やクーポン券の発行など各種最新情報を発信している。
また、「 にっぽん地魚紀行 」 は、トーホーが提携した 全国の漁協から厳選した国産の天然魚を当日に発送して、翌日に届けるという地魚のインターネット販売である。例えば、黒板メニューなどで “ 本日の魚料理 ” を提供したい飲食店にとって、毎日の仕入れに便利な仕組みを提供している。
トーホーの主力事業で、かつ外食産業に最も近い事業でもあるディストリビューター事業について見ていきたい。