国内の飲食マーケットが縮小する中、海外に活路を求めている飲食企業は少なくない。しかし、海外で店舗展開するのは国内での展開にはない課題が少なからず存在する。外食ドットビズでは、飲食店の海外進出に際しての課題と解決策を飲食業に関わる先人たちの経験から探り、情報として提供していきたいと考える。
今回は、海外飲食店の店舗ITを支える株式会社寺岡精工の代表取締役社長 寺岡和治氏にお話をお伺いした。
− ハードウェアなどの商品を販売されていると、アフターメンテナンスが必要となりますが、どのように対応されているのですか?
【 寺岡社長 】(以下、敬称略) 弊社は、海外に進出した際に工場機能だけではなく初めからマーケティング、開発に加えてサポート機能も現地化しました。この点が私どもの強みといえます。
広い中国の全土がサポート対応地域になっております。20年前に中国に進出した際は、スーパーマーケットや小売店などの流通業のお客様が主な顧客でした。流通業のお客様は、中国全土に拡がっており、アフターメンテナンスを非常に重要視されていますので、私どもも全土にサービスのネットワークを広げたわけです。飲食業のお客様対応の歴史は浅いですが、中国進出の歴史とともにサービス網を充実していったわけです。営業部隊こそ違いますが、商品はPOSやプリンタと同じなので、サポート機能を共有できるわけです。
飲食業のお客様は長時間営業ですよね。24時間営業のお店もたくさんありますし、夜遅くまで営業されているお店もたくさんあります。ここが基本的に昼間営業のスーパーマーケットとの大きな違いです。それに対しては、リモートのネットワークを介した遠隔サービスを構築しました。
もちろんハードウェア障害の時にはサービスマンを派遣することになるのですが、経験上ソフトウェア障害の方が多いようです。ソフトウェア障害の場合にはネットワークを介して遠隔からお客様の機器に入り込んで直すことができるのです。また、飲食ソリューションというソフトウェアが巨大化していますので、マイクロソフトのように定期的にバージョンアップをする必要があるのですが、この場合でもリモートの遠隔サービスがあれば自動的にアップデートできることになるのです。
クラウドコンピューティングを活用した本部システムとネットワークを介したリモートの遠隔サービスというインフラを作り上げていますので、お客様には安心してお使いいただけると思います。
− アフターメンテナンスの受け口となるコールセンターはどのようになっていますか?
【 寺岡 】 まず日本国内では東京、盛岡、大阪、福岡と4つのコールセンターを設けております。コールセンター用の電話番号は1つに統一されていますしお客様データベースも各拠点から検索できるようになっていますので、お客様にご不便をおかけすることは一切ございません。では何故4ヶ所設けているかというと、一つは災害時にもバックアップ体制をとることができるから、それに加えて従業員の転勤を極力なくしたいとの考えからです。どういうことかと申しますと、当社ではコールセンター要員になるためにフィールドでの実務を7年以上経験していることが条件となっています。これはお客様ときちんとしたコミュニケーションをはかったり、電話でも的確な判断ができたりするために必要であるとの考えからなのですが、そうなると比較的年配の人間がコールセンターに配置されることになります。こういった人をできる限り遠方に転勤させたくないですから。
このように日本で実績のあるコールセンターを物理的にコピーして中国に持っていっています。もちろん本社内のコールセンターほどスペースは大きくありませんが、基本的な仕組みをそのまま中国に持っていっています。
− 最後に、今後海外に進出される飲食店に対して取組もうとされていることがあればお教えください。
【 寺岡 】 繰り返しになってしまいますが、クラウドコンピューティング、SaaS(サース)ともいいますが、これを使った本部システムが我々の一番の強みだと思っています。これに入力機器であるPOSやOES、特にペンを使ったセルフオーダリングなどを組合せて店舗をマネージメントするシステムのご提供。さらに、その運用を支えるサポート体制。これらをブラッシュアップしてお客様に安心して使っていただけるようにしていきたいと考えております。
株式会社寺岡精工
会社概要 1934年11月(昭和9年)に、「はかり」メーカーとして創業、一貫して先進技術を追求する姿勢で、計量機器から情報機器へとはかりを進化させ、業界のリーディングカンパニーとなる。80年代からはスーパーなど流通業界向けのPOS事業を展開、90年代には高度情報化時代に対応すべく、POSや計量包装機、電子棚札などすべての製品をインターネットでつなぐシステムを開発するなど画期的な製品を市場に投入してきた。近年になって外食産業に参入、ASP型フードサービス統合システム「Delious(デリオス)」やペン型オーダー端末など最新技術を駆使した商品やソリューションを提案している。
代表者 代表取締役社長 寺岡和治
経営理念 経営革新と新技術により、世界市場における新しい価値の創造を企業活動の基本理念とし、もって顧客、取引先、社員ともども真の繁栄を期する。
取材協力 ホスピタリティソリューション事業部 ソリューション営業部 次長 鹿野浩二氏